グリーンランドの資源開発、中国に商機はあるか レアアースなど豊富に埋蔵も、期待先行が現実
東洋経済オンライン / 2025年1月28日 18時0分
「アメリカの国家安全保障のために、グリーンランドの所有が絶対に必要だ」――。アメリカのドナルド・トランプ大統領が(1月20日の)就任前からそう繰り返し発言したのをきっかけに、デンマークの自治領であるグリーンランドへの注目がにわかに高まっている。
グリーンランドは北極海と北大西洋に面した世界最大の島であり、石油や天然ガス、レアメタル、レアアースなどの地下資源の豊富な埋蔵が確認されている。では、グリーンランドの資源開発に対する中国企業の投資の実態はどうなっているのだろうか。
開発主体に中国企業が出資
現地では今、大規模なレアアース鉱床の探査・開発に取り組む2つのプロジェクトが進行中だ。それらの事業主体はオーストラリアの資源開発企業のエナジー・トランジション・ミネラルズ(ETM)と、同じくタンブリーズ・マイニングである。
そのうちETMのプロジェクトには、中国のレアアース大手の盛和資源がすでに参画している。盛和資源は2016年9月、462万5000オーストラリアドル(約7億5100万円)を投じてETMの発行済み株式の12.5%を取得し、その当時の筆頭株主になった。
ETMのウェブサイトによれば、開発中の鉱山では軽希土類、重希土類、ウラン、亜鉛など多種類の鉱物を採掘できる。その総量は10億トンを超え、西側諸国向けの最大級のレアアース供給源になる可能性があるという。
盛和資源が出資した時点で、ETMはすでに鉱山開発のフィジビリティースタディーを終え、(グリーンランド自治政府に対して)採掘許可を申請中だった。そして認可が下りた暁には、盛和資源は鉱山の開発権益を最大60%まで買い増せる契約になっていた。
ところが、ETMへの採掘許可は今もまだ下りていない。その間にETMの株式は(追加の出資受け入れを通じて)大幅に希釈化され、2023年末時点の盛和資源の持株比率は8.93%に、株主順位は第4位に低下した。
地政学上のリスク上昇
グリーンランドは国土の大部分が北極圏にあり、自然環境が極めて過酷で交通アクセスも不便だ。資源開発のポテンシャルは大きいものの、実際の開発はあまり進んでいないのが現実と言える。
中国企業にとっては地政学上のリスクも上昇している。グリーンランドの内政と司法は、資源開発の許認可権を含めて自治政府の管轄下にある。しかし外交、国防および財政の管轄権はデンマークが持つ。
近年、デンマークを含む欧州各国やアメリカの政府は、(国家安全保障上の懸念から)中国の対外投資に神経をとがらせている。
グリーンランドでレアアース開発に取り組むもう1社のタンブリーズ・マイニングは、2020年に採掘許可を取得し、2024年にその延長が認められた。
ロイター通信の報道によれば、同社CEO(最高経営責任者)のグレッグ・バーンズ氏は、採掘許可の延長に際してデンマークとアメリカの政府関係者から中国系企業に権益を売却しないよう強く要請されたという。
(財新:羅国平)
※原文の配信は1月11日
財新 Biz&Tech
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