「アゴがシャクレてる!」ステルス試作機 X-32復元終わって一般公開へ F-35より優秀でも不採用ナゼ?
乗りものニュース / 2024年7月12日 18時12分
国立アメリカ空軍博物館は2024年7月4日、試作機のX-32の館内展示を開始したと公式YouTubeチャンネルで発表しました。同機はアメリカでは「最も醜い戦闘機」のひとつとして定期的にネタにされています。
「最も醜い戦闘機」キレイな姿で完全復帰!
国立アメリカ空軍博物館は2024年7月4日、試作ステルス戦闘機X-32の館内展示を開始したと公式YouTubeチャンネルで発表しました。
同機は、2024年現在、アメリカ空軍ほか世界各国で使用されているステルス戦闘機F-35 「ライトニングII」と正式採用をかけて争ったボーイング製のライバル機になります。
同機が生まれる端緒となったのは、統合打撃戦闘機計画(JSF計画)と呼ばれる新型機の開発プロジェクトです。これはアメリカ、イギリス、カナダなど計9か国の戦闘機および戦闘攻撃機、対地攻撃機、空母艦載機などを全て1機種で置き換えようというもので、大掛かりな計画ゆえに、もし採用されればかなりの機数の製造が見込める航空機メーカーにとっては負けられないトライアルだったのでした。
1990年代に始まったこの計画では、ロッキード・マーチンがX-35(後のF-35)を、ボーイングが前出のX-32を提案しましたが、実はステルス性能は同機の方が優秀であったと言われています。しかし、水平尾翼を持たない無尾翼デルタ機という野心的な設計が災いします。
テスト時の評価はイマイチだった…。
両機の実験を行った際、STOVL (垂直離着陸)モードのテスト時にX-35が、途中で手を加えず超音速飛行の後ですぐさま垂直離発着の検証に移れたのに対し、X-32は一部部品を変更する必要がありました。ボーイングは、量産型ではこの変更は必要ないと約束したものの、印象は良くありませんでした。
さらに、垂直離着陸の方法が、ハリアーに似た直接排気方式だったことも不評だったそうです。ほかにも、実証機の製造から8か月後に、海軍から操縦性の改善が要求され、新たにX-32Bという水平尾翼があるタイプも提案されるなど、X-35に比べ量産までに解決すべき課題が多くあったのも問題視されたのかもしれません。
こうした要因もあり、2001年10月26日にJSF計画の採用機体はX-35に決定したようです。それから20年以上、F-35として制式化された同機は、アメリカ空海軍および海兵隊のほか、日本の航空自衛隊を含む多数の国で導入が進むベストセラー機にまで昇華しています。
一方、X-32は採用競争に敗れた後、2005年になって国立アメリカ空軍博物館に収蔵されることになりましたが、長らく屋外に放置されていたことで機体はけっこう傷んでいました。そこで、2022年末から、館内展示に先立ち機体全体の点検と大規模な修理を行うことが決定、2023年末に全てのチェックを完了していました。
ちなみに同機は、エアインテーク周りが特徴的な出っ張りになっているため、その見た目からアメリカでは「最も醜い戦闘機」のひとつとして定期的にネタにされるほど。また、日本でもその外観から「シャクレ」「アゴ」などと呼ばれています。
空軍博物館の発表では、すでに研究開発ギャラリーコーナーで展示済みとのことで、近くには「ストリーク・イーグル(全裸のイーグル)」と呼ばれた、高度記録の更新のためにチタン合金むき出しのナチュラルメタル仕上げになった試作機のF-15もあるといいます。今回の動画公開に際して、博物館は投稿者コメントで「最近公開された追加作品に興奮しています」と明言しています。
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