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土壇場までもつれること必至、少数与党の予算審議 ひとまず成立させた後、補正予算に合意を反映する道

東洋経済オンライン / 2025年2月4日 11時30分

しかも、予算案の修正が、単に金額だけの修正ならまだしも、新たな施策を2025年度から実施するために予算案を修正するとなると、その施策の実施体制を整える準備も必要となる。単に予算案で金額さえ盛り込めれば実施できるというものでは決してない。

実施体制を整えるためには、その体制整備のための議論も必要で、国の直轄事業でないなら、地方自治体にも協力を仰がなければならず、1週間やそこらで決着をつけられるものではない。

東日本大震災も、コロナも「ひとまず成立」だった

だとすると、予算案の修正というより、2026年度以降の実施とか、2025年度途中で施策の実施体制も整えつつ補正予算で対応する、といった妥協案を一部の野党に提示して合意する代わりに、予算案についてはひとまず修正なしで衆議院で賛成する、という可能性が考えられる。

予算案をひとまず修正なしで成立させた後に、補正予算で実質的に当初予算を修正するという前例はままある。

東日本大震災の発災直後も、新型コロナウイルス感染症の感染拡大初期も、そうだった。民主党の菅直人内閣が2011年1月24日に2011年度予算政府案を国会に提出し、3月1日に衆議院で可決した後に東日本大震災が3月11日に発災した。震災復興の予算が必要なところだが予算案は修正されず、衆参ねじれ状態の中で、3月29日に参議院で否決されたものの衆議院の議決をもって国会の議決となり年度内成立した。

その後、4月28日に震災復興予算を盛り込んだ2011年度第1次補正予算を国会に提出し、5月2日に可決成立している。

第4次安倍晋三内閣は、2019年12月20日に2020年度予算政府案を閣議決定した。そのとき、新型コロナの感染拡大はまだ予想されておらず、コロナ対策の予算は全く計上されていなかった。その予算案をそのまま、2020年1月20日に国会に提出し、コロナ対策に関する野党の修正要求もあったが、3月26日に修正なしに参議院で可決し年度内成立した。

その後、4月27日にコロナ対策予算を盛り込んだ2020年度第1次補正予算を国会に提出し、4月30日に可決成立している。

このように、当初予算を修正なしに成立させた後に、すぐさま修正を加えた補正予算を成立させるということが、過去にはあった。

少数与党内閣は威信を保てるか

確かに、前掲の例は異例の事態に直面したときに採られた措置ではあるが、いったん成立した歳出予算を増額するだけでなく減額することもできるし、税収見込み額を減額するということも補正予算で行われたことがある。

補正予算の提出に間に合わせるように、新規施策の実施体制を整えるという時間的余裕も確保できる。前掲の例のような日程なら、参議院選挙前にも可能となる。

すでに国会に提出したことで、予算案修正という事態は、内閣の沽券にかかわる。しかし、補正予算を編成する過程で、成立した当初予算を修正することは、(決して褒められたものではないが)ほぼ毎年のように行われており、内閣の威信を傷つけることにはならない。

予算案の衆議院通過をめぐり、今後の与野党協議がどうなるか、目が離せない。

土居 丈朗:慶應義塾大学 経済学部教授

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