1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

中国鉄鋼業界の「過剰生産体質」が生む輸出の洪水 2024年の鋼材「純輸出量」が初めて1億トン突破

東洋経済オンライン / 2025年2月3日 18時0分

中国の鋼材の純輸出量は1億トンの大台を突破した。写真は輸出待ちの鋼材を検査する税関の係官(山東省の青島税関のウェブサイトより)

中国の鋼材の純輸出量が過去最高を更新した。中国海関総署(税関)が1月13日に公表したデータによれば、2024年の鋼材輸出量は1億1070万トン、輸入量は681万5000トンであり、(前者から後者を引いた)純輸出量は1億390万トンと初めて1億トンの大台を超えた。

【写真】中国の鉄鋼最大手、宝武鋼鉄集団の転炉設備

鋼材の輸出量に限れば、過去最高記録は2015年の1億1240万トンだ。しかし同年は1278万トンの輸入があり、純輸出量は9962万トンと1億トンには届かなかった。

輸出単価が2割下落

純輸出量を過去最高に押し上げた主因が、(輸入の減少ではなく)輸出の急増にあるのは言うまでもない。2024年の鋼材輸出量の増加率は前年比22.7%に達した。業界関係者によれば、背景には中国国内の需要不足と、海外市場での価格競争力(の高さ)があるという。

中国国内では不動産不況の長期化により、主に建築向けの鋼材の需要が低迷している。政府系シンクタンクの冶金工業計画研究院のレポートによれば、2024年の鋼材の国内需要は推定で前年比4.4%減少した。

一方、輸出に関しては量こそ大幅に増えているが、輸出単価の下落が止まらない状況になっている。2024年の鋼材の輸出単価は1トン当たり平均755.34ドル(約11万8924円)と、前年比19.4%下落した。

国内需要の弱さにもかかわらず、中国の粗鋼生産量はほとんど減少していない。中国鋼鉄工業協会の推計によれば、主要鉄鋼メーカーの2024年の粗鋼生産量は8億1560万トンと前年比1.14%の微減にとどまる見通しだ。

主原料の鉄鉱石の輸入量はむしろ増加している。中国の2024年の鉄鉱石輸入量は12億3650万トンと、前年比4.9%増加した。

粗鋼生産量がわずかながらも減る中で、鉄鉱石の輸入量がなぜ増えたのか。一部の業界関係者は、(国内需要の低迷と輸出単価の下落で)業績が悪化している鉄鋼メーカーが、(価格が安い)低品位の鉄鉱石の輸入を増やしたためではないかと見る。また、輸入された鉄鉱石が港湾在庫として積み上がっているとの見方もある。

反ダンピングが増加

国内需要で消化しきれない鋼材は輸出に向かう。では、具体的にはどこに運ばれているのか。

中国鋼鉄工業協会のデータによれば最大の輸出先はベトナムで、2024年1月から11月までの輸出量は1178万2000トンに上った。2位以下の輸出先はアラブ首長国連邦、インドネシア、韓国、ブラジル、サウジアラビアと続く。

鋼材の輸出急増は、諸外国で中国製の鉄鋼製品に対する(反ダンピングなどの)貿易救済措置の増加を招いている。中国鋼鉄工業協会のまとめによれば、2024年以降に開始された調査件数は2025年1月初旬までに33件に上り、2020年から2023年までの合計件数を上回った。

「わが国の鉄鋼メーカーは現在の経営環境を踏まえて、持続可能なやり方で輸出業務を推進し、自社の権益を守るために積極的に行動すべきだ」。中国鋼鉄工業協会はそう提言している。

(財新記者:羅国平)
※原文の配信は1月14日

財新 Biz&Tech

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください