神戸空港閉鎖で話題「車輪出し忘れて胴体着陸」防げないの? 対策法は「外からの目」!
乗りものニュース / 2024年6月3日 16時12分
「脚の出し忘れ」が指摘されることもある飛行機の胴体着陸事故。こういったことを回避すべく取り組みが行われています。世界の先進事例はどのようなものなのでしょうか。
これまでも「あえて声に出す」で対策
2024年5月31日、神戸空港で小型の飛行機が胴体着陸事故を起こしてしまいました。今回の事故の要因については確認中ですが、一部報道では「脚の出し忘れ」が濃厚とされています。実は同様の要因で着陸してしまう事故は毎年何件か発生しています。その対策方法はどのようになっているのでしょうか。
こういったケースで負傷者が出る事は、ほかの航空事故と比べると少ないものの、機体の撤去や点検作業のために、滑走路を閉鎖させてしまうこともあります。そうなると、他の航空機の運航に支障をきたしてしまいます。
たとえば、2018年9月16日に大分空港で起きた小型機の胴体着陸事故ではパイロットが脚を出し忘れて着陸してしまったことが原因と発表されています。この事故では大分空港が2時間半にわたって閉鎖され、JAL(日本航空)やANA(全日空)の計14便が欠航になる影響が出ました。
実はパイロットはそのようなミスが発生しないよう、日頃から対策をしています。たとえば着陸前に読み上げる「着陸前チェックリスト」と呼ばれる表があり、 “脚出し”はそのひとつ。順に確認を行っていく項目のなかで1番重要なものとも言えます。
このあえて「チェックリストを使う」というのがポイントです。
実はチェックリストの内容は暗記してはいけない事になっています。というのも、人間の記憶が曖昧であてにならないというのは、長年の航空安全の分野における研究で明らかになっているからです。もし万が一、そのうちの1つをうっかり忘れてしまったら――危険に直結します。なので、毎回リストを読みながらチェックする決まりがあります。
にもかかわらず、なぜ脚の出し忘れによる事故が実際に起きるのでしょうか。着陸前のチェックリストは1回だけでなく、何回繰り返しでもよいものです。しかし、飛行中に何らかの事情でその一部を飛ばしてしまったり、後回しにしてしまったりする事も考えられるでしょう。
実は、このような事故を防ぐ効果的な方法があり、実践している制度があります。
「外野から当該機の脚を見る」結構有効?
一般的に航空機は管制塔がある空港では、管制塔からの許可がないと着陸できません。
そうしたなかで、航空先進国と呼ばれている国の管制塔では、滑走路に他の機体がない事など着陸に問題がないことを確認し、着陸態勢に入った航空機に対して「Check gear down(脚出し確認)」と呼びかけを行います。
これに対してパイロットが「Three Green(緑3つ)」と応えた場合にのみ管制官が「Cleared to Land(着陸を許可する)」と発信する手順です。
この方式は、筆者の知る限りでは海外では常に行われている国もあり、日本国内でも米軍基地などで聞いた事があります。交信手順がひとつ増えますが、脚の出し忘れ対策には有効な管制方式と言えるでしょう。
さて、その“スリーグリーン”とは一体なんのことでしょう。これは航空機のほとんどが地上では三輪車のように三脚構造である事に由来します。
航空機には通常、前脚がひとつ、主脚がふたつあります。これらの状態を表示する3つの表示灯がコックピットの計器盤に備えつけられているのです。前脚が降りてロックされた状態だと3灯のなかの上の表示灯が点灯。主脚がふたつとも降りてロックされた状態だと下のふたつが点灯します。
全ての脚が出ていてロックされた状態だと緑のランプが3つ点灯するというわけです。
ちなみに大きな飛行機になるとそれ以上の数をコールされるケースもあります。たとえばマクダネル・ダグラスのMD-11は脚が4か所に、軍用輸送機C-17「 グローブマスターIII」では脚が5か所にあります。そのような機体は表示灯が4つないし5つになります。それぞれの表示灯が各脚の状態をパイロットに知らせる事が出来るという仕組みです。
本題に戻りますが、着陸態勢に入った航空機の脚の状態を管制塔から聞かれることで、パイロットは表示灯の点滅を確認する機会が与えられます。管制塔側は脚が出てロックされた状態の航空機にのみ着陸許可を発出することになります。これは効果的な脚出し忘れ防止対策であると筆者は考えています。
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