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新型ジープ?「いいえトラックです」 屋根も窓ガラスもドアも無ぇ!? 使い方を教えてくれた怪しいマスク男

乗りものニュース / 2024年7月3日 8時42分

「ユーロサトリ2024」に展示されたスカニアの新型軍用トラック(布留川 司撮影)。

フランスで開催された武器見本市「ユーロサトリ2024」に運転席丸出しの不思議な“トラック”が展示されていました。軍用車のような出で立ちですが、有名メーカーが出展したあくまで“トラック”だそう。一体どういう車両なのでしょうか。

乗員防護とは真逆の最新トラック

 今年(2024年)6月にフランスのパリで開催された防衛見本市「ユーロサトリ2024」にて、スウェーデンのトラックメーカーであるスカニア社が、オープントップ(露天)タイプの風変わりな新型“トラック”を展示して話題になりました。

 車両は前後2軸4輪のトラックで、タイヤは大口径のオフロードタイヤを装着、車体と地面のクリアランスは大きくとられ、最低地上高を高くすることで悪路走破性行を向上させた形状になっています。一方で、運転席と荷台は、ルーフからフロントガラスやドアまで一切なく、100年前のトラックかというほど、ボンネットから上が見事にない状態です。

 これは軍用のトラックです。日本国内で見かける一般的なスカニアのトラックは、エアロパーツを装着してスタイリッシュなものが多いのに対して、この新しい軍用トラックはそれとは真逆のデザインとなっています。

 屋根のない軍用トラックというと、民間はもちろんのこと現代の軍隊でもなかなか見かけることはありません。たとえば自衛隊や在日米軍などのトラックも、なかには屋根を外せるようになっているものもあるものの、ほとんどの車体は屋根ありか、もしくは幌を付けたままのものばかりです。これは、雨風が防げないと快適性が悪くなるほか、乗員防護の観点から、そもそもキャビンや場合によっては荷台も装甲板で覆うなどしている車両が多いからだと言えるでしょう。

 では、2024年の現在に、そんな絶滅危惧種ともいえるオープントップのトラックを新規に開発した理由は何でしょうか?

窓ガラスもドアもなくしたワケは

 このトラックを開発したのは、スカニアのフランス法人で軍用や消防向けにカスタムした車両を販売しているSPAD(スカニア・パブリック・アンド・ディフェンス)社 です。

 同社によると、フランス軍の要望で開発され、現在は若干数が軍に納入されて運用試験を受けている最中だといいます。まさに、できたてホヤホヤの新モデルのためか、正式な車名すらもないそうです。

 珍しいオープントップのデザインになった理由については「軍用輸送機C-130『ハーキュリーズ』で空輸するため」と答えてくれました。

 通常のスカニアのトラックはキャブが大きいために車高が高く、C-130サイズの戦術輸送機(貨物室の高さは約2.7m)では積み込むことができません。そこで、スカニアはキャブを撤去して、運転席をエンジンの後方に移設し、いわゆるボンネット式トラックと同じ構造にすることで車高をできる限り低くして、機内搭載できるようにしています。

 また、このトラックは見た目こそ軍用のオリジナル車両のように見えますが、じつは、シャシーやドライブトレインなど、実に7割近くが市販の民間モデルと共用化されているのだそう。そういった点もこの軍用トラックの大きな特徴のひとつだと話してくれました。

 ただ、具体的にどこの部隊で採用され、どのような任務で使われるかについては「軍側からその情報を開示することを許可されていない」と最後まで教えてくれませんでした。

 しかし、会場の他のブースを見学していたところ、当のフランス陸軍の隊員がその答えをあっさりと教えてくれました。

アフリカで戦う特殊部隊が愛用か?

「ユーロサトリ2024」には、防衛企業だけでなく、フランス陸軍も大規模なブースを構えており、現用兵器を並べて現役の隊員がその性能や任務について説明していました。

 そのブースの一角には、先ほど見かけたスカニアの新型トラックとよく似たオープントップの車両が展示されているではありませんか。ハナシを聞こうと近づくと、車両の傍らに立つ隊員はなぜか目から下を覆うフェイスマスクをしています。しかも、よく見ると姓名階級を示す名札どころか、所属部隊を示すワッペンも付けていません。

 ただ、話しかけてみると案外フレンドリー。その隊員は、あっさりと自身が特殊部隊の一員であることを認め、脇にあったオープントップの車両についても詳しく解説してくれました。

 隊員によれば、これらオープントップ式の車両はアフリカ地域で使われており、そこで行われるミッションの多くは対テロ作戦などといった正規軍以外が相手の活動が多いため、このような軽量で空輸も可能で機動力のある車両が適しているとのことでした。

 アフリカ地域には、かつてフランスの植民地であった国が多く、それらは現在でもフランスと人的・経済的な交流やあるほか、フランス企業がその利権に深く関与していることも多々あります。そのため、フランスは西アフリカのセネガルとコートジボワール、そして東アフリカのジブチに計4か所の軍事基地を持っており、自軍を常駐させています。

 これら拠点を使った活動をフランス軍はOPEX(対外作戦)と呼んでおり、この地域でのテロや武装勢力との小競り合いに対しては、たびたび武力介入まで行っているほどです。

 先に紹介したスカニアの新型軍用トラックはまだ配備される段階にはないものの、その用途は恐らくはこのようなアフリカ地域での軍事作戦だと思われます。

 見慣れないトラックを通じてフランスの外交・安全保障政策が見えてきたのは意外でしたが、わざわざ新規に新しい装備品を開発しているというのは、それだけフランスと軍がアフリカ地域に対する関与について真剣に取り組んでいることの表われだともいえるでしょう。

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