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バブル期の超豪華客車「夢空間」を“清瀬市”へ 「完全修復します」「活用します」保存とどう両立? 担当者に聞いた

乗りものニュース / 2024年8月17日 15時12分

個室寝台車「デラックススリーパー」、ラウンジカー「クリスタルラウンジ スプレモ」、展望食堂車「ダイニングカー」の3両から成る「夢空間」(2008年3月、安藤昌季撮影)。

寝台特急「夢空間北斗星」などで活躍した超豪華客車「夢空間」。現在のクルーズトレインにも劣らない豪華仕様でしたが、この「夢空間」を、東京都清瀬市が譲受し“復活”させるそうです。その理由を聞きました。

バブル期の超豪華車両「夢空間」

 1989(平成元)年に、24系寝台車の最後の新製車両として製造された「夢空間」。前年に日本国内を走行した、欧州の豪華寝台列車「オリエント急行」の影響を受けて、「近未来の寝台列車」として製造された超豪華車両です。

「夢空間」は、1車両の定員が6名で個室内に風呂を備えた個室寝台車「デラックススリーパー」、自動演奏ピアノやバーカウンター、美しい飾り窓を備えたラウンジカー「クリスタルラウンジ スプレモ」、超大窓から流れ行く景色を眺められ、個室席も備えた展望食堂車「ダイニングカー」の3両から構成されます。「ななつ星 in 九州」など現代の超豪華クルーズトレインと比べても、勝るとも劣らない内装を備えていました。

 そんな「夢空間」は2008(平成20)年の引退後、2か所に分かれて保存されます。

「デラックススリーパー」は、フレンチレストラン「アタゴール」(東京都江東区)にて、車両内で食事できるスペースとして現在も活用されています。

 残るラウンジカーとダイニングカーは、商業施設「ららぽーと新三郷」(埼玉県三郷市)にて保存されましたが、ラウンジカーがフリースペースとして使用されただけで、食堂車はほとんど公開されることもなく、荒廃が進んでいました。

 そうした中、東京都清瀬市が2024年夏、ラウンジカーと食堂車を「ららぽーと新三郷」から清瀬市中央公園に移設すると発表。オリジナル復旧するとし、クラウドファンディングも行われています。

 なぜ「夢空間」を保存しようとしているのか、市に聞きました。

「オリジナルの姿に戻す」とは

 回答してくれたのは、清瀬市経営政策部の木原雄嗣参事です。

──「夢空間」をどのような経緯で保存することになったのですか?

(木原参事)本市では、令和8(2026)年2月を目途に児童館等複合施設を、同年10月には中央公園をフルオープンする予定です。この複合施設と公園は、多世代交流の拠点にしたいと考えていることから、公園内に新たなにぎわいを創出するためにも、市内外から多くの方に訪れていただけるための良い仕掛けがないか、市民ワークショップで出た意見や話し合いを通じ、保存鉄道車両が最適であるとの結論に達しました。

 しかし、車両の確保は簡単ではなく難航していた折、三井不動産様へ「ららぽーと新三郷」にある車両について問い合わせたことをきっかけに、鉄道車両を公園内に設置することで、先述の趣旨にご賛同いただく形で「夢空間」の譲渡が実現する運びとなりました。

──保存するのは、ラウンジカーと食堂車で、寝台車の譲渡は考えなかったのですか。

(木原参事)考えておりません。

 清瀬市のクラウドファンディングの告知では、「貴重な車両の完全修復」「オリジナルの姿に復活させたのちに2両を連結し、屋根をかけた状態で保存する」とされています。また「内装リニューアル」「空調・電装系の修理」「失われたパーツの制作」とも。市は「夢空間」活用にあたり、民間企業から意見などを聞くサウンディング型市場調査を実施するとしていますが、この「オリジナルに戻す」がどの程度の修復を考えているかによって、今後の活用方法は変わると思われます。

風雨対策はどうするのか

――「ドア開閉や車内アナウンスができる」とも書かれていますが、ほかにはどういった部分を修復されるのですか?

(木原参事)「オリジナルの姿に戻す」とは、現役時の状態にできる限り戻すという意味です。客車を動かすわけではないので「動態保存」とは呼べませんが、客車として「生きている」動態状態によみがえらせる予定です。

 ご存じのとおり「夢空間」は、それぞれの客車が日本に1両ずつしか存在しません。現時点で他車から転用できる設備も少なく、オリジナルである内装やパーツについては、改めて制作する必要があります。また、敷地内に電源設備(三相交流440V)を設置し、ジャンパ連結器を使用して車両へ電力を供給し、冷房のAU77を再稼働させることで、客車固有の空調を活かしたいと考えております。

 ダイニングカーの厨房施設と水回り、ラウンジカーの水回り、洗面所、トイレ、自動演奏ピアノを復活させるほか、ダイニングカーの設置型エアコンを撤去のうえ、客車本来の空調を稼働させ、調度品の新調と修理を行います。ラウンジカーについては、絨毯やソファ、カウンターチェアのモケット新調などを行う予定です。

――市の告知には「車両の文化財としての価値を適切に維持し後世に引き継ぐ」「定期的に専門業者によるメンテナンスや清掃が必要」とあります。屋根を付けて保存客車を保護するとのことですが、野外では風雨による劣化は発生することでしょう。また、民間事業として活用した場合、事業での使用による劣化、その修復も必要になると考えられます。この場合「専門業者による修復」の、継続的な費用負担はどうお考えですか?

(木原参事)さまざまな団体や個人が鉄道車両を保存されている現状を調査しましたが、屋根の有無で劣化状態が全く異なりました。ご指摘のとおり、車両に屋根をかけただけでは、紫外線や酸性雨の影響を完全に防ぐことができないことも承知しております。

 このことから、本市では車両保存の新たな試みとして、車両塗装を新たにやり直すとともに防汚コーティングすることを検討しています。あわせて、車両の設置後には劣化を最小限に抑えるため、車両イベントとして、市民、ボランティア、保存会のみなさまとともに、定期的な清掃や水洗いイベントなども企画したいと思います。

食堂車としての機能を活かす

 木原参事は、「年月を経ることで老朽化していくことは避けられませんが、昨今の文化財保存の考え方として、文化財そのものが、修復および保存のための費用を生み出していくことで、持続可能な保存が可能になると考えます」と話します。一例として、車両を使った撮影やイベント開催などによる収益、保存のためのクラウドファンディングや寄付などを通じて、修復費用を賄っていきたいとしました。

 ただ、そうした保存の在り方と“事業への活用”は、相反する側面もあります。車両の価値を考えるなら、例えば「高額な飲食物を提供するレストラン」として「夢空間」を活用することなどが考えられます。しかし、それでは子どもたちが簡単に入れる設備ではなくなるとも思えます。

 逆に現状の「ららぽーと新三郷」のように、子どもたちが簡単に入れる施設とするなら、車内での飲食、遊び場となることなどでの車内破損も考えられます。

――「児童館などの子どものために活用したい」「鉄道文化財としての超豪華客車」とありますが、市はこの両立をどう考えているのでしょうか?

(木原参事)「保存・活用計画」を策定し、それに沿った活用を行いたいと考えております。「夢空間」を鉄道文化財としてしっかりと保存していくためには、車両そのもので修復・保存のための費用を賄っていくことが求められます。このことから、現在「夢空間」の運営についてサウンディング型市場調査を行っているところです。

 しかしながら「夢空間」の本来の姿である「飲食ができる車両」であることは最大限に活かさなければならないとも考えております。「夢空間」の価値を理解していただいたうえで、現役当時に提供されていたメニューも食べられるレストランやラウンジとして営業できること、特定の日に子どもや市民に向けたイベントを行うことなど、さまざまな活用方法を検討していきたいと考えております。

「放置は絶対にありません」

 もうひとつ気になるのが、現在告知しているクラウドファンディングが成功しなかった場合です。

――クラウドファンディング第1弾の「清瀬市中央公園への移設」は、「目標金額に届かなくても必ず実行する」とされていますが、第2弾・第3弾のクラウドファンディングが行われ、もし不成立になった場合は「夢空間」客車はどうなってしまうのでしょうか?

(木原参事)今回のクラウドファンディングは、オールイン(編注:集まった分だけ支援金を受け取れる方式)で実施しますので必ず成立します。みなさまからご支援いただいた資金は、おひとりおひとりの声援と賛同の声だと考えております。この声を無下にして、車両を修復しないで放置することは絶対にありません。

 クラウドファンディングで「夢空間」の譲受を決めるきっかけとなった検討委員会からの提言に、次の一節があります。

「オリジナル部分を残して修復し、メンテナンスを行いながら保存していくことで清瀬市の名が高まることになるが、一方、譲り受けた後に、財政上の理由などで解体・廃棄するようなことがあれば、世間から非難されることにも留意する必要がある」

 本市は、車両を譲り受けることを決めた際に、この提言内容を当然理解しております。「夢空間」は清瀬に移設されますが、本市だけの力で次の世代につないでいけるものではありません。日本鉄道史の1ページを飾るこの貴重な車両を愛するみなさま、関係者のみなさまのお力添えが絶対に必要です。ご支援・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

──ありがとうございました。

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