新たな「日の丸飛行艇」は無人機に? 世界最大航空ショーで“2機種”登場へ US-2はどうなったの?
乗りものニュース / 2024年7月20日 6時12分
2024年7月22日から26日まで、ロンドンの郊外で「ファンボロー・エアショー」が開催されます。日本勢の参加企業は少ないですが、その中で、脚光を浴びるかもしれないのが2種の無人飛行艇です。
世界的なエアショーでの日本勢の様子は?
2024年7月22日から26日までの5日間、イギリスの首都、ロンドン郊外のファンボロー飛行場で「ファンボロー・エアショー」が開催されます。同イベントは隔年で開催されるパリ・エアショーと共に、世界の二大エアショーと位置づけられています。
2019年に開催されたパリ・エアショーでは、航空自衛隊のC-2輸送機と海上自衛隊のP-1哨戒機、ホンダ・エアクラフトのビジネスジェット機ホンダジェット、そして当時三菱航空機が開発を進めていた単通路旅客機のスペースジェットが揃い踏みをして、日本のプレゼンスを多いに高めました。
しかしそれから5年の歳月が過ぎて、スペースジェットは開発を中止。P-1、C-2も派遣されず、ファンボロー・エアショーの公式サイトを見る限り、ホンダジェットの参加もないようです。
さらに、日本はイギリス、イタリアと新戦闘機開発プログラム「GCAP」を進めており、GCAPで開発される有人戦闘機の機体開発を主導するイギリスのBAEシステムズは、有人戦闘機のフルスケールモデルをファンボローに展示すると発表していますが、こちらも詳細設計はまだ完了していないため、展示されるのは、あくまでも現時点でのイメージモデルとなる見込みです。
このように日本視点で見た場合、やや寂しい感のある今年のファンボロー・エアショーですが、将来を睨んだとき、実は大きな可能性を秘めた出品があります。2種類の無人飛行艇がそれです。
日本における航空・宇宙産業のとりまとめ役であり、今回のエアショーで日本企業の展示を主導する日本航空宇宙工業会(SJAC)は2024年6月20日に事前説明会を開催しました。その席で明らかにされたのが2機の無人飛行艇です。
1機は、SJAC会員企業であり海上自衛隊が運用するUS-2飛行艇のメーカーでもある新明和工業の「XU-M」、もう1機は、非会員企業ながら今年のファンボロー・エアショーに特別参加するスペースエンターテイメントの「HANADORI」(ハマドリ)です。
否が応でも期待 新明和の無人飛行艇
「XU-M」は全長 3m×全幅 4m×全高 0.9mの電動固定翼機で、主翼下に配されたフロートや、一見すると船舶にしか見えない胴体など、どことなくUS-2を彷彿とさせられる航空機です。
一方の「HAMADORI」は全長1.96mm、全幅3.1mとやや小ぶりな電動固定翼機です。現在就役しているHAMADORI3000はXU-Mに比べれば小柄ですが、スペースエンターテイメントは2025年度の初飛行をめざして、より大型の「HAMADORI6000」の開発を進めています。
XU-Mは飛行中に海面の状況を観測するセンシング機能およびコントロールに関わる研究の推進、遠隔運用実績や海洋に関わる各種データの蓄積を目的とする試験機、対してHAMADORIシリーズは実用化を前提とした無人航空機という違いこそありますが、前者は内閣府、後者はNTTドコモの5G実証実験や、海上自衛隊の船舶間の貨物輸送実験などに使用されており、実用機としての前途も有望なのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
前にも述べたようにXU-Mのメーカーである新明和工業は、有人飛行艇US-2の製造を手がけています。
US-2のような大型で高性能な飛行艇は世界的に見ても例が少なく、インドなどと輸出に関する話し合いが進められましたが、今のところ結果は出ていません。
苦戦も未だ注目集める日本製大型飛行艇
US-2の輸出が進まないのは、その価格の高さや、欧米企業に比べると弱い官民一体のサポート体制、インドが求める大幅な技術移転に日本が応じきれないことなど複合的なものですが、高性能であるが故に複雑であることが、価格競争や技術移転などを難しくしています。
インドは一向に交渉に進まないUS-2の導入に興味を失っていると見られており、インドのオンライン新聞「The Print」は2019年12月にインド海軍高官の話として「US-2売買契約の締結可能性は限りなく低い」と報じています。
輸出など目指す、US-2の後継機として有人飛行艇を作ればいいのでは声も聞こえてきそうですが、終わりの見えない円安と部材高に加えて、部品を供給するサプライヤーの相次ぐ撤退、さらには少子化により乗員の確保も困難になることなどから、US-2の後継機として新有人飛行艇が開発・製造される可能性はますます低くなっています。
とは言え、新明和工業、さらに言えば日本の持つ飛行艇技術にはアメリカも高い関心を示しています。また、国土の四方を海で囲まれた日本にしかない飛行艇運用ノウハウや、日本ならではの運用アイデアなどを、このまま失ってしまうのは得策とは言えません。
無人飛行艇の開発はまだ緒に付いたばかりですし、どのような形で実用化できるのかも未知数ですが、日本の持つ技術やノウハウ、アイデアなどを活用していくための、一つの方法なのではないかと思います。
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