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勝算絶無の日米艦隊決戦「マリアナ沖海戦」 ゲリラに拘束されなかったら…? そこに勝機はあったか

乗りものニュース / 2024年6月19日 16時12分

1944年6月、マリアナ諸島近海で索敵を行うアメリカ軍のTBF「アベンジャー」雷撃機(画像:アメリカ海軍)。

80年前の6月19日、北太平洋で日米両軍が激突し、マリアナ沖海戦が発生しました。アメリカ軍の圧倒的な兵力を前に、策略ミスも重なり旧日本軍は大敗北。あまりにも一方的な展開でしたが、勝機を見出すことは不可能だったのでしょうか。

各個撃破された日本軍

 1944(昭和19)年6月19日に勃発したマリアナ沖海戦は、日本本土空襲のためにマリアナ諸島を攻略しようとするアメリカ軍と、防衛しようとする旧日本軍との戦いでした。
 
 この時期、旧日本軍は巨大兵力を持つアメリカ空母艦隊に対抗すべく、基地航空部隊と日本空母艦隊を連携させようと考えました。しかしタンカー不足もあって、決戦海域は日本艦隊の展開しやすい近場とし、実際に侵攻を受けたマリアナ方面での決戦は想定していませんでした。

 そこでは海軍の福留中将が現地のゲリラに拘束され、旧日本軍の兵力配置はアメリカ軍に知られる羽目に。その結果、日本空母が拠点としたタウイタウイ近辺にアメリカ潜水艦隊が出没し、空母艦載機の訓練も進まなくなります。さらに、アメリカ軍がビアク島に上陸したことを受け、旧日本軍はマリアナ防衛のために準備した基地航空兵力を動かし、兵力が分散してしまったのです。

 1週間ほど前の6月11日、マリアナ諸島のサイパン島をアメリカ軍機が空襲、上陸作戦を開始しました。日本はビアク島に兵力を動かし、小兵力となった基地航空部隊は12日までに無力化されてしまいます。

 日本艦隊は合流や補給に手間取り、戦場に到着したのは6月19日でした。日本は艦載機の航続力有利を活かし、アメリカ空母艦載機が届かない距離から攻撃隊を出す「アウトレンジ攻撃」を挑みます。しかし、レーダーで攻撃隊接近を探知したアメリカ艦隊が、保有する戦闘機の大半を迎撃に向け、日本の攻撃隊は大損害を受けます。防空網を突破した日本の攻撃機も、近接するだけで信管が作動する「VT信管」による対空砲弾で大半が撃墜されました。

 さらにアメリカ潜水艦の魚雷と空襲で空母「大鳳」「翔鶴」「飛鷹」が撃沈されたことで、日本艦隊に致命的な被害が出、海戦は大敗。サイパン島は陥落して、長距離爆撃機B-29の発進基地となります。以降、日本本土は激しい空襲を受けることになったのです。

基地航空隊の数は多いはずだった

 このようにマリアナ沖海戦は惨敗で、太平洋戦争のイフを扱った考察でもほぼ取り上げられていません。艦隊兵力だけでも、旧日本軍の空母9(艦載機428機)、戦艦5、重巡11、軽巡2、駆逐艦22+補給部隊の軽巡1、駆逐艦5、海防艦4に対し、アメリカ軍は空母15(艦載機901機)、戦艦7、重巡9、軽巡8、駆逐艦67と圧倒的です。

 さらにアメリカ軍はこれとは別に、上陸部隊支援用の護衛空母15(艦載機314機以上)、戦艦7、重巡1、軽巡2、駆逐艦36隻を保有しており、勝ち目はありませんでした。

 旧日本軍は、計画ではマリアナ諸島に1644機の航空機を配備し、空母と合わせればアメリカ艦隊を上回るはずでしたが、実際に作戦可能だった航空機は、その2割程度でした。アメリカ軍に対処するために兵力を移動し、整備員や武器弾薬も分散、各個が撃破されたのです。

 こうしたことから、史実の作戦だと旧日本軍は善戦も難しかったでしょう。もし、日本の作戦計画が漏洩しなければ空母も訓練ができ、さらにアメリカ軍攻撃目標がマリアナと確信していたら、少なくとも基地航空隊の分散は避けられたはずです。

 この場合は基地航空隊の機数が多いことで、アメリカ軍上陸部隊を発見できるかもしれません。その情報を受けて、日本空母艦隊が目標を上陸部隊に絞ったなら、どうでしょうか。上陸部隊には護衛空母15隻が随伴していますが、アメリカ主力空母艦隊よりは対空防御力が弱く、上陸船団の輸送船には12万人の米兵が乗っています。輸送船ごと相当数を沈められたのなら、日本艦隊は壊滅と引き換えに、アメリカ軍の士気やサイパン島の陸戦に影響を与えられたでしょう。

 次に、後知恵で考えたらどうでしょうか。旧日本軍は1943(昭和18)年のガダルカナル島撤退後の戦いに問題があったといえます。日本本土から遠く、補給線も長いラバウルに航空兵力を集め「ろ号作戦」などを進めていました。ラバウルはアメリカから見て、空母艦載機と基地航空機を集中できる立地です。旧日本軍は陸揚げした空母艦載機を含む多数の航空機を失っています。マリアナであれば、アメリカ基地航空隊はほぼ介入できません。

小型空母は哨戒用へ…

 ガダルカナル島撤退時に、「日本本土からも近いマリアナに兵力を集め、有利な決戦を行う」と決め、「日本空爆のために敵はサイパン島に来る。マリアナで決戦を挑む」として、マリアナの防備を重点的に固め、燃料を日本本土に輸送していたら、少しは違ったでしょう(各地で抵抗しないことで、資源地帯を攻撃される危険性はありますが)。

 日本軍のレーダーでも、敵艦載機群を80km遠方から探知した実例はありますから、マリアナにレーダー基地を多数作り、偵察機も多数配備、さらに哨戒艇による哨戒網も張り巡らせれば、アメリカ空母からの奇襲被害は減らせたでしょう。台湾沖航空戦で述べ1251機を投入して成果が芳しくない旧日本軍ではありますが、空母と合わせて2000機以上集められたなら航空優勢を取れたかもしれません。

 日本空母も産油地帯に近いルンガ泊地で訓練し、その後日本本土に戻したうえで出撃させれば、アメリカ潜水艦隊に攻撃されて訓練もできないことはなかったでしょう。また「海鷹」「神鷹」「鳳翔」などの小型空母は、決戦時に対潜哨戒と索敵で運用する方策もあったと考えられます。

 兵力を集中したうえで、日本空母がミッドウェー海戦で敗北した原因である、「敵基地の陸上航空機に艦隊を発見され、基地を爆撃している最中に脇から現れた敵空母艦載機の攻撃を受ける」の逆を成立させれば、アメリカ艦隊にも被害が出たでしょう。

 また史実では、日本空母と基地航空隊は「どう連携するか」も決めておらず、各個撃破されましたが、本来なら味方基地航空機の傘の下に艦隊を起き、アウトレンジなどせずに基地機と共に戦いを挑む方が有利といえます。

 そこまでしても「勝てる」とはとても断言できませんが、史実のように「ほぼ戦果ゼロ」にもならなかったと考えられます。

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