中国政府が「リン酸鉄系」電池の技術輸出を規制へ 正極材の関連技術を輸出管理のリストに追加
東洋経済オンライン / 2025年1月22日 18時0分
中国政府は、リチウムイオン電池の開発・製造に関する技術輸出の規制に乗り出す。中国商務省が1月2日、輸出を禁止または制限する技術を列挙したリストの改定案を発表。電池の正極材料の関連技術や、鉱石やかん水からリチウムを精製する技術などの項目を追加した。
この改定案は2月1日までパブリックコメントを受け付けた後、実施に移される予定だ。リストに追加された技術は輸出管理の対象になり、商務省の許可を得なければ外国に輸出できなくなる。
新たに追加された項目のうち、電池の正極材の関連技術はリン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸塩などの原材料の製造技術を網羅している。
当初は「三元系」とすみ分け
リン酸鉄リチウムイオン電池は「LFP電池」とも呼ばれ、中国の電池メーカーが製造するEV(電気自動車)用車載電池の主力だ。
現在使われている車載電池には、上述の「リン酸鉄系」のほかに「三元系」があり、それぞれ長所と短所がある。リン酸鉄系は三元系に比べてエネルギー密度は低いものの、原材料コストが安く、(異常過熱などの)安全上のリスクが小さいというメリットがある。
中国の自動車メーカーは、EVの本格普及が始まった当初からエントリークラスの乗用車や(初期投資の小ささが重視される)商用車にLFP電池を積極採用した。
それとは対照的に、欧米や日本、韓国などの自動車メーカーは高級路線を取り、航続距離をより長くできる三元系電池を主に採用してきた。
海外の自動車メーカーの多くは、最近までLFP電池の採用に消極的だった。そのため、海外の電池メーカーは三元系の開発・生産に集中し、LFP電池に関しては中国メーカーが事実上独占している。
そんなすみ分けを揺さぶったのが(2021年頃から始まった)中国自動車市場の急速なEVシフトと、(2022年末にかけての)リチウム相場の大幅な値上がりだ。
車載電池の需要の急拡大を背景に、中国市場ではコスト面で優位なLFP電池の採用が(エントリークラスや商用車以外にも)拡大し、2023年には新車に搭載された電池に占める比率が6割を超えた。
過去数年の絶え間ない改良を経て、中国の電池メーカーがLFP電池の三元系との性能差を大幅に縮めたことも、シェア拡大を後押しした。
海外勢の新規参入に影響も
その結果、LFP電池のコスト優位がさらに鮮明になり、ここにきて海外の電池メーカーにも新規参入の動きが広がり始めた。例えば韓国の電池大手のLGエナジーソリューションは、2025年中の量産開始を目指している。
では、中国政府による今回の技術輸出規制は、電池市場のグローバル競争に実質的な影響を与えるのだろうか。
「LFP電池は、現時点では中国だけで生産されている。中国の電池メーカーは材料技術や量産技術で大幅に先行しており、新規参入する海外企業は中国の技術への需要があるはずだ」
ある電池技術の専門家は、財新記者の取材に対してそう述べ、一定の影響があるという見方を示した。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は1月3日
財新 Biz&Tech
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