金融庁監督局長が指摘する保険業界の深刻な病巣 「悪しき慣習から脱し商品の差別化で競い合え」
東洋経済オンライン / 2025年1月24日 8時0分
──モニタリングの強化に向けて部隊を増員するのですか。
今後増員していく。金融庁として保険会社、代理店の監督のあり方を見直し、変えていかなければいけない。
──今回の金融審では、代理店を監督する自主規制機関の設置については見送りになりました。
自主規制機関を設置すればすべてが解決するわけではない。金融監督当局として、すぐには新たな体制整備ができないという中で、代理店への監督・指導をどう実効的に高めていくかが問われていると考えている。
──金融審の報告書にある比較推奨販売ルールの見直しについて。運用方法の詳細は監督指針で決めていく形ですが、顧客の意向がない、または「代理店に任せる」といったケースに目をつけ、その場合は特定の1社の保険商品を推奨してもよいというような、規制の抜け穴をつくろうと画策する動きが代理店側にあると聞きます。
(保険業法施行規則で、代理店の都合で特定の1社の推奨を可能にしている)比較推奨販売におけるハ方式というのはなくす。代理店独自の事情で特定の1社だけを推奨することは、できなくする。
そもそも顧客の意向がないなどというケースが、本当にありえるのか。保険料が高くてもサービスが充実しているほうがいいか、サービス内容はある程度落ちるが保険料が安いほうがいいかなど、ヒアリングの仕方で意向はいくらでも明確にできるはずだ。
商品を比較する知識が顧客に薄いのであれば、どういうメルクマールがあるか顧客に提示することぐらいは、あってしかるべきではないか。
──顧客の意向がなかったと代理店が装って、自分たちに都合のよい保険会社の商品を引き続き顧客に推奨することも考えられます。
「意向把握手続きの負担が重すぎる」という代理店の声は聞いているが、最低限のヒアリングまで省略してしまうのでは、比較推奨販売をしたことにならない。
ましてや意向確認の証跡を残すときに、顧客の意向がなかったと代理店が勝手に装うというのは、明らかに虚偽の記録をしていることになり、許されるものではない。
問われる業界の倫理観
──比較推奨販売ルールの見直しをはじめとして、金融審の報告書は「最後の詰めは監督指針でよろしく」と、監督局にバトンパスされた項目がかなり多かったように思います。
知恵を絞った、やや創造的な監督指針の改正が必要になるかもしれない。企業内代理店や保険仲立ち人制度の見直しをはじめとして、金融審での議論をベースに、しっかりと腰を据えて設計していく方針だ。
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