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急勾配区間多い「都電荒川線」意外に大きな高低差 駅ごとにどのくらいの差があるのか調べてみた

東洋経済オンライン / 2025年1月28日 6時30分

この勾配は色々なメディアでも取り上げられてよく知られているが、この先も、川により浸食した低地があるため、意外と勾配が多い。

どのぐらいの高低差と勾配があるのか、標高との関係を見てみよう。

王子駅前―飛鳥山間は約10mの高低差

王子駅前は約6m、飛鳥山は約16mで勾配は66.7パーミル、勾配区間は約200m前後、約10mの高低差がある。本当に合っているのか、三角形の計算式に当てはめてみると、勾配区間の距離約150mとなった。これは直線で結んだ距離のためで、線路がカーブしている分を含めれば、概ね間違いはないようだ。

滝野川一丁目は約17m、西ヶ原四丁目約25m、新庚申塚約26m、庚申塚約25mと高くなっているが、次の巣鴨新田約19m、大塚駅前は約18mと低くなる。これは、谷端川により台地が削られ低地となったためで、旧・日本鉄道が建設した山手線も大塚駅付近が築堤となり、高台の池袋と巣鴨を結んでいるのがわかるだろう。この谷端川は現在暗渠となり、地下を流れている。

次の向原は約30mで、大塚駅前とは12mの高低差がある。王子駅前―飛鳥山間より1m高低差が大きく、この区間の大塚駅前から天祖神社付近までに62.8パーミルの区間最大の勾配がある。「おや、飛鳥山よりも1m高さがあるのに勾配が少し緩やかなのか」と思われるだろう。これは、一気に向原に上るのではなく、階段のように何度か勾配を登るためで、武蔵野台地が階段状の地形なのがわかる。

東池袋四丁目が約28m、都電雑司ヶ谷が約32mで鬼子母神前が約29mとなるが、都電雑司ヶ谷と鬼子母神前間は、停留場間が少し低く、アップダウンの地形となっており、最大勾配は54パーミルとなる。ただし、現在都市計画道路の整備中で、完成すると少し緩やかな勾配になる。

学習院下は約11mで、鬼子母神前との高低差は18mもあるが、停留場間500mを使って42.2パーミルの勾配としている。学習院下から鬼子母神前方向を見ると、長い坂を実感できる。

次の面影橋が約9m、終点の早稲田が約8mと、この付近は神田川の前身となる平川により浸食されたとされる。平川は大きな川でたびたび洪水をもたらしたが、江戸時代に徳川幕府が平川を改修し、現在の神田川に生まれ変わった。 

路面電車は人生のようだ

東京さくらトラムは1両編成のかわいい車両だが、急勾配も克服する高い性能を持っている。現在の車両は性能が良くなったが、吊りかけ駆動方式による電車時代は、坂道になるとモーターを唸らせながら、懸命に登っていった。人間が坂道になると息が荒くなるのと同じで、下り坂になると、慎重になる点も似ている。

路面電車は、人が歩く道と同じ標高を走り、登り坂も下り坂も、そして平坦な区間もある。まるで人生のようでもあり、最も親しみのわく乗り物に違いないだろう。

※ 標高に関しては、国土地理院GSI Mapsから得ましたが、測定場所により、多少の誤差があります。東京さくらトラム(都電荒川線)の勾配の数値は、東京都交通局に資料の提供、およびご教示をいただきました。

渡部 史絵:鉄道ジャーナリスト

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