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ウーバーの「遅延急増」現役配達員が語る"実情" 報酬減額で超高額案件が生まれる歪な背景とは

東洋経済オンライン / 2025年1月29日 8時40分

なぜウーバーの供給力は弱くなってしまったのか(写真:eizan/PIXTA)

多くの人が活用しているウーバーイーツ。便利さの反面、昨今では「配達遅延が増えた」との声も多い。現場の配達員は、何を感じているのかーー。

勤続年数4年9ヶ月、満足度100%評価を誇る現役配達員の佐藤大輝氏が解説する。

ウーバーの配車がいよいよヤバくなってきた。私はウーバー配達員として4年9カ月間ほど働いているが、ここ最近は繁忙期での「需要強・供給弱」のミスマッチが目立っている。

【画像】超高額案件なのに配達員たちのモチベ低下の要因に? 「クジラ案件」はこんな感じ

ウーバーの配車が壊れた原因

配達側が注文をさばき切れないため、配達遅延という形でユーザー側にシワ寄せがいっている。実業家でホリエモンこと堀江貴文氏はX(旧Twitter)の投稿で、「最近、Uber Eatsの配達遅延が多い気がする」と発言。共感の声を生んだ。

なぜウーバーの供給力は弱くなってしまったのか。それは「配達員のウーバー離れ」にあると私は考えている。

飲食店の前でたむろする「地蔵」と呼ばれる配達員を覚えているだろうか。あの迷惑な光景は、配達員同士で注文依頼を奪い合っていたことを意味する。しかし今はどうだろう。四角いバッグを背負った配達員を見つけるほうが難しいのではないか。

なぜ配達員の数が減少してしまったのか。それはウーバー配達員という仕事が「稼げる仕事」から「稼げない仕事」にカラーチェンジしたことが大きい。

背景には「ウーバー配達の低時給化」がある

新型コロナウイルスが世界中を騒がせていた頃、私のウーバーでの収入は時給換算1500~2000円前後で推移していた。これがアフターコロナ後、700円前後の低空飛行がデフォルトになった。時間によっては時給換算0円になることも多々ある。

ウーバー配達員は時給制ではなく、こなした仕事量によって収入が決まる。最低時給を下回る報酬体系に魅力は少ない。

このタイミングでウーバーは悪手を打った。配達員が店で商品を受け取り、お客様のところへ配送する「1店1顧客」の配送頻度を減らし、「1店2顧客」「2店2顧客」など、複数同時配送の頻度を増やしていったのだ。

ここで問題なのは、複数配送の料金設定だ。ウーバー配達員は(距離等によって変動するうえで)1件あたり300~500円前後の報酬が多い。これが2件同時配送の場合、400~700円前後で「割安におまとめ」される。

ウーバーの報酬体系は明らかにされていない。よって真意は不明だが、もしかしたら配達員の減少を見越し、配送の効率化を目指したのかもしれない。とはいえ配達員からすると「報酬を引き下げられた」と感じても何ら不思議ではなく、諸々の状況に嫌気が差したのか、顔見知りの配達員はいつの間にか消えてしまった。

そして今、雨の日や夏冬の繁忙期など注文オーダーが集中する日、配達員不足に困るようになった。この危機的状況を改善する目的か、それともウーバーの配車システムのバグなのか……配達員の間で今話題になっているのが「マグロ・クジラ」と呼ばれる高額案件だ。

マグロ・クジラ案件の実態

マグロ・クジラ案件とはその名が示す通り、釣れたら報酬的にものすごく得をする、高額な配送依頼のことである。マグロとクジラを区分する明確な線引きはないが、マグロ案件であれば1回の配送あたり3000円前後。クジラ案件は5000円前後が、報酬単価の目安になっているだろうか。

1回の配送で数百円の報酬を得ている配達員にとって、マグロやクジラを釣り上げることは、うまくいけば日給あるいは週給を稼ぐことを意味する。

私は2025年1月。クジラ案件を2件ほど釣り上げたことがある。スマホの液晶画面を見たときは目を疑った。ウーバー配達員は配送依頼があった際、受け渡しの地図。距離。時間。報酬の目安といった情報が通知される。私のスマートフォンには「2件配送・距離4.8キロ・時間30分・報酬4384円」といった情報が表示されていた。さらに別日には、「3件配送・距離6.2キロ・時間45分・報酬5382円」の配送依頼があった。

上記2つの配送依頼を喜んで引き受けた私だが、リリース(配送依頼の拒否)してしまった案件もある。その注文は「2件配送・距離7キロ・時間50分・報酬5000円」といった条件だった。しかし、自転車では到底たどり着けない、激坂の上にある配送先だった。

しかも配送するのはピザ屋の商品……顧客へのサービスの質を考えると、ここはバイク配達員に譲るのが正解だろう。とはいえ逃した魚は大きいわけで、なんだか悔しさが残る。

けれど真剣な話、このような高額の配送依頼は「ウーバー配達員を腐らせる」だけのように私は感じてしまう。その証拠に、ネットでは配達員が投稿したであろう「どうやればマグロ・クジラが釣れるのか」といった情報が飛び交っている。

なおこれは私自身も感じているが、おそらく高額案件の配送依頼は「配達員が決まらない配送先の解決」が目的で、不適切な表現かもしれないが、とどのつまりお金の力で配達員を釣ろうとしている。

このやり方に潜むリスクは、高額案件以外は引き受けない配達員の増加。これに伴う「配送先顧客のたらい回し」が今以上に常態化してしまう恐れが挙げられる。

報酬体系の見直しは急務

ウーバー公式サイトの「よくある質問」には、配達員が「配達リクエストを拒否した場合、どうなりますか」という質問に対して、「配達リクエストを受け取った際に、そのリクエストを受ける、無視する、または拒否する、のいずれかを選択することができます。配達リクエストを拒否した場合、通常通り他の配達リクエストを受け取ることができ、評価への影響はありません」という公式見解が記されている。

ウーバー配達員は個人事業主として働いており、ウーバーと雇用契約を結んでいるわけではない。

使用者と労働者といった関係ではなく、だからこそ好きなときに働けるなどの「自由さ」が生まれるわけだが、このスタンスは「配送依頼を受けるか否か」にもそのまま反映されている。配達員はウーバー側から配送依頼があったとき、その仕事を受けるか受けないか、選択権が20秒ほど与えられている。なお拒否した依頼は他の配達員に振られる。

高額報酬以外を受け付けない配達員に、通常単価の仕事を振っている時間は無駄以外の何物でもなくなる。もしマグロ・クジラ案件の「一本釣り」を狙う配達員が増えれば、配達員が決まらない(見つからない)状態が常態化するかもしれない。

なにより深刻な問題は、通常単価の報酬で頑張っている配達員のモチベーションダウンだ。一生懸命に自転車を回し、4~5時間働いて5000円前後を稼いだ後、SNSなどで「クジラを釣ったぜw」などの投稿を目にしたら、頑張って働くことがバカバカしくなるはずだ。

日に日にサービスの質が落ちつつあるように感じるウーバーイーツ。筆者の提案として、例えばマグロやクジラ案件を、真鯛あるいはブリくらいの案件に変える。いつの間にか小アジくらいの大きさにやせ細ってしまった通常単価を、せめて刺身として食べられるくらいのアジの大きさに戻す……いかにして健全な釣り人(配達員)の数を取り戻していくかが、今ウーバーに問われている。

最後に余談だが、前述したクジラ案件の配達のため飲食店へ訪問した際、店員さんが受話器を持ちながら「あ、今ウーバー来ました!」と電話先顧客に謝罪する姿を目撃した。なんでもウーバーを頼んだお客様から「来るのが遅すぎる!」とクレームの電話が入ったらしい。

急いで届けなければという使命感が生まれたが、そのクジラ案件は3件同時配送で、別の飲食店へも商品を取りに行かなければならない。運送会社で3年間「配車係」として働いたことのある私は、ウーバーに就職してこの惨憺たる配車の状況を変えたいと強く願いながら、ウーバーの指示通り自転車のペダルを回して、「お客様の家」ではなく「次の飲食店」を目指した。

【もっと読む】ウーバー配達員が目撃「悪質な盗難」の衝撃実態 配達員を装って盗んでいる人がいる… では、デリバリーの現場で起きる"衝撃の盗難"の実態を、現役ウーバー配達員ライターの佐藤大輝氏が詳細に解説する。

前回の記事で紹介している写真はこちら

佐藤 大輝:ライター・ウーバー配達員

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