「あれ、爆弾…?」戦闘機につり下がる“それっぽい物体”の正体 実は空戦を変えた重要アイテム!? 注目した日本人とは
乗りものニュース / 2024年6月17日 18時12分
戦闘機は必ずといっていいほど“なにか”を吊り下げています。なかには、両端が尖った円筒形の爆弾らしき物体を見かけますが、実は爆弾でもミサイルでもありません。
吊り下げられた丸っこい物体の正体とは
現在の戦闘機はステルス機でもない限り、たいてい“なにか”を吊り下げて飛び立ちます。細長いミサイル類を吊り下げることもありますが、両端が尖った円筒形の爆弾らしき物体が見られる場合も。それはおそらく、爆弾ではないでしょう。
翼や胴体に付けられた円筒形の物体は「落下式増槽(ドロップタンク)」といいます。つまり、戦闘時は切り離すことができる、外付けの使い捨て燃料タンクです。
落下式増槽の装備としての歴史はかなり古く、ジェット戦闘機の登場以前にさかのぼります。アメリカ空軍によると、初めての本格的な落下式増槽は、1923年3月5日にアメリカオハイオ州デイトンでテストされたそうで、ボーイング製の戦闘機であるMB-3の航続距離を増やすために行われました。
この実験で、航空機に外付けの燃料タンクを搭載し、燃料を使い切った後は投棄することも可能という結論がでますが、それほど注目されてはいませんでした。当時、戦闘機同士の空戦は比較的近い距離で起きるだろうと考えられていたからです。その際に重い燃料タンクを背負っていると不利になるので、むしろない方がいいだろうという考えでした。
ゼロ戦生みの親が注目
しかし、この装備に注目した人物がいました。日本の航空技術者だった堀越二郎です。
彼は、広大な中国の戦場で戦闘機を広範囲に展開できるようにと、1937年に九六式艦上戦闘機の胴体へ吊り下げるタイプの落下式増槽を装備させました。その後の零式艦上戦闘機、いわゆるゼロ戦にも採用され、アメリカとの戦争序盤にはこの落下式増槽が、日本の快進撃の原動力にもなります。
1941年12月8日の開戦当時、日本海軍の主力機だった零戦二一型は、新開発した落下増槽などを組み合わせると、なんと約3000kmの飛行が可能だったそう。当時の常識では考えられないほど長距離での陸上攻撃機(爆撃機)護衛につくことができ、緒戦のフィリピンのクラーク、イバ両飛行場への爆撃のほか、通常ならば困難な長距離爆撃任務の数々を戦闘機の護衛をつけることで成功させました。
ただ、戦争中に米英側でもその有効性が周知されることになり、戦争末期には逆に落下式増槽を付けたアメリカ軍の護衛戦闘機に、本土爆撃で大きな損害を与えられることになります。
ちなみに落下式の使い捨てとはいえ、アルミニウム合金という資源としては貴重な金属が使用されており、節約のため、日本では竹やベニヤ板製のもの、イギリスでは強化紙ベースの増槽なども開発されました。
ボディと一体型のタンクも登場していく
戦後のジェット機時代になると、空戦の範囲が広がったことに加え、燃料消費が激しくなったこともあり、増槽は重要な装備として大型、大容量化していくことになります。なお、日本を例にすると、大戦時の零戦二一型の増槽の容量は約330リットル、これが2024年現在、航空自衛隊が運用しているF-15の増槽になると約2300リットルにまで増えます。
ジェット機時代の増槽は、翼の下や胴体に多数取り付けられた、ミサイルや爆弾を吊り下げる「ハードポイント」に搭載されるようになります。プロペラ機よりもはるかに高速の出るジェット機の飛行を、大型化した増槽が阻害しないように、空力などもプロペラ機のとき以上に考えられるようになり、両端が尖った円筒形状あるいは紡錘形とし、さらに小さな翼までつけられたため、一見すると爆弾やミサイルのように見える形状になりました。
ただ、ジェット戦闘機の登場後、空戦の手段は機銃より空対空ミサイルの方が重要になりました。すると、本来ミサイルを搭載できるハードポイントを燃料タンクが占有することになり、それはそれで不便でした。
その問題を解決するため、落下式の増槽にかわり「コンフォーマル・フューエル・タンク」という機体胴体部に沿って取り付け可能な増槽も登場しています。また、そもそも空中で給油してしまえば問題ないと、空中給油機も発展していくことになります。
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