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静鉄プレジオ「トレンドに逆行」した部屋作りの妙 部屋が狭くなるビジホ業界で広い部屋を貫く理由

東洋経済オンライン / 2025年1月31日 8時30分

大きなベッドが目を引く、「静鉄ホテルプレジオ静岡駅南」シングルルーム(写真提供:静岡鉄道)

各ビジネスホテルの代名詞的なサービス・設備を紹介し、その奥にある、経営哲学や歴史、ホスピタリティまでを紐解いていく連載「ビジネスホテル、言われてみればよく知らない話」。

第17回は、静岡を中心に全国に8ホテルを持つ人気チェーン静鉄ホテルプレジオの理念や経営姿勢を前後編で分析する。

好調が続く静鉄ホテルプレジオ

静鉄ホテルプレジオというビジネスホテルをご存じだろうか? 静岡駅北・南をはじめ、沼津、博多、京都烏丸御池と四条、東京・田町、そして大阪・心斎橋に展開するチェーングループだ。

【画像】シングルルームなのに20㎡も!静鉄ホテルプレジオの部屋はこんな感じ

平均稼働率は2024年4~9月で80%。業績も好調で、親会社の静岡鉄道の2024年11月の発表によると、2025年3月期の連結決算では、連結純利益が前期比2%増の32億円の見込み。期初予想から17億円上方修正している。営業収益も前期比5%増の1792億円で、予想から83億円上方修正された。

好調の要因には、主力の自動車販売事業が伸びていることと、前期比約2倍とレジャー・サービス業が好調なこと、なかでもビジネスホテル事業が前期比109%に伸びていることがあげられるという。

【画像で見る】シングルルームなのに20㎡も!静鉄ホテルプレジオの部屋はこんな感じ

ビジネスホテル事業の成長の理由は、インバウンド増加による稼働と客室単価の上昇に加え、2023年10月に大阪・心斎橋にホテルがオープンし、順調に推移していることも大きい。

だが、理由はそれだけではなさそうだ。ホテル事業の実際について、事業部長の山本紘司さんと、営業推進課長の内田敏之さんに聞いた。

ストレスフリーな広さとダブル以上のベッド

静鉄ホテルプレジオ最大の特徴は、その広さにある。

2008年、1号店としてオープンした「静岡駅北」こそシングル14.45~17.19㎡の広さだが、2軒目の「静岡駅南」は16~18㎡、3軒目「沼津」は20㎡と、ゆとりある空間設計がなされている。

昨今は1室でも多くとるために12㎡、13㎡のホテルも多く、平均的な広さは14㎡と言われる。背景には、建築費や人件費の高騰もある。

そんななか、静鉄ホテルプレジオはあえてトレンドに"逆行"した形だが、これが消費者に強く支持されている。

ベッド横にはスペースが確保され、扉からの動線もスムーズだ。3軒目の「沼津」からは、クローゼットを置かずにハンガー掛けのボードを用意してより空間を拡大。同時にバス・トイレを別にして、洗い場もしっかり確保された。

筆者は以前「大阪心斎橋」にステイしたが、「物に当たらないよう気を使わないで動ける」快適さを感じた。

アウトソーシングしている清掃業者が、限られた時間で掃除がしやすい利点も考えての設計だそうだ。

部屋を広くしても、しっかり儲けを出せる

べッドサイズも若干大きめで、「沼津」ではシングルルームで1520×1950mmのベッドを、「大阪心斎橋」では1600×2030mmのベッドを採用。「静岡駅北」では1400✕1960mm、「静岡駅南」と「京都烏丸御池」では1400×2030mmのベッドを設置している。

ホテルによってサイズは少しずつ異なるが、基本がダブルサイズ1400✕1960mmで、それ以下はない。いずれも、大人一人なら手足を伸ばしてゆったり眠れるサイズ感だ。

しかも、「静岡駅北」はサータ社、それ以外はシモンズ社製と、クオリティに定評のある有名ブランドが選ばれている。

このように、シングルルームでも客室やベッドが広いので、ホテルによっては2人、3人で割安に宿泊する設定があるのもポイントだ。

価格は需給に応じて変動するため一概には言えないが、内田さんによると、「1人1万円の客室に、2人なら1人6000円で泊まれるくらい」の価格感だという。夏休みや年末年始などに幼児連れの家族が利用したり、女性グループにも喜ばれているそうだ。

一方で、客室で仕事をするビジネスパーソンのことを考え、デスクも「東京田町」「沼津」以外は奥行き約50cm、幅2m以上と広く、卓上には電源と有線LANの挿入口がスタンバイ。枕元にも電源とUSBポートがある。もちろん、Wi-Fiは全ホテル完備だ。

客室価格は前述した通り需給のバランスで変動するが、平均単価は約12000円(「東京田町」のみ約18000円)で、平日や日曜なら7000円台、8000円台のことも。

ゆとりある客室、ベッドでこの価格は満足度が高いのではないか。

「過不足ない」アイテムと会員システム

客室の備品もラインアップに「隙なし」の印象だ。

化粧水や乳液、綿棒などアメニティはすべて、フロントのアメニティバーから取っていくエコスタイルで環境に配慮。

客室には、ドライヤーやハンガー、スリッパなどベーシックなものに加えて、空気清浄機、ワイヤレス充電器付きのデスクライト、消臭芳香剤、クリーニングの注文票も置かれている。

さらに、ズボンプレッサーも廊下に常備されている。

ズボンプレッサーやクリーニングの注文票は昨今、客室や廊下に常備するのではなく、フロントでオーダーするホテルが大半だが、「需要があるかぎりは残しておきたい」と内田さん。クリーニングの注文票は、連泊ゲストのニーズも意識している。

エコや経費の観点から、連泊ゲストを今後もっと呼び込みたいと考えており、3泊以上で割引するプランも出しているそうだ。

会員システムはシンプル、わかりやすさもポイント

他方、会員システムはごくシンプルだ。1回の宿泊において、「宿泊費3%オフ」「次回宿泊で使える5%分のポイント付与」の特典があり、溜まったポイントはPayPayなど各種電子マネーサービスのポイントに変えることもできる。

ここまで客室、ベッド、備品、会員システムと見てきたが、いずれも、出張族にとって必要最低限+αを手堅く押さえている。インバウンド増加で客室価格が高騰する現在にあって、良心的に思えるのは筆者だけだろうか。

なぜ、このようなホテルづくりができているのだろうか。背景には、同ホテルの成り立ちがある。

【もっと読む】地方の鉄道会社が成功「誠実ビジホ」執念の"実態" ものづくりの境地?静鉄ホテルプレジオの凄み では、後発でありながらも支持されるホテルづくりに向き合った担当者たちが奮闘について、ホテル業界に詳しいライター・編集者の笹間聖子氏が詳しくお伝えしている。

笹間 聖子:フリーライター・編集者

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