「原付」絶滅に“待った”をかけるか 「ホンダのバイクを“ヤマハ”で出す」提携の意味 縮小する市場に一石
乗りものニュース / 2024年8月9日 8時12分
50ccの「原付」バイクが縮小するなかで、ホンダとヤマハが新たに提携。ホンダの電動バイクもヤマハブランドで販売することになりました。これにより縮小する原付の選択肢が拡大するかもしれません。
ガソリン車に続き電動バイクもOEM
2024年8月8日、ヤマハ発動機とホンダは原付1種バイクの日本市場向けモデルで協業を発表しました。ホンダが市販する電動バイク「EM 1e:(イーエムワン イー)」、「BENLY e: I(ベンリィ イー ワン)」をベースとしたモデルを、ヤマハにOEM供給します。
ライバル同士である両者のOEM提携は、同じ原付1種のガソリン車でも実績があります。排気量50ccに相当する原付1種市場は、2025年11月の排出ガス規制強化でこのままでは大幅に縮小する見込みで、それを埋める電動モデルの投入が加速することとなります。
2023年8月に発売された「EM1 e:」は、ホンダ初のパーソナルユースの販売先を限定しない電動原付バイクです。また、「BENLY e:I」は、2020年4月にビジネスバイクシリーズの先行モデルとして投入されました。モデル名のIは、新聞配達などを想定した特別仕様「PRO」と区別するために付けられた名前です。いずれも、交換式バッテリーの「MPP(モバイルパワーパックe:)」を使って、パワフルな走りを実現しています。
ヤマハは原付1種市場で電動モデル「E-Vino(イービーノ)」を2015年から発売していますが、交換式バッテリーを搭載した電動バイクは市販がありませんでした。ヤマハLM(ランドモビリティ)戦略統括部事業企画部・吉田誠部長は今回のOEM供給について次のように話しました。
「合意に至った背景は、自社の開発期間をかなり短縮して、いかに早く電動モデルを投入できるかに主眼を置いた」
国内の原付1種市場は、2025年11月に排出ガス規制の強化が実施され、50ccエンジンバイクの新車販売が事実上できなくなります。その代替として、“新基準原付”規格に合致する125ccエンジンのバイクを原付1種とする一方で、本来の環境対応である電動化が急がれています。
ただ、性能と価格がバランスするエンジン車(ICE)と比較すると、ユーザーが求める電動車(BEV)が選択しにくい現状があります。
OEM供給に合意した2つのモデルに搭載する交換式バッテリーは、そもそも2021年3月に2社を含む国内4社で合意した「電動バイク用交換式バッテリーの規格」に沿って作られています。この規格で製造されたバイク用の交換式バッテリーは、今のところホンダ製しかありません。
いよいよ普及するか「交換式バッテリーバイク」
ホンダ二輪・パワープロダクツ電動事業統括部の武藤裕輔チーフエンジニア(二輪電動事業課)は、OEM供給について次のように話しています。
「共通仕様のバッテリーを使っていただけることがいちばんのメリットだと思っていて、(
(ライダーにとっても)街中のバッテリー交換にも活用いただけることがメリットだと考えている」
予定する2モデルの累計台数は、「EM1 e:」で国内1400台、海外2600台、「BENLY e:I」で郵便バイクを中心に約1万台の実績があります。さらにヤマハが共通バッテリーを採用することで、バッテリー単体の価格や、バイク以外での利用、リサイクル循環に前向きな影響を与える可能性があります。
今後、ヤマハは供給を受けたモデルについて、どのように販売していくのでしょうか。前述・吉田部長はこう話します。
「すでに(ホンダの)『タクト』と『ジョグ』を見ていただければわかりますが、弊社のデザイン、ブランドを体現するモデルとすべく、若干の変更を加えている。おそらく次の電動車についても弊社のブランドを体現するような形なっていく」
ホンダとヤマハは、2016年に原付一種スクーターに限定する形で、OEM供給に関する業務提携をスタートさせました。その後、2018年に50ccエンジンを搭載するホンダ製「タクト」「ジョルノ」がヤマハの「ジョグ」「ビーノ」として供給されました。今回の電動車の供給も、この提携の一環です。
吉田部長はこうも話します。
「最初のモデルも出していない段階で、マイルストーン的にいつというのは申し上げにくいが、今までラインナップにないモデルを出すことで市場が活性化されると、我々が見えてない潜在的ニーズがつかめることを期待している。それによって新しいニーズにあったモデルが必要になったと判断した時が、次ステージに上がるときだと思う」
魅力ある新型車が登場することで市場は活性化していきます。原付は排出ガス規制の強化で生産打ち切りのニュースばかりが増えていますが、逆にこの規制強化を好機と捉えて、続々とニューモデルが投入される可能性も見えてきました。
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