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「線路残しておいてよかった」“途切れた臨港鉄道”奇跡の再活用なるか 「皆さん鉄道使えるなら使いたい」

乗りものニュース / 2024年6月20日 8時12分

20フィートコンテナを積んで旧藤寄駅を出発する貨物列車(深水千翔撮影)。

新潟東港の近傍に残る旧貨物駅で国土交通省が臨港鉄道を活用した輸送実証を行いました。睨むのは物流の2024年問題と排出ガス削減。ただ、それだけでなく大規模災害時の迂回ルートとしても検討しているそうです。

線路が途切れた国道部分をどうするか

 新潟県聖篭町にある「旧藤寄駅」(黒山駅分岐新潟東港専用線)で2024年6月14日、新潟東港発着のコンテナ船が運んできたコンテナを、トラックと貨車の間で積み替える作業が報道関係者に公開されました。

 これは、国土交通省の北陸地方整備局 新潟港湾・空港整備事務所が行う「臨港鉄道を利用した20フィート海上コンテナの輸送実証試験」の一環で、新潟市北区にあるJR白新線の黒山駅から新潟東港に向かって分岐する前出の専用線を活用し、新潟港東港地区国際海上コンテナターミナル(CT)までの輸送の一部をトラックから鉄道へと転換しようというものです。

 黒山駅分岐新潟東港専用線は、もともと新潟臨海鉄道が運営し、いったん廃線となったものの、県が一部を引き継いで運行している貨物専用線です。新潟港湾・空港整備事務所の古池清一所長は「廃線にしなかったことで首の皮一枚がつながった。将来的にはCTに線路をつなげていきたい」と話します。

 今回の実証実験は新潟港湾・空港整備事務所を主体に、新潟県、新電元工業、弘進ゴム、コメリ、北越コーポレーション、新潟国際貿易ターミナル、JR貨物が協力して実施されました。

 東京、仙台、倉賀野の各貨物ターミナルと新潟貨物ターミナルの間はJR貨物の定期ダイヤで運行し、新潟貨物ターミナルと旧藤寄駅の間は白新線経由の臨時ダイヤで運行しています。旧藤寄駅と新潟港東港CTの間は国道113号で線路が途切れているため、その区間はトラックによるドレージ(コンテナ陸送)を行う必要がありました。

 まず5月24日に最初の実証が行われており、このときは新電元工業が荷主の輸出向け巻線用部材を、横浜港の大黒埠頭から新潟港東港CTへ輸送する際に実施されています。ルートは、JR貨物の東京貨物ターミナル駅から新潟の旧藤寄駅に鉄道で輸送し、そこでトラックに積み替えて東港CT へとコンテナを運びました。

眠っていた鉄路を再活用

 2回目となる6月14日は、輸出入両方のコンテナ輸送で実証されています。北越コーポレーション新潟工場でコンテナにバンニングされた輸出向け巻取紙を、同社専用線からJR貨物の焼島駅、新潟貨物ターミナル、白新線黒山駅を経て旧藤寄駅まで鉄道で輸送。そこでコンテナを貨車からトレーラーへと積み替え、東港CTまで運びました。

 輸入貨物は弘進ゴムとコメリが荷主の日用雑貨です。東港CTから旧藤寄駅までトレーラーで輸送し、そこで貨車への積み替えを実施。新潟貨物ターミナルまで運んだ後、弘進ゴム向けの貨物は仙台貨物ターミナルへ、コメリ向けの貨物は倉賀野駅へとそれぞれ鉄道で輸送されています。

 新潟港湾・空港整備事務所の山川 匠副所長は「2024 年問題と呼ばれるトラックドライバーの時間外勤務に制限がかけられるなか、輸送に縛りが出てきている。また、カーボンニュートラルを目指すという観点からも鉄道輸送を利用しない手はない」と意義を強調します。

 そもそも新潟東港専用線は、1969(昭和44)年に新潟県などの出資で設立された第三セクターの新潟臨海鉄道(当時)が建設、運営してきた路線でした。かつては黒山駅と太郎代駅の間5.4kmを結び、新潟東港や周辺の工場から出荷された化学薬品や穀物、肥料などの輸送を担っていたのです。後に東港西ふ頭のコンテナターミナルが拡張したことに伴って、線路がコンテナヤードを貫通する唯一の鉄道となりました。

 しかし、トラックの比率が年々増える中で輸送量が減少していたうえ、福島潟放水路の開削によって西ふ頭駅~太郎代駅間が分断されることが決まったため、2002年9月末をもって営業を終了。鉄道施設は新潟県が引き継ぎ、黒山駅~西ふ頭駅間は廃止こそ免れたものの、旧藤寄駅から西ふ頭へ向かう線路は長いこと使われていません。加えて、国道113号線との交差部分は舗装されてしまっています。

 そのため、旧藤寄駅に関しては通常、鉄道車両メーカーの新潟トランシスから車両を出荷する際に、トラックから線路へ乗せ換える場所として使用されています。

大災害が起きた際の補完ルートにも

 新潟県では2024年現在、この新潟東港専用線を再び活用し、コンテナターミナルへ鉄道が直接乗り入れる「新潟東港オン・ドック・レール構想」を掲げています。

 同県は東港CTとJR貨物の鉄道ネットワークが結ばれることにより、コンテナ貨物の定時輸送が可能になるだけでなく、大規模災害時の補完ルートとして太平洋側港湾のリダンダンシー(冗長性、余剰などの意)機能強化にもつながるとしています。

 この構想を実現するため、旧藤寄駅から西ふ頭方面に伸びる線路を再整備し、東港CTでコンテナを貨車に載せられるようにすることを目指しているそうです。

 新潟港湾・空港整備事務所 企画調整課の内生蔵 一樹課長は「船で直接入ってきたコンテナを直接貨車に乗せて出せるため、そのぶん費用は(トラック輸送を挟むより)かなり安くなると思っている」と話します。

 今回の実証試験では輸送時間やリードタイム、輸送コスト、温室効果ガス(GHG)排出量、労働環境といった点で検証を実施しました。

 具体的には、
1、各貨物ターミナル駅での荷役時間や新潟貨物ターミナルと旧藤寄駅での機関車付替時間
2、輸送費用、輸送時間にかかる費用等の算出
3、輸送ルート、形態によるGHG排出量の机上計算、
4、従来ルート(陸上車両)と試験ルート(鉄道使用)におけるドライバー拘束時間の比較
などといったことを行っています。

 今回の実証を受け、前出の内生蔵課長は、「2024年問題は皆さん大きく捉えられており、そうした中で鉄道を使えるなら使いたいという思いはある。ただ、施設全体の老朽化が進んでいる所もあり、運営をどのようにしていくのか、荷物が集まるのかという課題があり、そうした点を解決していく必要がある。もちろん国道113号線との交差部分も大きな課題だ」とも述べていました。

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