「5ナンバー車」もはや中途半端? 規格を守る意義 “ちょっと幅出ちゃって3ナンバー”と、実際違いあるか
乗りものニュース / 2024年6月2日 16時12分
今やコンパクトカーですら、小型車である「5ナンバー」の枠を越えて大きくなり、「3ナンバー」化するケースが増えてきました。実際、違いはあるのでしょうか。軽以外の小さな車の選択肢が縮まっています。
新型「フリード」も一部3ナンバー化
2024年5月に先行予約が始まったホンダの新型「フリード」は、一部グレードが3ナンバー化したことが話題となっています。気づけば、コンパクトカーの日産「ノート」も派生の「ノートオーラ」は3ナンバー。ホンダ「フィット」でさえ、一部クロスオーバーグレードは3ナンバーとなっています。そういえば、小さなスポーツカーがウリだった私の愛車、マツダ「ロードスター」も3ナンバーです。いつの間にか、小さなクルマの3ナンバーが珍しくなくなっています。
3ナンバーと5ナンバーという区分は、クルマの大きさを知るための目安となります。エンジン排気量が2000cc以下、全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下が5ナンバー。それらのどれかひとつがオーバーすると3ナンバーになります。
先に挙げた車種を含め、最近多いのが、車幅のみ1700mmを超えているという小さな3ナンバーです。ちなみに税金は、エンジン排気量によって異なりますが、3ナンバーになったから税金が高くなるわけではありません。
しかし、昭和の時代は、もう少しシンプルで、「5ナンバーは小さいクルマで税金が安い」、「3ナンバーは大きくて高級で、エンジン排気量も大きいので、税金も高い」というのが常識でした。これが平成を経て、令和に至る間、徐々にクルマが大きくなっていった結果、車体サイズは3ナンバーだけど、エンジン排気量は2リッター以下というコンパクトカーが増えるようになったわけです。
クルマが大きくなったのは、様々な理由が挙げられます。最も大きな理由は、見栄えの良さでしょう。単純にクルマが大きいほど、高くて立派に見えるもの。また、クルマが大きくなれば室内も広くなります。
フルモデルチェンジで「良いクルマ」をアピールするのに、「先代よりも大きくなりました」ということは、大きな売り文句になります。さらに安全性という点でも、車幅が大きいほど、側方からの衝突に対して強くできます。
見栄えが良くて、安全性が高い、しかも税額は一緒となれば、幅がほんの数センチ大きくなっていくのも不思議ではありません。そうした結果、気が付けば、コンパクトカーなのに3ナンバーというクルマが増えてきたのです。
「シエンタ」5ナンバーを守る
その一方で、頑張って5ナンバー枠を守るクルマも存在します。「フリード」のライバルで3列シートのミニバンであるトヨタ「シエンタ」は車幅1700mm以下を守っています。
スズキの新型「スイフト」も、グローバルモデルですが5ナンバー。「カローラ」もほとんどのグレードで3ナンバー化しましたが、旧モデルである5ナンバーの「カローラアクシオ/フィールダー」の併売を続けています。ちょっと前までのタクシーの代表格であった「クラウンコンフォート(クラウンセダン)」は、高級車「クラウン」の看板こそ背負っていますが、そのサイズは5ナンバーでした。
そうした5ナンバーを守る動きは、やはり「大きくなると不便」という原則が理由になっていると言えるでしょう。クルマの進化の早さに、道や駐車場というインフラの進化が追い付いていないのです。すれ違いに苦労する狭い道や、5ナンバーじゃないと辛い、狭い駐車場は、昔と変わらず存在します。
5ナンバーに慣れた感覚で、3ナンバーを運転すると、狭い場所で気を使うことがままあります。やはり、どんな理屈を並べても、「小さいクルマの方が扱いは楽」という原則をくつがえすことはできません。
そういう意味で、主として幅において3ナンバー化する動きも、際限なく大きくなっているのではなく、5ナンバー超えてちょっとというところで拡大は停止しているようです。「クルマは大きくしたい。でも、大きすぎると不便」という葛藤の末に、1700mmを少し超えたところでウロウロしているわけです。
それであれば、もうちょっと頑張って5ナンバー内に収めることも可能でしょう。しかし、クルマは今やグローバル製品です。3ナンバーや5ナンバーというルールは日本独自のもの。改めて見直してみれば、5ナンバー枠にこだわるのは日本市場向けの製品が中心です。
そうなると、まさに登録車の5ナンバーはガラパゴスの象徴になってしまいます。他方、より小さいクルマを求めるならば、日本独自の軽自動車があり、今や新車の4割を占めている状況です。誰か偉い人が「クルマの5ナンバー枠はいらない」と強く言えば、意外とあっさり5ナンバーは消えていくのかもしれませんね。
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