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飛行機の「反り返った主翼先端」もう一つのメリットとは 「燃費削減だろ?」→いえ、違います!

乗りものニュース / 2024年7月20日 7時42分

ウイングレットを備えたJALのボーイング767(乗りものニュース編集部撮影)。

飛行機の翼端には「ウイングレット」と呼ばれる垂直に立ったパーツが取り付けられていることがあります。一般的に燃費向上が目的といわれますが、実はそれ以外の効果も期待できるのだそうです。

ライト兄弟時代から「悪」とされた「翼端渦」

 航空機の主翼の両端には、「ウイングレット」と呼ばれる翼端が縦方向に反り上がった小さな板が取り付けられていることがあります。広く知られているこの機構の狙いは「燃費削減」。しかし、実はもう一つ、大きなメリットが含まれることはあまり知られていません。どのようなものなのでしょうか。

 まず、そもそも「ウイングレットが燃費削減につながる」仕組みから見ていきます。

 航空機は飛行中に主翼の先端から「翼端渦」という空気の流れを発生させます。これは翼が揚力を発生させるときに翼の上面と下面で圧力差が生じるため、気流が下面から上面に流れ始めることで発生します。

 この翼端渦は、誘導抗力と呼ばれる飛行中の航空機に作用する抵抗の原因の一つであり、効率の良いフライトを阻害することは古くから知られていました。初めて動力飛行を成功させたライト兄弟もこの現象を知っていたほどです。

 ライト兄弟が作った世界最初の飛行機、「フライヤー号」の主翼後縁にカーブが付けられているのは翼端渦の減少を狙った設計でした。第二次世界大戦中、驚異的な航続力を誇ったゼロ戦の翼端が丸みを帯びているのも、翼渦を減少させて抵抗を減らすことを狙ったものです。

 ときは下り1970年代、NASA(アメリカ航空宇宙局)のラングレー研究所において風洞実験とコンピューターを用いた分析が行われますが、これによりウイングレットを装備し翼端の気流を変えることで、翼端渦を小さくして誘導抗力も減少するのが確認されています。

 これは、燃料消費量を減少させ航空機の航続距離を延ばす効果も期待できることから、NASAでは米空軍と共同で実機を用いた飛行実験を行うことになりました。

「ウイングレット」装備で考えられるもう一つの効果

 この実験のために米空軍はKC-135空中給油機を一機提供。KC-135はおよそ800機が生産された軍用輸送機で、ボーイング707旅客機の姉妹機でもあります。飛行実験は、「ウイングレット」が取り付けられたKC-135を用いて48回行われ、飛行中の抵抗が減少することで、6.5%の燃料消費削減効果があることが確認されました。

 そうしたテストののち、1990年頃よりウイングレットを装備した航空機が登場しはじめます。NASAはこの機構の効果について、現在までに約1万機のジェット機がウイングレットを取り付けたことで、のべ400億リットルのジェット燃料が節約され、単純計算では1.3億トンの二酸化炭素削減に相当するものと発表しています。

 このように、燃料消費削減効果を狙って導入されてきたウイングレットですが、近年もう一つの効果が指摘されています。

 それは、翼端渦の減少により「航跡乱流」を軽減させる効果です。航跡乱流は、前進する航空機が背後に残す乱気流です。この乱気流は機体の大きさに比例して発生し、その後ろを飛ぶ飛行機にとっては危険な存在にもなり、過去にはこれを要因とする航空事故が実際に発生しています。そのため、大型機の後方を他の旅客機が飛ぶ場合、先行機の大きさに比例して一定の間隔をおいて飛行するという決まりがあるほどです。

 つまり、ウイングレットによって航跡乱流が減れば、その分安全を十分確保可能になることから、航空機同士の最低間隔を狭められる可能性があるといえます。最初は燃料節約を狙って普及したウイングレットでしたが、これからは過密化する航路上で他機の安全性を確保する目的で、ウイングレット装備が推奨される時代が来るのでは、と筆者は想像しています。

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