約10年で半減「ローソンストア100」衰退の必然 まいばす戦で消耗、減少も「悪い変化」ではない
東洋経済オンライン / 2025年1月25日 8時40分
先日、ローソンが好調だという記事を書いた。しかし、業態ごとに見ていくと、閉店が続いている業態がある。「ローソンストア100」である。
【画像15枚】店舗数が減り続けるローソンストア100、客数も前年割れが続く
2012年の最盛期には、1224あった店舗が2024年11月時点では664店舗まで減少。12年で約560店舗、割合にして45%が姿を消しているのだ。まさに「大量閉店」というのにふさわしい。
しかし実はこれ、ローソン全体で見たときは、ネガティブな意味での閉店ではない。というのも、後で説明するように「ローソンストア100」の閉店は、現在のローソンが取る戦略的な動きの一環だと思われるからだ。
ローソンストア100はコンビニとスーパーの中間に位置するような業態だが、現在、本業であるローソンの「スーパー化」が進んでいる。その中でローソンストア100を増やす意味合いが薄れたのである。
どういうことか。これをひもとくにはローソンのみならず、コンビニ業界、さらにはスーパー業界の構図を見ていく必要がある。
45%がなくなった「ローソンストア100」とはなにか
ローソンストア100を簡単に説明すると、従来のコンビニとは別に、スーパーマーケットの機能、そして100円ショップの機能を持たせた複合型の業態である。
【画像15枚】店舗数が減り続けるローソンストア100、客数も前年割れが続く
店舗の外観は緑色。店頭には野菜が並べられていたりする。記憶の中で見たことがある人も多いと思う。
中に入ってみよう。入って目につくのは、生鮮食品。野菜だけでなく、卵や精肉も売られている。なるほど、これがスーパー要素だ。
一方で、店内中央まで入ると見えるのは、ぎっしりと商品が敷き詰められた棚。日用品や雑貨などが所狭しと並べられ、その様子は100円ショップのようである。実際、一部の商品は100円で販売されている。
さらにレジではタバコの販売も行われていて、ここはコンビニのよう。「スーパー×100円ショップ×コンビニ」という複合型の業態がローソンストア100の特徴である。
一時は本家ローソンの日販を超えていたが…
その誕生は2005年。規模を拡大する途上でミニスーパーの「SHOP99」を買収し、店舗網を広げてきた。
一般のスーパーが主にファミリー層をターゲットにしているのに対し、こちらは単身層をメインの客層とする。コンビニで買うにはちょっと高いが、普通のスーパーだとちょっと量が多いかも……という単身層の「かゆい所に手が届く」需要を満たそうとしたわけだ。
1号店である「練馬貫井二丁目店」(現在は閉店済み)開店時の記事を見ていこう。
「ローソン、『ストア100』1号店開店 低コスト化を徹底、生鮮は売り切り」(2005年6月3日・日本食糧新聞)によると、「店舗運営の低コスト化、オリジナル商品開発、青果・日配品・FF(ファストフーズ)は売り切りを原則に廃棄ロスを低減するなど、CVS業態より低い客単価・粗利益率をカバーする低コスト経営に徹する」との記述が確認できる。随分と欲張ったコンセプトであることがわかる。
「100円均一で生鮮品や加工食品を販売する生鮮コンビニ」というコンセプトは消費者に支持され、2008年7月には日販が58万8000円を記録。
本家であるローソンの51万8000円(2008年度中間期)を抜いたのだ(「生鮮コンビニ『ローソンストア100』の捲土重来、新業態で初の多店舗展開が視野」東洋経済オンライン・2008年12月2日)。
単身層の需要を満たそうとしてきた「ローソンストア100」だが、実際、2024年上半期の売り上げランキングを見ると、1位が「北アルプス国内産特盛ごはん」、2位が「クリーンアイス 純氷」、3位が「バリューライン ミックスサラダ」と、スーパーの定番商品が並んでいる。
ちなみに「バリューライン」とは、同社のプライベートブランドである。
客数の減少が際立っている
そんな「ローソンストア100」だが、売上も奮っていない。
月次を見ていっても、例えば2024年10月から12月だと、売上高は前年比で97.0%、94.7%、96.5%。客数が95.8%、93.3%、96.5%なのに対し、客単価はそれぞれ101.3%、101.5%、102.7%となっている。
「ローソン」「ナチュラルローソン」と比較すると、やはり客数の減少が際立っている。
コンビニの数は飽和しているといわれており、より低価格で生活必需品を提供するスーパーからシェアを取るのは、合理的な判断だと思われる。では、なぜ「ローソンストア100」は大量閉店しているのか。
さまざまな要因があるだろうが、指摘されているひとつが、ローソンストア100が目指している「小型スーパー」における競合他社の躍進だ。
それが、イオングループに属する都市型ミニスーパー「まいばすけっと」だ。
選択と集中、ドミナントで拡大した「まいばす」
同社はイオンリテールの小型スーパーとして2005年に誕生。2011年にはまいばすけっと株式会社として独立し、店舗数・売上高とも右肩上がりを続けている。2022年には1000店舗を超え、他の小型スーパーが店舗数的には足踏みを続けるなか、際立って好調である。
特に「ローソンストア100」と比べた場合、出店立地や販売方法における「選択と集中」に成功している。
まずは、出店方法。「まいばすけっと」は都心を中心とした超高密度のドミナント出店(しかも住宅街の近隣に多い)を行っている。1100を超える店舗は、東京・神奈川・千葉・埼玉に密集している。
商圏は3分ほどで、「だいたいどこでも『まいばす』がある」状態を作り上げた。この認知度の高さは強い。さらに、バイトのシフトの融通が利いたり、社員の配置を減らせる、といった人的コストの面でも有利に働くため、その分の人件費を価格に反映できる。
まいばすけっとのウリは、なんといってもその「安さ」にあるが、ドミナント出店によりこれらの価格戦略に打って出ることができるわけだ。
一方の「ローソンストア100」の最盛期の店舗数は「まいばすけっと」と同じぐらいだが、それは16都府県にちらばっていた。密集が薄まれば、それだけ人々の印象には残りづらい。
さらに「まいばすけっと」は、ほぼ食品スーパーに特化しているのも興味深い。
店舗をのぞいてみると、扱われている商品の多くは食品で、雑貨・日用品の取り扱いは少ない。また、生鮮食品にしても同じ野菜を何種類も置くことをしない。
これによって、小さい店舗ながらも、ある程度の広さの通路が確保でき、店内に入ったときの視界が良好だ。
「ローソンストア100」は店としての焦点がボヤけた?
実はこの点、ローソンストア100は「コンビニ・スーパー・100円ショップの特徴をすべて持たせた」という最大の特徴が裏目に出てしまっていると思う。さまざまな商品がありすぎて店舗通路が狭く、結果的に薄暗い印象がまぬがれない。
これは、消費者心理に与える影響としては何気に大きなポイントだ。ドン・キホーテの総合スーパー業態である「MEGAドン・キホーテ」は、通常の店舗とは異なって、通路が広いことが特長となっている。
もともと、老舗総合スーパーである「長崎屋」を業態転換した店舗が多かったことが経緯で、「面積を生かしたディスカウント業態なら、新規客を取り込めるかもしれない」との考えもあったという。
雑貨店なら、雑然としていても魅力になるが、食料品を扱うスーパーだと、なかなかそうはいかない。明るく整然とした店内と、暗くゴチャついた店内では、前者に軍配が上がるのは当然だろう。
このように、ローソンストア100は、「まいばすけっと」という強敵を前にして撤退を余儀なくされてしまった。実際、まいばすけっとが500店舗を達成した2014年の翌年、ローソンストア100は約2割にあたる260店舗の閉鎖を決定している。
このように「ローソンストア100」の不振は、外的要因として説明されてきた。
一方で私は「内的要因」、つまり「ローソン内部」における理由もあると考える。というのも現在、「ローソンストア100」が目指している方向を本業の「ローソン」がかなえつつあるからだ。
ローソンストア100がスーパーマーケットの需要を満たす試みであることは述べてきた通りだが、同店の撤退に伴って、ローソンはその路線を諦めたわけではない。むしろ、本業の「ローソン」のほうが「スーパー」化している。
どんどん充実していくローソン
例えばローソンでは2020年から「まちかど厨房」という、店内調理のお総菜やお弁当の販売に力を入れている。現在は9400店舗で展開しており、同社の利益アップに貢献したとされる。
現在のスーパーは「食品スーパー」化が進んでいて、各社お総菜や冷凍食品などのいわゆる「中食」のラインナップに力を入れている。
「まいばすけっと」でも、500円以下のお弁当ラインナップに力を入れている。それ以外も、関西進出を果たし飛ぶ鳥を落とす勢いの「オーケー」は299円弁当などで話題だし、2024年2月期に過去最高売り上げを果たし、増益増収を果たした「ライフ」もお総菜やお弁当などの「中食」に注力する。
ローソンの「まちかど厨房」も、店内調理という点において、食品スーパーのお総菜コーナーがコンビニに誕生していると見ることができる。
ちなみに価格帯でいえば、まちかど厨房の商品は「まいばすけっと」や「オーケー」に比べれば少し高めだが「ライフ」とは似たような価格帯。まだまだコンビニの価格は高いが、店舗によっては「中食」でスーパーとコンビニが戦う時代が到来しつつある。
また、食品に限らず、衣料品などで見ても最近のコンビニは「スーパー化」している。
現在のスーパーは「食品スーパー化」していると述べたが、かつてイトーヨーカドーをはじめとした「GMS(総合スーパー)」では衣料品や雑貨などが多く売られていた。しかし、こうしたGMSでの衣料品販売は専門店の台頭により振るわず、GMS衰退の要因となった。
コンビニで拡大する「衣料品」の販売
逆に、コンビニでの衣料品販売がここ数年目立っている。例えば、ローソンでは2020年から「無印良品」とのコラボを行っており、雑貨・衣料品の販売も店内で行っている。店内の一角はまるで無印良品の店舗のようだ。
似たようなことはファミマでも起こっていて、近年のファミマの売り上げを支える一つが、そこで買える「コンビニウェア」。
ファミマの一角はユニクロかと思わんばかりになっていて、その注力ぶりがうかがえる。
GMSの一つの強みは「ワンストップショッピング」で、そこに行けばなんでもあることだった。
しかし、もっと小さい商圏で「なんでも揃う」存在にコンビニがなりつつある。
実際、ちょっとした下着やハンカチを買おうというときに、その選択肢としてスーパーを思い浮かべる人は少ないのではないか。その候補にコンビニがなりつつある。
スーパーとコンビニの垣根がだんだんとなくなっているのだ。
スーパーとコンビニが戦う時代
「ローソンストア100」の数は減る一方で、新規出店はない。なぜならば、特にコロナ禍以後、ローソンはスーパー化しており、スーパー需要を満たすための「ローソンストア100」は必要がなくなったのだ。
つまり、「ローソンストア100」の大量閉店は、ローソン自体がじわじわと「スーパー化」していることを表しているともいえるわけだ。
ローソンを例に見てきたが、おそらく今後の商業施設の推移を見ていくときには、コンビニ・スーパーといった枠組みはあまり意味がなくなるかもしれない。
むしろ、それらを同じ土俵で比べ、分析する必要が出てきている。そう考えると、「ローソンストア100」を少しずつ減らしているローソンは、「適切に、撤退戦を始めつつある」とも言えるのかもしれない。
【関連記事】ローソン「最近めちゃ行く人」が増えた納得の理由 消費者に寄り添った、実用的なコンビニに進化 では、ローソンの進化について、チェーンストア研究家である谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希:都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家
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