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法律違反じゃないの?「地面スレスレを飛ぶ自衛隊ヘリ」実は問題ない場合も

乗りものニュース / 2024年8月19日 9時42分

通常時であれば制限がある最低地上高度。広域を見るにはちょうど良い高さでもある(武若雅哉撮影)。

市街地上空でも頻繁に見るヘリコプターの低空飛行ですが、航空法で厳格に「最低安全高度」というものが定められています。ただ、その規定が免除になることも。それが人命救助などだとか。自衛隊のヘリコプターを例に説明します。

パイロットが遵守すべき「最低安全高度」って?

 いつ発生するかわからない大災害。そういった際に頼りになるのが、自衛隊の航空部隊です。

 陸海空自衛隊は、それぞれが航空部隊を持っています。彼らは普段、航空法の規定内で航空機を飛ばしており、特に同法第81条に規定されている「最低安全高度」は厳守しています。

 たとえば人口密集地であれば、自機を中心に水平距離600mの範囲内にある最も高い障害物の上端から300m以上の高度での飛行が原則であり、これは全てのパイロットが厳守しなければならない数値です。

 具体的には、自機から500m離れた位置に地上100mのビルがあれば、最低地上高度は400mとなります。

 この300mから400mの高さを普段の生活に当てはめると、超高層ビルの最上階付近から地上を見るイメージだといえるでしょう。展望台などは揺れませんが、飛んでいるヘリコプターの機内は常に上下左右に振動しています。そのため、大規模災害時などで、その状態で上空から地上にいる人員を探すことは極めて困難といえるでしょう。

 そこで、救助活動が迅速に行えるように、航空法81条の2では「捜索または救助のための特例」として「国土交通省令で定める航空機が、航空機の事故、海難その他の事故に際し、捜索または救助のために行う航行については適用しない」としており、なおかつ81条の但し書きで「国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りではない」と明記しています。

 つまり、警察や消防、そして自衛隊のヘリコプターは、人命救助のためであれば、最低安全高度の適用が除外されるということです。これにより、被災者を探し出すためなら、地上スレスレを飛行し、最低安全高度以下でも空中停止するなどして救助することが可能です。

 この適用除外のタイミングとして最もわかりやすいのが、都道府県知事などによる「災害派遣要請」の有無になります。
 
 災害派遣要請があったということは、被災自治体がSOSを発信しているということになります。つまり、非常事態なワケです。

 この明確でわかりやすい判断基準は、全ての自衛隊パイロットや整備員、管制官などが頭の中に叩き込んでいる観点だといえるでしょう。

空中統制用のヘリが出動する場合も

 いざ派遣要請があれば、これまで格納庫などで待機していた自衛隊のヘリコプターは被災地に向けて飛び立ち、誰ひとりも残さぬように、低空で飛行し被災者を探し助け出そうと活動します。
 
 とはいえ、災害時といえども無秩序に飛行できるワケではありません。無秩序に飛び回ってしまっては危険性が急激に高まってしまうことから、空中(空域)統制という役割を持った航空機(ヘリコプター)が、被災地周辺空域で活動する他のヘリコプターの動きをコントロールするように規定されています。

 さらには、〇〇県は航空自衛隊、△△県は陸上自衛隊というように、飛行できる空域もコントロールされるため、活動範囲は拠点となる基地や駐屯地の周辺となることが多いです。

 ただ、一方で2024年1月1日に発生した能登半島地震に際して、国土交通省は救助に係る全ての航空機の運航に対して、航空法第79条(空港等以外への離着陸許可)、第81条(最低安全高度以下への飛行許可)、第89条(物件の投下の届出)については、申請者からの電話連絡による手続きを認めるといった通知も出しています。

 従来は書類による手続きが必要でしたが、これにより電話一本でより柔軟な運用ができるようにしたのです。

 また、自衛隊機は最初から適用除外ですが、航空機による「爆発物の輸送に係る手続き」、「耐空証明の有効期間満了」、「航空身体検査証明の満了」、「特定操縦技能審査(操縦技能証明)」も、能登半島地震の災害救助に係る航空機やパイロットは、適用除外になっています。

 日本は災害大国です。地震に限らず台風や豪雨、山林火災なども毎年のように起きています。また過去には火山噴火に伴う災害出動などもありました。そういったときに、いち早く駆け付け人命救助を行うために、実は人知れず柔軟な運用が行われているのです。

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