ウクライナもらってくれ!? 南米の大国が供与表明の“虎の子”攻撃機 ホントに使えるの?
乗りものニュース / 2024年6月20日 6時12分
アルゼンチン政府が策定したウクライナ支援の目録に、40年以上前に実戦で名を馳せた傑作攻撃機が含まれていたそうです。アルゼンチンにとって譲渡するのはもったいないように思えますが、どうも自国にあっても意味がない模様です。
フォークランド戦争で真価発揮した傑作機
アルゼンチンがウクライナへ戦闘機を供与する意向だという信じられないようなニュースが2024年6月11日、報じられました。しかもその機種は、かつてフォークランド戦争(アルゼンチン側呼称、マルビナス戦争)でイギリス海軍を震撼させた伝説的な攻撃機、フランスのダッソー社製「シュペル・エタンダール」だというのです。
この情報は、アルゼンチンメディア「Infobae」が最初に報じました。報道によると、ハビエル・ミレイ大統領がウクライナ支援計画を承認し、そのなかに「シュペル・エタンダール」の供与が含まれていたのだとか。しかし、アルゼンチン政府はこの件について公式に言及しておらず、真偽は不明のままとなっています。
アルゼンチン海軍の「シュペル・エタンダール」は前述の通り、1982年のフォークランド戦争で歴史に残る大戦果をあげたことで知られます。当時アルゼンチン海軍が保有していた「シュペル・エタンダール」はわずか5機しかなかったにも関わらず、イギリス海軍の新型駆逐艦「シェフィールド」およびコンテナ船「アトランティックコンベイアー」を、新型(当時)の空対艦ミサイル「エグゾセ」で撃沈しています。
このときアルゼンチンは「エグゾセ」もわずか5発しか保有しておらず、もし同国海軍が十分な数の「シュペル・エタンダール」と「エグゾセ」を取得できていたならば、イギリス海軍はさらなる被害に悩まされることになっていたかもしれません。
ウクライナが「シュペル・エタンダール」欲しがるか?
2022年4月14日のロシア海軍黒海艦隊旗艦・巡洋艦「モスクワ」がウクライナ軍の地対艦ミサイル「ネプチューン」によって撃沈された一件からみるに、「シュペル・エタンダール」と「エグゾセ」の組み合わせは現在も有効な兵器だと言えるでしょう。
また対地攻撃に関しても、「シュペル・エタンダール」は赤外線前方監視装置を搭載し、レーザー誘導爆弾による夜間精密爆撃も可能であるため、近代的な攻撃機としての能力も備えています。さらに空対空ミサイル「マジック」を搭載できるため、正面切って戦闘機をやりあうことこそ不可能であるもののドローン迎撃ぐらいであれば十分すぎる能力をもっています。
このように見てみると、「シュペル・エタンダール」は極めて古い亜音速攻撃機ですが、使い方次第では戦力として有用なようです。しかし、ウクライナへ意義のある供与を行うためには、いくつか問題があります。
まず、2024年6月現在アルゼンチン海軍が保有する「シュペル・エタンダール」は2019年に調達したフランス海軍の中古機5機しかないという点です。
ウクライナ空軍には、すでにF-16と「ミラージュ2000」戦闘機を各国合わせて約120機供与することが決定しており、わずか数%の増強のために整備やトレーニングのための新たな体制を作り上げる負担を受け入れることは、コストパフォーマンスを鑑みると、あまり良いとはいえません。
また、保有する5機は飛行可能な状態にありません。これは機体の問題ではなく「シュペル・エタンダール」の射出座席がイギリス製であることに起因するものです。
どうせ使えないならウクライナに譲ったほうがマシ?
フォークランド戦争以降、イギリスは武器に関していまだアルゼンチンに対する禁輸措置を継続中で、脱出時にキャノピーを吹き飛ばす火薬カートリッジを入手できない状況が続いています。
この射出座席の問題が原因で、アルゼンチンはせっかく購入した機体を一度も飛行させられないでいます。
ただ、逆に言うと、アルゼンチンとしてはどうせ使えないならばウクライナに送っても差し支えない、という考えが働いたものと推察もできます。
とはいえ、実際の供与にあたっては、機体や搭載機器を開発したフランスとイギリスの協力が必要不可欠です。また、あまり効果的であるとは言えないため、実際に供与されるかどうかは、かなり「No」に近いグレーであると言ったところでしょうか。
アルゼンチンは2024年4月に、デンマークから中古の戦闘機F-16AM「ファイティング・ファルコン」を合計24機、トータル約3億2000万ドル(約460億円)で購入しています。デンマークは残る30機のF-16AMをウクライナへ供与しているため、両者は同じ戦闘機を使うことになると言えるでしょう。
ということは、アルゼンチンは自国向けの中古F-16を1機ウクライナへ譲るだけでも「シュペル・エタンダール」5機よりはるかに意義のある支援ができるのかもしれません。
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