旅客機の「ギンギラギン」デザインなぜ消滅? 「あえて塗装しない」でメリット多数なのに…現代ではもうムリ?
乗りものニュース / 2024年6月29日 14時12分
現代の民間機のデザインは、胴体の全体に塗装が施されていることが一般的ですが、かつては金属の地肌をあえてむき出しにして、胴体全体がギラギラと光っていたものもありました。このデザインはなぜ見かけなくなったのでしょうか。
復活の「JAL貨物機」でも白地
現代の民間機の機体デザインは、胴体のほとんど全体に塗装が施されていることが一般的です。その一方で、かつての民間機は、金属の地肌をむき出しにした状態で、胴体全体がギラギラと光る「ポリッシュドスキン」デザインのものもありました。どのような効果があり、なぜ見かけなくなったのでしょうか。
この「ポリッシュドスキン」デザインを採用した代表的な例としては、2010年まで運航されていたJAL(日本航空)の貨物専用機の一部や、2013年に現行塗装へ変更される以前のアメリカン航空機などが挙げられます。
通常、旅客機はもちろん、それほど美観を重視しない貨物機などでデザインが“ほぼない”機体ですら、白いベースカラーだけは機体に施されています。また、JALでは2024年より、貨物専用機の運航を14年ぶりに再開しましたが、こちらの機体も旅客型と同じく白ベースの機体です。
そうしたなかで、ごく一部の機体に見られた「ポリッシュドスキン」は、JALによると、胴体に使用されているアルミ合金を研磨剤で磨きあげ、表面に酸化皮膜を作り上げることで作られるそう。これにより、塗装したのと同様に機体の腐食を防ぐほか、光沢の維持を図っていたとしています。
そして、この「あえて塗装しない」デザインの採用で期待される効果は、機体の軽量化とされていました。
「あえて塗らないで磨く」塗装、なぜ廃れた?
JALによると、「ジャンボ機」ことボーイング747の場合、胴体表面に使用される塗料の重さは約150kgといいます。「ポリッシュドスキン」を採用することで、そのぶん機体が軽くなり、これにより1年間で1機あたり4万リットル、ドラム缶だと約200缶分に相当する燃料の節約ができるとされています。
では軽くなるにもかかわらず、どうして廃れたのでしょうか。
先述のアメリカン航空が、かつてこの「ポリッシュドスキン」を採用していたのも同様の理由です。ただし現地メディアによると、磨き上げるメンテナンスに手間を要することから、人件費が高くつくぶん、燃費が節約できても、トータルコスト的には塗装を行うのと変わらないものだったと報じられています。
また、胴体の素材のバリエーションが増えたことも、「ポリッシュドスキン」が廃れた一因といえるでしょう。たとえばボーイングが2011年に就航させた「787」や、エアバスが2015年に就航させた「A350」などでは、胴体に「CFRP(強化繊維炭素プラスチック)」が使用されています。これはアルミ合金より軽くて強い一方で、素材のカラーも銀ではありません。
長年「ポリッシュドスキン」を採用していたアメリカン航空は、2013年から順次、ベースカラーを「ポリッシュドスキン」ではなく、シルバーの塗料を胴体全体に塗る新塗装に変更しています。これは、ボーイング787の導入により、従来デザインの継続が難しくなったことがひとつの理由とされています。
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