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日本唯一のレア種別「特快速」どんな意味? 乗ったら確かに速い! 急勾配をカッ飛ばす路線

乗りものニュース / 2024年6月13日 7時12分

神戸電鉄三田線(安藤昌季撮影)。

全国で神戸電鉄にしか存在しないレア列車種別「特快速」。列車も平日朝の三田発2本のみのため、地元の人以外で乗車するのは非常に困難です。どのような列車なのでしょうか。

平日朝に2本のみの「特快速」

 兵庫県の神戸電鉄には、全国でここだけの列車種別「特快速」があります。駅の案内放送を聞くと「とっかいそく」と読むようです。英語では「SPECIAL RAPID EXPRESS」と表記されるので、直訳すると「特別快速急行」でしょうか。
 
 さらに、その特快速は非常にレアな列車でもあります。神戸電鉄三田線の三田駅を、平日朝に出る新開地行きの2本のみであり、発車時刻も6時47分および7時2分と早朝です。どんな列車なのか、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年5月に乗ってみました。

 特快速といっても車両は一般的な電車です。乗車当日は、1973(昭和48)年に製造開始した3000系がやってきました。急勾配が連続する路線のため、全ての車両が電動車です。

 到着時、電車は行先や列車種別の書かれた方向幕を回しました。そこには「特急」もありましたが、これは1998(平成10)年に廃止された種別です。目当ての特快速とは「特急より遅いが、快速より速い」という意味の列車種別なので、特急が廃止され、本来の意味を失っています。三田線や有馬線には「急行」「準急」もありますが、特快速は急行より上の列車種別なので、素直に特急でもいいのでは――と思わなくもありません。

 さて、早朝の三田駅では各車両10人程度の乗車でスタートしました。次の三田本町駅には6時49分着。ホームに5~6人の乗客がいました。6時51分着の横山駅ではざっと数えて60人ほどがホームで待っており、座席の大半が埋まりました。

きつくなっていく勾配

 6時53分発の神鉄道場駅では30人ほどが乗車。車内の雰囲気がラッシュ時らしくなってきました。物見遊山で乗っている筆者が座席を埋めるのも気兼ねするので、運転席の後ろに移動。3000系は窓が大きく前面がよく見えました。6時56分発の道場南口駅では乗車ゼロ。単線で、そこまで住宅は増えていない区間であり、のんびりした自然の中を走ります。最高速度は80km/hで、なかなかのスピード感でした。

 二郎駅には6時57分着。40人ほどが乗車し、立ち客で後ろが見通せなくなりました。田尾寺駅では列車両数増加に備え、ホームの延長された部分が柵で仕切られています。ここでも30人ほどが乗車。まだ7時ちょうどなのに、かなりの乗車率だと感じました。

 田尾寺駅を出発すると、複線用の用地が確保されており、準大手私鉄だったこともある神戸電鉄の潜在需要を感じさせます。7時4分着の岡場駅では40人ほどが乗り込みました。

 特快速はここまで各駅に停車しましたが、ここから五社駅、有馬口駅を通過します。三田線で通過駅があるのは特快速だけです。勾配や曲線もきつくなってきました。三田線の最急勾配である33.3パーミルを示す標識も目に入ります。パーミルとは千分率で、この場合は1000m進むと33.3mの坂を登るという意味です。JRなら「最大の難所」レベルの勾配ですが、対策された神戸電鉄の電車はスムーズに走っていきました。

 有馬温泉への支線が分岐する有馬口駅を通過すると、有馬線に入りました。ここからは六甲連山を越える線形で、勾配がさらにきつくなります。唐櫃台(からとだい)駅を通過すると、45.4パーミルの急勾配。車内でも坂なのが分かるほどの傾斜で、景色も迫力がありました。

続いて急カーブ

 勾配を上がると、今度は半径300mの急カーブ。アトラクションさながらで、複線電化の通勤路線とは思えないワイルドな線形です。7時10分ごろに再び45.4パーミルの区間に差し掛かりました。上がるだけではなく下がることもあり、運転台後ろだとアップダウンがはっきり見てとれます。この勾配区間を、谷上駅まで6駅連続通過するのは特快速だけです。

 急行が停車する大池駅、花山駅をあっさり通過していきます。大池駅は急勾配の途中にあり、ホームも坂になっていました。登りきると40パーミルの下り勾配です。もはや有馬線では珍しくもありません。

 7時17分、谷上駅に停車しました。神戸市営地下鉄北神線との乗換駅で大量の下車があり、ホームの向かいに停車する地下鉄車両がすぐに埋まっていきました。谷上駅を出るとしばらく地下鉄と並走し、谷上トンネルに入ります。トンネルを出ると、はっきりと分かるほどの登り勾配の線路が敷設されています。ついに勾配標は神戸電鉄最高の「50パーミル」を示しました。

 そして箕谷駅を通過。うねった線路の先には再び50パーミルの標識がありました。7時22分着の山の街駅の直前にも急勾配があります。山の街駅では23人が乗車しました。

 ここからは北鈴蘭台駅、鈴蘭台駅と連続停車します。北鈴蘭台駅で45人ほどが乗車し、再びラッシュ時らしくなってきました。北鈴蘭台駅を出ると、また50パーミル。路線全体の20%が50パーミルらしく、急勾配が連続する風景は、都市圏の鉄道では珍しいものです。

廃駅を発見

 粟生線と連絡する鈴蘭台駅では30人ほどが乗車しました。引き続きブレーキが利くか心配になるような坂を下ります。鈴蘭台駅からは線路が並走していますが、これは鈴蘭台車両基地への引き込み線です。このような立地に基地を作るのは大変だっただろうと思うような地形です。

 真新しいトンネルを抜けると、2018(平成30)年に廃止された菊水山駅が見えてきました。周囲には人家もほぼなく、廃駅とはいえどホーム上の椅子が撤去されたくらいで、設備はそのまま残っていました。テレビドラマの撮影にも使われたとか。

 特快速は鵯越(ひよどりごえ)駅を通過しました。トンネルが続きますが、トンネル内も露骨に傾斜していました。丸山駅を通過すると、また50パーミルが連続。最後の通過駅である長田駅を過ぎると地下トンネルに入り、湊川駅。神戸市営地下鉄西神・山手線との接続駅でもあり、かなりの下車がありました。終点の新開地駅は7時41分着でした。

 新開地駅構内は神戸高速線とつながっており、ほとんどの乗客は特快速を顧みることなく、足速に乗り換えていきました。

※末尾の乗換駅名を修正しました(6月13日17時10分)。

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