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「フジ→文春」大衆の矛先が一気に変わった理由 世紀の誤報に加え、会見でのノイズ活用が効いた

東洋経済オンライン / 2025年2月7日 8時40分

10時間以上に及んだフジテレビ「2回目」の会見。毒抜きの効果を果たし、矛先が文春に向く一因となった(撮影:梅谷秀司)

人気タレントの中居正広氏の性的スキャンダルとフジテレビの対応をめぐって日本のメディアは激震したが、その後に開催された10時間超にわたる会見と文春砲の「誤報」によって、どうやら新たなフェーズに入ったようだ。

【画像】記事をしれっと訂正? 『週刊文春』編集長が発表した声明

とりわけ週刊文春が事件当日の会食について、被害者がフジテレビの幹部A氏に誘われたとしていたものを、「中居氏に誘われた」「A氏がセッティングしている会の“延長”と認識していた」と訂正し、お詫びしたことに批判が集中した。

フジテレビの不祥事に対して「停波」と息巻いていた人々の論調が、今度は文春の不手際に「廃刊」を叫び出すといった様相を呈した。

それだけコンプライアンスや正確性に過敏になっているともいえるが、もっと重要なことは、この一億総付和雷同するかに見える状況にデジタルメディアの生態系の力学が影を落としていることだろう。

大きく様変わりした“情報の広がり方”

スマートフォンとSNSの普及などによって、情報の広がり方は大きく様変わりし、発信する側もその特性に適応した。

ネット環境が常に過剰な情報で満たされている中で、注目を獲得するためには、SNSへの波及の仕方を計算に入れつつ、今の時代が求めている燃焼性の高い話題を拡散する必要がある。

このような構図は、2000年代以降、アテンション・エコノミー(関心経済)という概念で語られてきた。かつて社会学者のマイケル・ゴールドハーバーは、世界経済が物質ベースのものから人間の注意力に基づく情報ベースのものへと移行すると予見した。

アテンション=注意・関心の争奪戦であり、そこでは「耳目を集められた者」が勝者となる。注意・関心を作り出せるということは、媒体やプラットフォームそのものが広範な影響力を持つようになり、新たな権力が生じ得るということでもある。だが、この弊害についてはあまり検証されていない。

法学者のティム・ウーは、先の概念を踏まえ、「アテンション・ブローカー」という考え方を提唱した。この場合の仲介とは人間の注意・関心を転売することを指す。人々に娯楽やニュース、無料サービスなどを提供することで注目を集め、その注目を広告主に転売して現金を得ることである(Blind Spot: The Attention Economy and the Law/Antitrust Law Journal Vol.82〈2019〉)。

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