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危険性わかっているのに! 悩ましい「第4種踏切」問題 “コスパ良い改善プラン”もあった?

乗りものニュース / 2024年7月11日 14時42分

珍しい非電化複線区間にある第4種踏切(咲村珠樹撮影)。

たびたび問題になる第4種踏切の危険性。その多くは中小私鉄に設置されており、利用者も少ない一方で、改修費用が多くかかることから、なかなか改善されません。そうしたなか低コストで危険性を低減する取り組みもあります。

遮断機も警報機もないのが第4種踏切

 2024年4月6日に群馬県の上信電鉄で発生した事故をきっかけに、遮断機も警報機もない「第4種踏切」の危険性がまたクローズアップされました。国は1961年の「踏切道改良促進法」施行以来、より安全な踏切にすべく施策を続けていますが、いまだ第4種踏切の解消にはいたっていません。背景には費用面の問題など、個々の事情が関係しているようです。

 そもそも「第4種踏切」とは踏切の種別のひとつで、現在は第4種のほか、遮断機と警報機のある「第1種」、警報機のみがあって遮断機のない「第3種」が存在します(第2種は全廃)。

 国土交通省が発表した2022(令和4)年度の「鉄軌道輸送の安全に関わる情報」によると、踏切の安全性を高め、交通の円滑化を図る「踏切道改良促進法」が施行される前の1960年度には、全国で7万1070か所あった踏切のうち、そのほとんどを第4種が占めており、踏切事故も全体で5482件発生していました。

 しかし、同法の施行後は徐々に踏切の転換(より安全な第1種化)や解消が進み、2022年度には全国で3万2442か所ある踏切のうち、第4種踏切は2408か所まで減り(全体の7%)、踏切事故も全体で195件と激減しています。

 なお、その195件のうち第4種踏切で発生したのは16件(8.2%)でした。全体の割合としては少なく映るものの、発生率で見ると約0.66%となるため、しゃ断機と警報機を備えた第1種の約0.59%を上回っています。これらを鑑みると、やはり第4種踏切は安全面で問題があるといえるでしょう。

ひとつの第4種踏切を転換するには2千万円以上!

 2022年度末における第4種踏切2408か所の内訳をみると、JR(在来線)が1195か所、路面電車を除く民鉄(私鉄)が1176か所とほぼ半々(その他路面電車が37か所)です。民鉄における内訳では、大手が2か所、中小(「準大手」とされる新京成電鉄、山陽電気鉄道を含む)が1174か所となっており、4月に事故が発生した上信電鉄をはじめとする中小の事業者に集中していることがわかります。

 国も手をこまねいているわけではなく、踏切道改良促進法に基づき、現在まで11次にわたって策定された「交通安全基本計画」の中で、第3種並びに第4種踏切の統廃合や改良(第1種への転換)を促進しています。その結果として第3種・第4種踏切は順調に数を減らしてきたといえますが、残ったものについては、それなりに理由のあるケースも少なくありません。

 例として挙げられるのが、路面電車が普通の鉄道に転換した際、私有地と表通りを結ぶためにできてしまった踏切です。路面電車の時代であれば、電車の走っているところは「道路」であり、それに面した家は自由に出入りが可能だったのですが、普通の鉄道に転換されたことによって家の玄関先を線路が通ることになり、通りと分断されてしまったため、いわゆる「マイ踏切」を設けざるをえなくなったというものです。

 こういった踏切は、その土地へ出入りする人しか利用しないため、利用頻度の少ないものとして統廃合の対象になりえるものの、廃止されてしまうと出入りが不可能になってしまいます。また、第1種踏切に転換するとしても、改良主体となる鉄道事業者や道路管理者(自治体など)が、踏切のある個々の私有地に対し、整備費用と設備の更新に莫大な金額をかけるというのも現実的ではないでしょう。

 なお、第4種踏切を第1種踏切に変えようとすると、1か所あたり2000万~3000万円ほどかかるうえ、一定年数ごとに機器の更新が必要になります。

遮断機はないけど「派手に警告」する装置も

 抜本的な対策としては立体交差化が挙げられますが、こちらは第1種踏切に転換する以上の事業費が発生してしまいます。財政基盤の弱い地方の自治体やローカル私鉄では、ほぼ不可能といわざるをえません。

 では、方策はないのかというと、この問題を、他のやり方で対処している鉄道事業者も存在します。たとえば福島市を走る福島交通飯坂線(飯坂電車)では、25か所ある第4種踏切の一部に踏切警報機と同じ原理(軌道回路)で作動する回転灯を設置し、列車の接近を知らせて注意を促す仕組みにしているほか、カーブミラーを設置して列車の接近を確認できるようになっている場所もあります。

 福島交通でも第4種踏切を廃止すべく、統廃合もしくは第1種化を考えていますが、先に述べたような私有地と線路を挟んだ表通りとを結ぶ「マイ踏切」の即時解消は費用面で困難なため、回転灯で列車の接近を知らせる方式を採用し、ひとまずの安全確保を図ったものと思われます。予算が限られる中では、現実的な対応といえるでしょう。

 筆者(咲村珠樹:ライター・カメラマン)も第4種踏切の廃止に賛成の立場ですが、住民にとってなくてはならない踏切も少なくないため、踏切道改良促進法に基づいて鉄道事業者と住民、自治体が「地方踏切道改良協議会」で協議を重ね、長期的な視点で進めていくしかないと考えています。

 その間の安全確保としては、福島交通飯坂線で見られるような、簡易的な警報装置による注意喚起策が有効ではないでしょうか。

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