ブルーインパルス飛行中に報道ヘリ接近… 対策はないの? パイロット必見の注意報とは
乗りものニュース / 2024年7月25日 9時42分
2024年6月に川崎市で空自のブルーインパルスが飛んだ際、制限空域に他機が進入したとして展示が中断されました。このとき出ていたのがNOTAMというもの。一体どんなものなのでしょうか。花火やドローン飛行にも大きく関係しているそうです。
パイロット必見の注意報
出かける際、事前に道路や鉄道といった交通情報を参照する人は多いのではないでしょうか。空の世界でも、同じように「NOTAM(ノータム)」と呼ばれる、パイロットなど航空関係者向けの情報が提供されています。
NOTAMとは「NOtice To AirMen」もしくは「NOtice To Air Mission」の略で、各国の航空を統括する機関が提供しているプロ向けの注意情報です。パイロットや運航管理者は、飛行する経路や目的地の飛行場について、どのようなNOTAMが出ているかを確認して出発することになっています。
インターネット上では、国土交通省航空局で航空情報を提供する「航空情報センター」が運営するサイトで、国内各地に出されているNOTAMを検索・参照することができます。利用するには最初にユーザー登録が必要ですが、そういった手続きを踏めば航空関係者以外でも閲覧可能です。
NOTAMの内容は様々ですが、多いのは飛行場での工事や点検により、設備や施設が使用できなくなっている、というもの。空港内の誘導路や駐機場のスポットが使えなくなっていたり、滑走路の使用に制限が出ていたりという情報は、道路交通情報における通行止めや料金所の閉鎖に似ています。
花火大会のシーズンは要注意
高層ビルや鉄塔、煙突といった、ある一定の高さ以上の建造物には、航空機の衝突を避けるため「航空障害灯」と呼ばれる灯火の設置が義務付けられていますが、これが工事などの事情により点灯できない場合にもNOTAMが出されます。建築工事で設置されるタワークレーンのように、新たに航空機運用における障害が増える場合も同様で、正確な位置(座標)が提供されて注意を促す仕組みです。
一方、最近になって増えているのが、無人航空機(ドローン)の飛行にともなうNOTAMです。無人航空機はパイロットが搭乗していないため、周囲の状況を十分に把握することができません。そこで有人の航空機側が気をつけて、無人機の運用空域を避ける配慮をしています。将来的には無人機も有人機と同じ航空管制に組み込まれていく必要がありますから、過渡期である現在ならではかもしれません。
変わったところでは、花火大会でもNOTAMが出されるケースがあります。一般的な花火大会で最大の、「尺玉」と呼ばれる10号玉の場合、平均して高度330m付近まで上昇して半径約160mに開きます。ちなみに、一部の花火大会で打ち上げられる「三尺玉」と呼ばれる30号玉では、高度600m程度まで上がって半径約275mに開くため、離着陸の経路に当たる場所では航空機の運航に支障が出てしまうのです。
そこで、該当する花火大会の主催者は、日程が決まると国土交通省航空局に届け出てNOTAMを出してもらい、周辺を飛行する航空機に注意を呼びかけています。もし打ち上げた花火が飛行中の航空機に当たってしまうと危険ですから、安全のために重要な取り組みといえるでしょう。
「飛行禁止」ではありません
通常とは異なる航空機の飛行についてもNOTAMが出されます。たとえば航空祭(エアショー)や、市街地における航空自衛隊「ブルーインパルス」の祝賀飛行などが代表的な例で、飛行が実施される空域(飛行経路や高度帯など)を指定して、通常とは異なる形で航空機が飛行することを告知します。
ただし、NOTAMは「飛行において注意が必要な情報の提供」に過ぎず、飛行禁止空域の設定など強制力をともなうものではありません。記憶に新しいところでは、2024年6月29日に神奈川県川崎市の等々力緑地で開催された同市制100周年祝賀イベント「かわさき飛躍祭」にて「ブルーインパルス」が飛行した際、取材のヘリコプターがNOTAMで指定された制限空域に接近し過ぎてしまい、安全確認のため「ブルーインパルス」の展示が一時中断されました。
ただ、だからといって飛ぶことを禁止しているわけではない点に留意が必要です。NOTAMは先に述べたように「飛行禁止空域」ではないため、万一その中に入ったとしても罰せられることはないのです。
とはいえ、航空関係者にとって、NOTAMは飛行する際に把握しなければならない重要な情報であることは間違いありません。その点では、空の安全を守るため、大きな役割を果たしているといえるでしょう。
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