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郵政改革を「骨抜き」にする民営化法の見直し議論 背景に郵便の業績悪化、改正案は成立の公算

東洋経済オンライン / 2025年1月27日 8時0分

想定よりも悪いシナリオ

日本郵便経営企画部の囲貴博氏は「昨年10月の郵便料金改定で一時的に収益が改善する見通しだが、取扱数量の減少トレンドに変わりはなく、かなり厳しい状況」と話す。値上げによって1000億円以上の営業利益の改善を見込んでいたが、想定よりも「悪いシナリオで進捗している」という。

業績改善のためには値上げが必要だが、それに伴って取扱数量が落ち込み、さらなる値上げが必要になるという悪循環が生じている。自民党郵政族の柘植芳文参議院議員は「このままだと無限に値上げをしなければ(郵便事業の存続は)無理」とも話す。

日本郵便の業績低迷に伴い、グループの金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)への依存度も増している。

中でも、ゆうちょ銀行は日本銀行による利上げを追い風に、最高益更新が続く見通しだ。1月24日に開かれた日銀決定会合で政策金利が0.5%に引き上げられたことで、ゆうちょ銀行では2030年度までに円金利だけで1兆円の収益増が見込まれる。金融2社で稼いだ資金を日本郵便の赤字に充てていく構図がますます鮮明になり、自民党の郵活連が金融2社の株式保有にこだわる理由もまさにそこにある。

一方、金融2社の在り方を巡っては、改正案の骨子の中で郵活連側が譲歩した部分もある。金融2社に課せられる「上乗せ規制」に関する議論だ。

「上乗せ規制」とは民業圧迫の防止を目的に、金融2社に課されている制約で、ゆうちょ銀行の預入限度額や、かんぽ生命の加入限度額などがそれにあたる。郵活連は、これら上乗せ規制の緩和を模索してきた。

これに対し金融業界は「上乗せ規制の緩和や撤廃は、基本理念とまったく逆行する」(みずほ銀行・加藤勝彦頭取)と真っ向から反対。こうした反発を受けて、上乗せ規制の在り方をめぐっては、政府にゲタを預ける「検討条項」にとどめる方針だ。

法案成立は確実か

通常国会に提出される改正案は成立が確実視されている。郵活連の動きを牽制してきた自民党の片山さつき参議院議員(金融調査会会長)は、東洋経済の取材に対し「(法改正の動きについて)特別にコメントはない。金融調査会がどう思うか次第」だと話し、現状は明確な姿勢を見せていない。

自民党の柘植議員も「党内に反対勢力はほとんどいない」と話す。郵政改革を進めた小泉純一郎元首相を父に持つ自民党の小泉進次郎衆議院議員ですら、昨年の自民党総裁選で、郵政改革に反対する全国郵便局長会(全特)に協力を要請した経緯がある。ある政府関係者は「郵政改革の当初の頃とは時代が大きく変わってしまった」と漏らす。

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