“絶滅”間近の国鉄型 201系電車は何がすごかったのか 登場45年、関西で最後のとき
乗りものニュース / 2024年6月17日 7時12分
1979年に試作車が登場し、計1018両が製造された通勤形電車201系は、国鉄として初めて「省エネ電車」をうたった車両です。2024年中の引退もささやかれるベテラン電車のこれまでと現在を紹介します。
省エネに寄与した201系
登場から45年。そろそろ引退もささやかれる国鉄型201系電車は、JR西日本にわずかに残るのみです。そのようなベテラン電車の経歴と、かつては1000両あまりが在籍した同車両がなぜJR西日本で残っているのか、振り返ってみます。
201系は省エネを前面に押し出した車両で、運行初日の出発式は「新型省エネルギー電車(201系)運転記念」として「省エネ201」のヘッドマークが付けられたほどでした。
では、どう省エネなのか――それは制御装置に、チョッパ制御を採用したことでした。これは半導体を用いたものですが、列車の消費電力を力行(加速)時と制動(ブレーキ)時で相殺する回生ブレーキを実現でき、消費電力を減らせます。
回生ブレーキとは、車輪の軸回転を発電機と考え、その運動エネルギーで発電して・消費して作動させる電気ブレーキのこと。チョッパ制御と組み合わせると、高速域から低速域まで安定して動作し、特に頻繁に制動する通勤形電車では、回生ブレーキの省電力効果が期待できると考えられたのです。
加えて発電ブレーキ用の抵抗器も不要となるため、車両を軽量化できるメリットもありました。さらに1973(昭和48)年のオイルショックは、省エネ車両開発の追い風となりました。こうして実現したのが201系で、デビューは1979(昭和54)年のことです。
国鉄の負担になるほど高価だった
201系は省エネだけでなく、現代の車両に通じる新機軸をいくつも備えていました。台車には301系電車以来の空気ばね台車を採用し、乗り心地を改善。座席も1人当たりの幅を明確に示したデザインで、側扉と座席を仕切る袖仕切り形状は、肘掛けとしてよくできていました。
側窓は下段上昇・上段下降式のユニット窓ですが、上段窓にバランサーが付けられていました。それまでの103系電車は窓が重く開けにくかったのですが、大きく改善されたことは驚きでした。当時は通勤形電車で側窓を開ける風習があり、窓を開けて走ることは珍しくなかったのです。
好評をもって迎えられた201系は、1981(昭和56)年より量産車が登場し数を増やしました。試作車の車体構造や材質を再検討した結果、1両2.1~2.8tの軽量化が実現したほか、ブレーキの回生率の向上も図られ、より省エネな電車となりました。201系の走行システムは地下鉄向きでもあり、1982(昭和57)年より車体をアルミニウム製にした地下鉄乗り入れ用203系電車も製造されました。
しかし増備を続けるうちにコストの高さが問題とされました。高価なチョッパ制御機器を搭載した201系は、電動車同士の比較で103系の9859万円に対し、1億4085万円(1982年当時)でした。危機的な経営状態にあった国鉄にとって、201系の製造は負担だったのです。
この結果、1984(昭和59)年の増備車からコストダウンが図られます。側窓がバランサーのない2段上昇式となったり、車両番号表記をステンレス切り抜き文字から転写式にしたりなど、仕様の変更が行われました。しかし、1両1億3697万円とほぼ価格は下がりませんでした。このため、1985(昭和60)年で201系の増備は打ち切られます。
JR西日本の関西本線に残る
6年のあいだに、201系は中央線快速、中央・総武緩行線、青梅・五日市線などのほか、京阪神緩行線へ導入されました。その後、103系の置き換え用として武蔵野線や京葉線、大阪環状線、和田岬線、桜島線、関西本線などへも導入されました。
なお、JR東日本は青梅・五日市線用として2001(平成13)年、201系4両を展望電車「四季彩」に改造するなどの動きもありましたが、2009(平成21)年に引退したほか、他路線の201系も2011(平成23)年までに引退しました。
一方、JR西日本は2003(平成15)年より、103系の体質改善車に準じた体質改善工事(30N)を開始します。これにより、戸袋窓の埋め込みを含む腐食しやすい部分の構造・材質変更や、外板塗料の変更、座席モケット・化粧板の変更、つり革の増設、床面の主電動機点検蓋廃止などの近代化改装が行われました。
京阪神緩行線の201系は後継の321系電車に追われ、2024年現在は大和路線(関西本線)が最後の活躍の場となっています。しかし同線の新今宮駅にホームドアが設置されることもあり、201系は3扉転換式クロスシート車である221系電車に置き換えられ、2024年度中に引退する予定です。
通勤形ゆえに派手な活躍場面は少なかったものの、登場時の印象としては、中央線の特別快速に投入され京王電鉄の特急に対抗した201系は、「変革する国鉄の象徴」のように感じられた存在でした。
ちなみに福岡市営地下鉄1000系電車は、当初のチョッパ制御こそ変更されていますが、セミステンレス車体ながら201系と走行システムをほぼ同じくする「いとこ」のような存在です。ただしこちらも、2024年より新型車両4000系電車への置き換えが始まる予定です。
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