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道路陥没「じっくり復旧計画」のヤバすぎる近未来 陥没復旧を長期化させる水との闘い【前編】

東洋経済オンライン / 2025年2月13日 7時0分

埼玉県八潮市の県道交差点で道路が陥没した現場付近(写真:時事)

「本格的な復旧までは、急いでも3年程度かかる」。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故について、県が設置した復旧工法検討委員会の委員長を務める日本大学の森田弘昭教授(下水道工学)はこのような見解を示した。

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事故現場では現在、現場の上流と下流をバイパス管(仮配水管)でつなぎ、迂回する工事が進められている。具体的には、現場付近のマンホールから汚水をポンプでくみ上げ、約550メートル下流側にあるマンホールから放流。その間にバイパス管を設置する。そのうえでポンプでくみ上げた水をバイパス管に入れ、約100メートル下流の下水道本管に合流させる。この工事に約3カ月かかるという。

しかし、これはあくまでも暫定的な対応にすぎない。本格的な復旧のためには下水道管を地下深くに設置することになり(現状地下約10メートルの位置に敷設されている)、工事のための地質地盤の調査も必要になる。

急流の中で工事をするようなもの

埼玉県環境科学国際センターがまとめた「埼玉県地質地盤資料集2022年度版」によると、現場近くの地質は主に砂やシルトで構成されている。砂は粒が比較的大きく、粒同士の隙間が多いため、水はけはよいが崩れやすい。シルトは砂より粒が細かく、水分を含みやすいため、地盤としては軟弱で、圧縮や沈下が起こりやすい。

その結果、地盤の硬軟を表すN値も低くなっている。N値が5以上であれば一般住宅の建築は可能とされているが、今回の事故現場付近はそれ以下の数値の地点が多く、こうした軟らかい地盤では重機が入れず、工事は困難になることが予想される。

さらに工事を難しくしているのが「現場に集まる水」である。

その1つが地下水だ。前述の地盤調査では、孔内水位が地表面から深さ2〜3メートルの位置にあったことがわかる。孔内水位はボーリング調査時の地下水の深さであり、必ずしも現在の地下水の深さとは一致しないが、比較的浅い位置に水面があると考えられる。

さらに現場では大量の下水が流れており、その速さは「流速毎秒1〜2メートルほど」(森田教授)。流速毎秒1メートルは川の流れとしてはやや速めであり、毎秒2メートルになるとラフティングが可能な速さになる。このような強い水流の中で作業を行うのは極めて困難だ。

流れ込む下水を減らすため、埼玉県は下水道を使用する9市3町に対し、「下水道使用自粛」を呼びかけてきた(2月12日12時から解除)。東京都水道局の調査をベースに、住民1人が1日に使用する水の量を約220リットルと仮定すると、9市3町の約120万人が1日に26万4000立方メートルの水を使用し、それが下水道に入る。この水量は大型タンカー1隻分の積載量に相当する。

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