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「飛行群司令」のお仕事って? 戦闘機部隊を支える“マネージャー” 飛行隊長との絶対的な違いは

乗りものニュース / 2024年6月11日 9時42分

那覇基地の第9航空団飛行群司令を務める高倉1佐。薬剤師免許を持っている異色のパイロットで、「戦闘機に乗りたかったのでパイロットを目指しました」と語ってくれた(石津祐介撮影)。

実際に戦闘機を操縦するのはパイロットですが、そのパイロットが所属するのが飛行隊、そして飛行隊をまとめているのが飛行群です。あまり表に出ることのない飛行群の役割について、那覇基地で飛行群司令に話を伺いました。

第9航空団を支える3つの「群」

 航空自衛隊は、防空任務のために全国を4つのエリアに分け、それぞれに航空方面隊を置いています。なかでも最も新しく2017(平成29)年に発足した南西航空方面隊は、沖縄県の那覇基地に所在し、その隷下にはF-15J戦闘機を運用する第9航空団が編成されています。

 主に南西諸島の防空任務を担当する第9航空団には、第204飛行隊、第304飛行隊および南西支援飛行班が所属していますが、航空団の隷下には「飛行群」と呼ばれる部署が設けられており、複数ある飛行隊を統括しています。

 航空自衛隊の基地がメディアで取り上げられる際、航空団や飛行隊といった部署が紹介されることが多いのですが、飛行群はなかなかスポットライトが当たることがない、いうなれば「縁の下の力持ち的」存在の組織です。飛行群、そのトップである飛行群司令とはどういう役割を担っているのか、第9航空団の飛行群司令である高倉征宏 1等空佐に話を聞きました。

 そもそも第9航空団には、飛行群のほかに「整備補給群」と「基地業務群」があり、これら3つの群と団司令部から航空団は構成されています。

 第9航空団の飛行群では、第204飛行隊と第304飛行隊、そして南西支援飛行班という3つの飛行隊などに属するパイロットの管理を担っています。一方、整備補給群は、その名の通り航空機の整備とそれに関する燃料や弾薬、部品の補充、さらにそれらを支える車両や装置の維持・管理。そして基地業務群は、基地機能の維持を担い、施設や通信機能、会計や福利厚生、医務に関すること、さらには基地警備や防空などを、それぞれ担当しています。

 3つある「群」のなかで飛行群が担う役割について、高倉1佐は次のように語ってくれました。

「航空団は、上級部隊である方面隊や航空総隊の計画や作戦に必要な戦力を提供する役割を持っています。第9航空団は戦闘航空団なので、保有する戦闘機を必要な戦力として提供することになります。なかでも飛行群は所属する戦闘機操縦者によって実際に戦闘機を運用するところです。平たく言うと『飛ばす』 部署であり、航空団という大きな槍の穂先に例えられると思っています」

飛行群司令と飛行隊長の違い

 では、具体的に飛行群司令には、どのような役割が期待されるのでしょうか。これについて高倉1佐は「個々のパイロットが持つスキルの維持・向上」といいます。

「戦闘機にはミサイルなどの搭載武器をはじめとした、付与される各種任務を遂行するための様々な装備があります。これらを適切に使いこなし、いかなる状況下でも求められた任務を果たす操縦者を育て、その能力を維持、向上させるという責任を隷下各飛行隊等に果たさせるのが、飛行隊を預かる飛行群司令の一つの大きな役割だと思います」

 隷下の飛行隊それぞれが戦闘機などを使用する能力が高いことはもちろんのこと、各々のスキルがより高いレベルで均質化するように、俯瞰で飛行隊や各パイロットの資質・能力を見て助言するのが、飛行群と飛行群司令の役割だということです。

 航空団の上級司令部である航空総隊や航空方面隊を含め、航空自衛隊の第一線に立つ戦闘機パイロットは、必要とされるスキルについて一定のレベルが求められます。飛行群の隷下にある飛行隊パイロットの練度や能力を引き上げ、さらにそれを維持するためには飛行隊長含め「どのような動きをする必要があるのか、どのような教育訓練が必要なのか」と、客観的に見続けるのが飛行群司令の任務だといえるでしょう。

「個々の隊員の技量を伸ばすのは隊長で、飛行隊を組織として動けるようにするのが群司令の仕事です。上級部隊から航空団司令に付与される任務のうち、航空機の運用に関するもののほとんどは飛行群司令が実行の責任を負いますが、当然、現場でそれらを実行するのは各パイロットです。従って、各操縦者への能力付与だけでなく、彼ら彼女らと責任を分かつことができるような人間関係を組織的に作ることも、操縦者集団を預かる群司令の責務だと考えています」(高倉1佐)

群司令の役割はマネジメント

 また飛行隊長と飛行群司令には、トップ自ら戦闘機に乗って任務を行うかという点も大きな違いだと話してくれました。

 昨今、那覇基地は全国の航空自衛隊基地の中でも特にスクランブル回数が多い基地として知られています。そのため任務にあたる戦闘機パイロットも日々緊張を強いられていますが、飛行隊のトップである飛行隊長は、隊員のパイロットと同様に対領空侵犯措置任務に就いており、また日々、戦闘機による通常訓練も行っています。

 一方、飛行群司令は実際に戦闘機に乗って任務を行うことがありません。飛行服(フライトスーツ)を着て日々の業務に従事しているものの、スクランブル対応で待機したりといったことはせず、デスクワークがほとんど。航空機を飛ばす実務のマネジメントに徹しています。

 また高倉1佐は、大学の薬学部を卒業し薬剤師免許を有するという航空自衛隊のパイロット出身者としては珍しいキャリアを持っています。薬剤師として就職することなく、航空自衛隊に入隊し戦闘機パイロットになったという経歴について伺うと、「男の子ですから。戦闘機に乗りたかったのでパイロットを目指しました」と教えてくれました。

 そのような高倉1佐には、いまから7年ほど前には第204飛行隊の隊長を務めていた経験もあります。そこで、最後に今年(2024年)の12月で創隊60周年を迎える同部隊について感想を伺いました。

「私自身も第31代目の飛行隊長を経験した部隊でもあり、創隊から60年にわたり連綿と続く隊の歴史とともに、今、204飛行隊が我が国の安全保障環境を考える上で最も注目されるこの南西防衛区域で任務を継続しているということを誇らしく思います。戦闘機の運用は 決して操縦者1人で成り立つものではなく、部隊の歴史を編んできた諸先輩方や同僚後輩など1人ひとりがそれぞれ力を合わせてきた結果として今のこの瞬間があると考えています。この伝統は、今後も続いていくのだと感慨深く思っています」

【動画】空自F-15戦闘機 コックピットから那覇基地どう見えてる?

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