「新基準原付?税金は『自動二輪』ですよ」 ユーザーが望まない“原付消滅” 税負担だけアップ!? 分厚い“縦割りの壁”
乗りものニュース / 2024年8月13日 9時42分
排気量50ccエンジンを搭載する原付バイクの生産中止がニュースになり、全国400万台の届出原付の未来が危ぶまれています。「新基準原付」はその打開策となるはずですが、門前に税金問題が浮上しています。
運転ルールは「原付」と同じ でも税金は「自動二輪」に?
排出ガス規制などの強化によって、排気量50ccの「原付」エンジンバイクが生産中止を迎えることは、すでによく知られています。最近よく目にする「新基準原付」は、50ccバイクがショップから消える、という“異常事態”で、国民の安価な移動手段を失わないための対策。経済産業省、警察庁、国土交通省と二輪車業界が官民共同で練り上げたバイクの新しい規格でした。
ところが、約2年をかけて車両基準の合意に達したこの段階になって、課税当局が「新基準原付」は「原付」ではない、税制改正プロセスに乗せるべきだ、と主張していることがわかりました。
根拠は地方税制に定められた税区分にあります。排気量50cc以下の「原付」は税法上、50cc以下または定格出力0.6kw以下の車両で、税負担は軽自動車税2000円です。
一方、「新基準原付」は最高出力4kw以下で排気量125cc以下のエンジンを搭載するバイクを、従来の排気量50ccバイクと同じとみなし、原付免許で運転できるように定めた制度です。しかし税法上の「種別」に「新基準原付」はありません。仮に、これから登場する新基準原付対応のバイクが排気量125ccであれば、軽自動車税は2400円です。
「新基準原付」は50cc以上といえど、道路交通法上は二段階右折、最高速度30km/hで、得られる便益は「原付」ですが、税負担だけが「自動二輪」並みに――この税法と実態の矛盾を解決するためには、税制を改正する必要がある、というのが非公式な協議での課税当局の見解です。
そのため、新基準原付の規格作りでとりまとめを担った経済産業省は、8月末にも税制改正要望を総務省に提出。自民党・公明党の与党税制調査会が審議します。その結果は12月末の与党税制改正大綱で公表されます。
ここで、新基準原付の課税は「原付」とすべきという方向が打ち出され、さらに「税制改正の大綱」が閣議に提出された後に、2025年の通常国会で税制改正が審議されます。
税制改正のプロセスは公開されませんので、ユーザーが、この矛盾についてチェックできるのは、2024年8月末の税制改正要望の内容と、与党税制調査会が公表する12月末の税制大綱だけです。
基準作りに“高みの見物”か 総務省
新基準原付の規格を作る議論に、なぜ総務省は参加しなかったのでしょうか。今も国民の安価な移動手段を守るという目的に対して、距離を置き続けます。総務省の担当者はこう話します。
「新基準原付がどういうものか。正式な文書は出ていない。総務省としてこうすべき(※税制改正要望をするべき)と思っている方向性はない。税制改正のプロセスにのせるか、のせないかは経産省のお考えがある」
新基準原付はバイクユーザーが求めたわけではありません。きっかけは環境省による排出ガス規制の強化でした。バイクの電動化で対応は可能ですが、市場での受け入れは進んでおらず、新基準原付は安価な移動手段の代替として必要だったのです。
省庁一体で移動手段の確保に乗り出すことは、なぜできなかったのでしょうか。税制改正は1年に一度だけというタイミングを総務省は強調しますが、その裏には、「新原付は原付ではない」という否定的な見解が透けて見えます。
法改正には長い時間がかかります。車両基準を作る上でも法改正の必要性を問う議論がありましたが、道路交通法改正には至りませんでした。仮に税法上125ccを50ccとみなすことに法改正が必要であれば、総務省も省庁間の議論に入って、早くから新基準原付成立のための助言をすべきではなかったのでしょうか。
この問題に限らず、バイクは道路運送車両法、道路交通法、地方税法、駐車場法など法律によって車両解釈が違います。地方自治体が行う駐車場問題でも、駐車できる車両を排気量で区分しています。税のみならず、駐車場問題でも新基準原付をめぐる“歪み”が生じることが予想されます。
なぜバイクユーザーは縦割りの行政判断を通過するたびに、不要なコスト負担を求められているのでしょうか。新基準原付は、その構図から抜け出すことのできない典型例といえます。
※文中で「原付」と「自動二輪」という呼称をしていますが、地方税法には「自動二輪」という種別はありません。記事ではわかりやすさと、新基準原付が主に道路交通法に依拠する問題なので、この呼称を使いました。
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