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生保・損保業界で相次ぐ金銭詐取などの不正事案 東京海上は名簿を横流し、大樹生命では金銭詐取

東洋経済オンライン / 2025年1月20日 18時0分

日本生命グループの大樹生命で発覚した元営業職員による金銭詐取は総額で数千万円に上る可能性がある(記者撮影)

生命保険、損害保険業界で犯罪行為や法令違反がいまだに相次いでいる。

【写真】東京海上は不正競争防止法違反を問われる可能性も

日本生命グループの大樹生命(旧・三井生命)は1月17日、埼玉支社三郷営業部に所属していた営業職員の女性が、顧客から解約返戻金や積立金など、少なくとも約751万円をだまし取っていたと発表した。契約者からの問い合わせで2024年11月に発覚し、すでに同職員は懲戒解雇しているという。

職員個人名義の銀行口座へ振り込み

金銭は職員個人名義の銀行口座に振り込ませる形でだまし取っていたほか、現金手渡しでだまし取っていた事例もあるという。また「三井生命親睦会」という会社名義の銀行口座に振り込ませたり、社名が入ったゴム印を押して受領証を発行したりという手口もあった。大樹生命としての管理体制が厳しく問われそうだ。

現在も調査を継続しており、被害者は十数人、被害総額は数千万円にのぼる可能性があるという。悪質なのは、「お得意さま向けの特別な運用枠がある」といった虚偽の説明をして、金銭をだまし取る行為もあったことだ。

運用の特別枠をかたる手口は、2020年に発覚した第一生命保険の元特別調査役による19億円超の金銭詐取事件を想起させる。

当時、社会問題となり、第一生命に限らず生保各社でコンプライアンス(法令順守)研修が強化されるなど、業界全体における強烈な戒めになったはずだった。

にもかかわらず、第一生命の事件をまねたかのような手口で、またもや金銭詐取事案が発生したことになり、生保業界に波紋が広がっている。

他方、損保業界では、損保から銀行への出向者による「スパイ活動」の疑惑がまたぞろ発覚した。

九州フィナンシャルグループ傘下の鹿児島銀行(鹿児島市)と肥後銀行(熊本市)は1月16日、東京海上日動火災保険などから受け入れていた出向者が、合計で約1万7000件の顧客情報を出向元の損保などに漏洩していたと発表した。

鹿児島銀では東京海上からの出向者が、肥後銀では東京海上、損害保険ジャパン、第一生命からの出向者が、それぞれ火災保険や生命保険などの契約データを漏らしていた。

東京海上は不正競争防止法で問われる可能性も

中でも悪質なのが、東京海上だ。競合他社の契約者名や保険料、保険金額などのデータを出向者がプリントアウトして、東京海上の支店社員に直接手渡ししていた。同資料は、グループの東京海上日動あんしん生命保険にも連携されていた。

手渡ししていたのは、保険の契約情報だけではない。鹿児島銀、肥後銀の預金者データや融資先の法人データ(住所や従業員数、取引店舗名など)についても、出向者が「営業推進リスト」などとして持ち出していたという。

預金者リストや融資先法人リストは、主にあんしん生命の投資性保険商品や節税保険の営業推進先を選定する目的で、出向者が持ち出したとみられる。東京海上は鹿児島銀などに対して「実際には一切使用していない」と説明している。

ただ、産業スパイなどを取り締まる不正競争防止法では、企業が持つ顧客名簿などの営業秘密情報が、不正に持ち出されるなどの被害にあった場合に、民事上・刑事上の措置をとることができるとされている。

同措置など今後の対応については鹿児島銀、肥後銀ともに「検討中の段階」だが、東京海上は今後、不正競争防止法上の営業秘密の侵害に問われる可能性がある。

中村 正毅:東洋経済 記者

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