その座席、実は超豪華! 驚きの移植「座席だけ名列車」たち ライバル私鉄が“夢の競演”している車両も!?
乗りものニュース / 2024年6月15日 15時12分
鉄道車両には、製造後に様々な理由で改装を受け、座席が交換されるものもあります。交換される座席は新品とは限らず、同時期に引退した車両の座席を譲り受け装備することも。今回は名車の座席を装備した現役車両を紹介します。
名車の座席を譲り受け引退した車両
鉄道車両の引退は、いつの時代も話題となります。引退した車両はたいていが廃車解体され、印刷物や動画でしかその存在を見ることができなくなります。しかし、部分的とはいえ現役時代の名残を実感できる車両も存在します。それは「廃部品がほかの車両へ流用された」ケースです。
今回は座席鉄である筆者(安藤昌季:乗りものライター)が座席に着目し、現役時代に名車とされた車両の座席を受け継いだ車両をいくつか紹介していきます。まずは、座席を譲渡した車両、受け継いだ車両の双方が引退している事例から。
■JR九州485系電車「RED EXPRESS」
国鉄特急形を改装したJR九州の485系ですが、改装で設置された半室グリーン車には、0系新幹線のグリーン席が1+2列配置で設置されていました。0系グリーン車は2001(平成13)年に消滅しましたが、この485系(クロハ481形)は2011(平成23)年まで運行されました。
■JR九州キハ31形気動車
1987(昭和62)年に国鉄が製造した気動車で、観光路線でのサービス改善のために、0系新幹線普通車の転換式クロスシートを1+2列、座席間隔910mmで装備しました。オリジナルの座席間隔940mmよりやや狭かったものの、横引きカーテンでの個別窓は特急形のようで、“新幹線感”を味わえる車両でした。2019(平成31)年に引退しています。
このほか0系新幹線の座席を装備した引退車両として50系客車の快速「海峡」や、国鉄特急形グリーン車の座席を装備した165系電車、14系客車なども存在しますが、筆者が乗車していないため割愛します。ここからは今なお乗車できる車両を紹介します。
「ニューレッドアロー」の座席は2社へ
■JR四国キハ32形気動車「鉄道ホビートレイン」
キハ32形は国鉄末期の1987(昭和62)年に製造された、JR四国の気動車です。本来はオールロングシートですが、2014(平成26)年に予土線の観光列車「鉄道ホビートレイン」として、0系新幹線を模した姿に改造されました。車内にはHOゲージの鉄道模型が飾られ、運賃表示器には東海道新幹線開業当初の12駅の駅名が掲載されているなど、遊び心のある楽しい車両です。
そして車内の一部座席が0系新幹線普通席と同じ転換式クロスシートに交換されています。色も0系オリジナルの銀を基調としたもの。もっとも、キハ32形は現在では珍しい金属バネ台車を装備した車両で、乗り心地から新幹線を感じるのは難しいですが。
■秩父鉄道6000系電車
2005(平成17)年に登場した、有料急行「秩父路」用の車両です。西武鉄道10000系「ニューレッドアロー」のリニューアル前の座席を装備しています。集団見合い式の座席配置で、一部座席ではリクライニング機能も使用可能です。なお、車両中央部は向かい合わせながら固定窓なので、“特急感”があります。
■伊豆急行8000系電車
同じく2005年より投入された、伊豆急行の通勤形電車です。西武鉄道10000系のリニューアル前の座席を備えています。
座席配置は秩父鉄道6000系とは異なり、片側にボックスシートとして10000系の座席を配置し、もう片側はロングシートです。リクライニング機能は固定されています。
西武10000系自体は2024年現在で現役車両ですが、すでに全車両の置き換えが発表されており、秩父鉄道6000系と伊豆急行8000系のオリジナル座席は10000系より後まで残る可能性があります。
「京王の夢」が島根で叶った? しかも座席はライバル私鉄!?
■一畑電車5000系電車
1998(平成10)年に、京王電鉄5000系を改造して誕生した急行形電車です。3扉ロングシートであった京王5000系を2扉クロスシートに改装しており、もともと扉があった部分にも同一仕様の二段窓が取り付けられて、編成美に配慮しています。
京王5000系は登場時、2扉クロスシートの特急形として検討されるも断念された車両ですから、5000系が京王電鉄から引退した後に、「こうしたかった5000系」が実現したともいえます。
座席配列は車端部と側扉付近以外は1+2列のクロスシート。1人掛けは転換式クロスシート、2人掛けは回転式クロスシートです。
この2人掛け回転式クロスシートは、京王5000系と同じ1963(昭和38)年に登場し2000(平成12)年に引退した、小田急電鉄のロマンスカー3100形「NSE」に装備されていたもの。自然な形状の背もたれ、お尻側が少し下がった座面、座った際に足を起きやすいフットレスト、柔らかいクッションとよくできています。個人的にはロマンスカーで最高の座席のひとつです。
なお一畑電車5000系は、1編成が車内を木質化した「しまねの木」に改造されていますが、こちらのセミコンパートメント風座席も、小田急3100形由来の回転式クロスシートの下半分と、1人掛け転換式クロスシートの下半分を流用したものであり、元座席の着座感を残したものです。
とはいえ一畑電車5000系は近い将来の置き換えが発表されており、乗車は今のうちかもしれません。かつて限定運用だった特急「スーパーライナー」も、新鋭7000系に置き換わり、確実に乗る方法がないのが難ですが……。7000系はボックスシートとロングシート仕様ですが、今後は5000系を受け継ぐような特急形仕様の車両の登場に期待したいものです。
JR九州と北海道にも
■JR九州713系電車
国鉄が1983(昭和58)年に投入した、2扉セミクロスシートの近郊形電車です。1996(平成8)年の宮崎空港線開業に合わせ、車内がリニューアルされました。
リニューアル後は扉間の座席を、485系特急形電車の廃車発生品である回転式リクライニングシートに交換しています。これはいわゆる国鉄時代の簡易リクライニングシートではなく、JR化前後に換装された改良座席であり、座席背面のテーブルも使用可能です。
ロングシート部分もバケットタイプでヘッドレストを装備するなど、料金不要車両としては最高レベルのグレードとなっています。817系による置き換えで数を減らしているものの、宮崎地区で活躍を見せています。
なお、JR北海道のキハ54形気動車も、急行形仕様の3両は0系新幹線の転換式クロスシート装備で誕生したほか、特急形であるキハ183系や、789系電車1000番台のリクライニングシートに交換された車両も存在したようです。キハ54形も後継のH100形電気式気動車に置き換えられ、宗谷本線や留萌本線など、ごく一部でしか運行されていません。
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