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ステルス戦闘機F-35の“怪物エンジン” なぜ更新が急務? 次世代モデルへ避けて通れない壁とは

乗りものニュース / 2024年8月26日 6時12分

F-35A「ライトニングII」戦闘機(画像:イギリス国防省)。

航空自衛隊も導入を進める第5世代ステルス戦闘機F-35「ライトニングII」のエンジンがすでに能力不足に陥っているとか。性能向上を図るためには新エンジンへの換装が必須のようですが、どのような特徴を持っているのでしょうか。

1基でF-15用エンジン2基分のパワー持つ“怪物”

 F-35「ライトニングII」戦闘機に搭載されているエンジンはプラット・アンド・ホイットニー(P&W)社製のF135アフターバーナー付きターボファンです。

 F135は戦闘機用としては世界最強ともいえる圧倒的なパワーを誇り、エンジン1基あたりの推力はF-15用エンジンの2倍もあるとか。すなわち単純計算でいえば、F-35は単発機ながら双発機であるF-15に匹敵する推力を持っているといえます。

 いい換えるなら、卓越した怪物エンジンであるF135は、30tにも及ぶ最大離陸重量を支えるF-35の心臓と形容することができるでしょう。

 しかし、技術の進歩は止まることを知りません。F-35の性能向上を図るため、より高出力な新エンジンの開発が行われています。その新エンジンの名はジェネラル・エレクトリック社製「XA100」と、プラット・アンド・ホイットニー社製「XA101」です。

 では、これら新しいエンジンは、F-35をどのように劇的チェンジさせるのでしょうか。

 XA100とXA101エンジンが従来のF135エンジンと大きく異なるのは、「アダプティブエンジン」という技術が採用されている点にあります。アダプティブエンジンはターボファンエンジンの一種とみなすことができます。

 ターボファンとはジェット排気をタービン(風車)にあて回転力を抽出し、その力でファンを回転させるという、ジェットエンジンながら部分的にプロペラの要素を加えたエンジンで、2024年現在、軍民問わず空を飛行しているジェット機のほぼすべてがターボファン方式のジェットエンジンを用いています。

新エンジンのキモは「第3の空気流」

 ターボファンの構造を簡単に解説すると、まず、エンジン前方から空気を取り込む際、ファンを通って内部へと入った空気は燃焼室へ導かれる熱い「コア流」と、燃焼室を通らず排出される冷たい「バイパス流」の2つに分けられます。ここで、コア流が大きいほど超音速飛行時における効率が上昇し、逆にバイパス流が大きいほど亜音速以下での飛行に適した状態となります。

 そのため、2つの空気流の比「バイパス比」は飛行機の目的によって決定され、たとえば旅客機用エンジンでは大きなバイパス比が与えられ、F-35のような戦闘機ではバイパス比が低くなる傾向にあります。

 アダプティブエンジンでは、このバイパス比を可変させることができ、あらゆる状態においてエンジンの性能を引き上げることが可能となります。XA100とXA101はF135と比較して、推力は20%向上し、また燃費の改善によって航続距離はF135搭載機と比べて25~30%増大すると見積もられています。

 また、極めて興味深い特徴として、XA-100とXA-101ではコア流とバイパス流に加え「第3の空気流」を持つ点が挙げられます。この第3の空気流はF-35の抱える深刻な問題への解決策となることが期待されています。

 F-35の抱える深刻な問題とは「熱管理」です。現在、F-35は性能向上型である「ブロック4」と呼ばれるバージョンが生産されていますが、ブロック4ではアビオニクス(搭載電子機器)が刷新された結果、すでに当初の倍以上の熱を発生しています。今後さらなる性能向上が図られた場合、F-35は冷却能力不足に直面することが予想されています。

 第3の空気流はアビオニクスの冷却に用いることが可能であり、性能向上の余地を著しく拡大させることが期待されます。また、これまで困難であった装備品、たとえば桁違いに大量の熱が発生する「指向性エネルギー兵器」すなわちレーザーの搭載といった新しい可能性も切り開くことになるかもしれません。

 アダプティブエンジンはF-35の飛行能力を大幅に引き上げるだけではなく、その強力な冷却能力でF-35が持つ「飛行する情報処理端末」としての能力についても、拡大させることが期待されています。

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