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「戦闘機よりいいもの提供するから戦闘機はお預け」スウェーデンの真意は? ウクライナめぐる“空の争奪戦”勃発か

乗りものニュース / 2024年6月13日 6時12分

サーブの戦闘機「グリペン」。ウクライナが供与を希望していたhが、計画の一旦停止が発表された(画像:サーブ)。

スウェーデンがウクライナへ、戦闘機の何十機ぶんもする高価な早期警戒管制機の供与を決断。しかし、当の戦闘機の供与はお預けとなりました。その真意はどこにあるのでしょうか。実は他国も同じことを考えているかもしれません。

「早期警戒管制機」供与する! スウェーデン決断 でも戦闘機は?

 スウェーデン政府は2024年5月29日、ウクライナに対して総額133億スウェーデンクローナ(約1960億円)にものぼる軍事支援を新たに行うことを発表。その中に、現在スウェーデン空軍が運用しているS-100D「アーガス」2機が含まれていることを明らかにしました。

 S-100Dはサーブが生産していたターボプロップ旅客機「340」に、現在はサーブの一事業部門となっているエリクソン・マイクロウェーブが開発した「エリアイ」レーダーを組み合わせたAEW&C(早期警戒管制機)です。

 スウェーデン政府はS-100Dの引き渡し時期を明言していませんが、同国政府は2022年にS-100Dの後継機としてサーブに、カナダのボンバルディアが開発したビジネスジェット「グローバル6000」に、エリアイレーダーに能力強化型「エリアイ-ER」を組み合わせた新たなAEW&C「グローバルアイ」を2機発注(その後1機を追加発注)しています。スウェーデン政府はサーブに対してグローバルアイの納入前倒しを求める方針を明らかにしていることから、S-100Dの引き渡しはそう遠くない時期に行われるものと思われます。

 これまでウクライナはNATO(北大西洋上条約機構)軍のAWACS(早期警戒管制機)であるE-3「セントリー」の支援を受けて、ロシアの航空機やミサイルなどの経空脅威に対処してきましたが、S-100Dの供与により自前のAEW&Cを持つことで、ウクライナの経空脅威への早期警戒・対処能力は大幅に向上するものと考えられます。

 しかしその一方でスウェーデン政府は、JAS39「グリペン」戦闘機を軍事支援パッケージに含めず、供与計画をいったん停止することも明らかにしています。

数が集まる「F-16」 それで十分なのか?

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2023年8月19日にスウェーデンを訪問し、同国のウルフ・クリステション首相と首脳会談を実施。会談終了後にウクライナ軍人がグリペンの運用評価を開始していたことを明らかにしました。ゼレンスキー大統領はこの会談でクリステルソン首相にグリペンの供与も求めていたようです。

 クリステション首相は「将来のことは何も排除しない」と述べ、ウクライナへのグリペンの供与に含みを持たせていますが、スウェーデン政府はウクライナ軍人が運用評価を行っていることは認めたものの、グリペンの供与については否定していました。しかしこの話はその後もくすぶり続けており、一部の海外メディアはまもなくウクライナにグリペンが供与されるのではないかとの見方を示していました。

 しかし今回、スウェーデン政府が供与計画の一旦停止を明言したことで、ウクライナへ早期にグリペンが供与される可能性は消滅したと言えます。

 5月30日付のニューズウィークは、スウェーデンがグリペンの供与計画を一旦停止したのは、F-16戦闘機の供与を円滑に進めるためであるという、スウェーデン政府関係者の話を紹介しています。

 NATO加盟国であるオランダとデンマーク、ノルウェーは2023年に、F-35戦闘機の導入によって余剰となったF-16のウクライナへの供与を決定。2024年の夏にはウクライナ空軍で運用が開始されると見られています。

 同じNATO加盟国であるベルギーも、やはりF-35の導入により余剰となったF-16をウクライナへ供与を決定しており、4か国によるF-16の供与機数は合計85機となります。

もう一つの「空の戦い」 スウェーデンもフランスも狙っている?

 ウクライナ空軍司令部のセルヒー・ホルブツォウ航空部長は2022年に、戦線の一区域でウクライナ側が航空優勢を確保するには、F-16戦闘機の作戦飛行隊が4個必要だとの認識を示しています。

 85機という機数は4個飛行隊を十分充足できますが、4か国から供与されたF-16はいずれも1980年代前半に製造された機体のため、それほど長期間運用できるとは考えられないですし、実戦環境で運用されるため、戦闘や事故による損耗も視野に入れなければなりません。

 老朽化した機体や戦闘により損耗した機体は、程度の良い中古機のF-16か、新造機のF-16で更新するのが合理的なのですが、新造機の製造能力を持ち、また程度の良い中古の供給能力も備えるのがアメリカです。しかしアメリカは、ロシアとのエスカレーションを避けるため、ウクライナからの再三再四の求めにもかかわらずF-16の直接供与を拒否しており、ウクライナがこれ以上F-16を入手するのは困難と言えます。

 ロシアとの戦いがいつまで続くのかはわかりませんが、長い目で見ればウクライナがF-16を後継する戦闘機を必要とすることは明白で、スウェーデンはグリぺンの早期供与ではなく、「ポストF-16」の座に狙いを替えたのかもしれません。

 なお。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は6月7日、ウクライナに対してダッソー「ミラージュ2000」戦闘機を供与する方針を明らかにしています。

 ミラージュ2000の供与には、ウクライナへ「ポストF-16」としてラファール、さらにはドイツ、スペインと共同開発計画を進めている新戦闘機「FCAS」を売り込みたいというフランスの思惑が垣間見えます。ここから、もう一つの空の戦い、すなわちポストF-16の座をめぐる戦いは、もう始まっているとの見方ができます。

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