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ロシア「異形の戦車」から機関砲が消えた? ガン・ミサイル両方載せから“一本化” ドローン対策に選んだのは

乗りものニュース / 2024年8月25日 11時42分

シリアのフメイミム飛行場で防空配置に就いているロシア軍の「パンツィリS1」(画像:Mil.ru, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)。

ソ連はミサイルと機関砲を両方採用した異形ともいえる対空システムを開発し、ロシアも「パンツィリS1」として改良型を登場させてきました。しかしドローンが脅威となる現代、パンツィリから対空機関砲が無くなったようです。

「パンツィリ-SMD-E」から対空機関砲が消えた

 ロシアが軍事ビジネス機会の創出と国威発揚のため、毎年開催している軍事フォーラム「Army」。2024年のArmyは昨年までとは違い原則非公開で行われました。プレスも限定され、開催期間も8月12~14日と昨年より短縮されています。ウクライナとの戦争が影響していることは間違いないでしょう。
 
 こうした軍事フォーラムで現在、主力展示のひとつとなっているのが、ドローン対策関連です。「Army-2024」には近距離防空システム「パンツィリS1」の最新バージョン「パンツィリ-SMD-E」が出展されました。ここで注目されたのが、パンツィリの対空機関砲が無くなり、代わりに小型のミサイルランチャーが追加されていたことです。

 対空システムにおいて、機関砲とミサイルは補完関係にあり「ガン・ミサイルコンプレクス」ともいわれていますが、旧ソ連は両方をひとまとめにして1台のプラットフォームに搭載したシステムを登場させます。

 1989(平成元)年に存在が確認された2K22 ツングースカは、1台の装軌車体に対空ミサイル57E6を8発と4連装の30mm機関砲を載せるという「ガン・ミサイル両方載せ」の対空戦車でした。日本の87式自走高射機関砲やドイツのゲパルト対空戦車が35mm機関砲2門だけであったことと比較しても、異形ともいえる重武装ぶりがわかります。

 冷戦時代のソ連製兵器には謎が多く、この異形の対空戦車も限られた容量の車内に、ただでさえ複雑な対空戦闘の制御管制システムを詰め込んでいます。ましてやミサイルと機関砲の2種類です。構造的に無茶であり、見掛け倒しではないかとさえいわれました。

 しかし、ロシア/ソ連以外にも中東などで導入国があり実戦でも使用されています。さらに2012(平成24)年になると、改良廉価版である装輪式の「パンツィリS1」が登場して、「ガン・ミサイル両方載せ」も異形扱いされないようになってきました。

ドローンならミサイルで落とせる

 ロシア・ウクライナ戦争ではドローンの急速な発展により、安価なドローンを迎撃するのに高価な対空ミサイルではコスパが悪く、機関砲の有用性が再認識されるようになっています。ウクライナ軍では、ドイツ製ゲパルト対空戦車が成果をあげており、「パンツィリS1」もドローン狩りに威力を発揮するはずでした。

 ところが「Army-2024」に展示された最新バージョン「パンツィリ-SMD-E」からは、機関砲が無くなっていたのです。

 メーカーであるロステック社の関係者は、ウクライナ戦線で「パンツィリS1」の機関砲が思うような戦果をあげておらず廃止したと認めています。

 小型ドローンに対し、ロシアの対空機関砲があまり役に立っていない原因のひとつが砲弾かもしれません。場所を移したシリアでも、「ガン・ミサイル両方載せ」の戦果を検討すると、その7割以上がミサイルによる戦果だと判明しています。

 ゲパルトも、装備している35mm機関砲にはAHEAD弾という高性能弾があります。AHEAD弾は、発砲時に初速測定と同時に電磁コイルを経由して最適な起爆時間を信管調定できるため、空中での起爆位置を高精度にコントロール可能です。内部に収められた多数の重金属ペレットを高密度で目標前方に投射でき、小型ドローンも確実に仕留められます。太平洋戦争で旧日本軍が苦しめられた、アメリカ軍のVT信管が進化したイメージです。

 ただしゲパルトは1980年代に登場した旧式兵器なので、そのままではAHEAD弾は使用できません。ウクライナ向けに改造されているという情報も確認されていません。

機関砲の代わりに装備されたのは?

 ゲパルトの後継としてドイツのラインメタル・エア・ディフェンスAGが開発している「スカレンジャー30」は、30mmAHEAD弾を使うことを前提に作られ、小型ドローン迎撃に有効であることが認められており、ドイツ軍が導入を決めています。一方ロシアはこの種の砲弾開発に投資してきませんでした。

「パンツィリ-SMD-E」で機関砲の代わりに装備された小型ミサイルはTKB-1055と呼ばれています。公表されている能力は射程距離500~7000m、射高は15~5000mとされ、既存の57E6対空ミサイルが射程距離1200~20000m、射高15~15000mですので、一応近距離と中距離をカバーできます。装備はモジュラー化されており、57E6を外せばTKB-1055を最大48発搭載できるそうです。ロステックは、TKB-1055は効果的で安価だと紹介しています。

 また、レーダーも改良されて小型ドローンを5~7kmの範囲で検出でき、122mmロケット弾などの大きなターゲットなら最大10kmの範囲で検出できます。さらに、レーダー断面積(RCS)が1.0平方メートル2のターゲットを最大45kmの範囲で検出する能力があるとされます。

 AHEAD弾と小型ミサイルTKB-1055のコスパ比較は分かりませんが、ロシアのメーカーはAHEAD弾のような砲弾を開発するのではなく、「ガン・ミサイル両方載せ」を止めて小型ミサイルを提案しているのです。ドローン対策にどんな方法が有効なのか、試行錯誤は続きます。

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