「世界最強」戦闘機が日本でデモ!? “精鋭チーム”率いた指揮官が吐露 激務な中にあった意外なやりがいとは
乗りものニュース / 2024年9月6日 9時42分
2024年9月、青森県の三沢基地で開催される航空祭にF-22「ラプター」が参加する予定です。しかも同機は日本で初めてとなる飛行展示も行うそう。日本ではあまり知られていないF-22デモチームの姿を元リーダーが教えてくれました。
三沢では展示だけじゃなくデモ飛行も
2024年9月8日に青森県の三沢基地で開催される「三沢基地航空祭」。アメリカ空軍のステルス戦闘機F-22「ラプター」が参加することが話題になっています。
F-22が日本国内の自衛隊や在日米軍のイベントに参加するのは珍しくありませんが、今回は機体を展示するだけでなく、「F-22デモンストレーション チーム」(以下F-22デモチーム)がSNSを通じて来日を告知。同チームはF-22を使ってアクロバット飛行を伴うデモフライトを行っており、ステルス戦闘機を使った航空自衛隊のブルーインパルスのような活動をおこなっています。もし実現すれば、これは日本国内では初めてのことです。
アメリカ空軍では広報活動の一環として、現役の戦闘機ごとにデモチームを組織しています。今回、話題のF-22以外にも、F-35「ライトニングII」、F-16「ファイティングファルコン」、A-10「サンダーボルトII」といった各機でチームが存在しており、主にアメリカ国内でのエアショーに参加しています。これらチームは、アクロバット飛行による「見せる飛行」を行うことで、その軍用機の性能や任務をアピールするのが役割です。
なお、F-16のデモチームは米本土とは別に三沢基地の在日米空軍内にも組織されており、こちらは、これまでも度々、日本の航空祭などでパフォーマンスを行い、観客らを魅了しています。
F-22のデモチームは、米本土東海岸にあるバージニア州のラングリー・ユーティス統合基地に所在しています。チームは、1名の現役F-22パイロットと約20名の支援要員からなり、パイロットが指揮官と実際のデモフライトを担当します。
F-22デモチームの指揮官を直撃
「世界最強の制空戦闘機」との異名を持つF-22「ラプター」を広報活動で飛ばすデモチームとは、どのような部隊なのでしょうか。2016年から2017年まで同チームのパイロットだったダニエル・ディッキンソン元少佐(現在は空軍を退役)に、その活動内容を聞いてみました。
「F-22デモチームのパイロットの任務は簡単なことではありません。それはデモフライトの操縦そのものより、デモチームという特別な部隊に関連したことです。私の場合、年間で20か所程度のエアショーに参加しますが、ただ飛ばすだけでなく、デモチームの指揮官として、これらショーのスケジューリングやチームの運営といった事務作業も行います。加えて、一番大変なのは私自身がエアショーパイロットであると同時に、アメリカ空軍の現役戦闘機乗りであるという点。パイロットとしての技量を維持する必要があるため、私には『デモパイロット』と『ファイターパイロット』、2つの異なる任務が課せられているといえます」(ディッキソン元空軍少佐)
デモチームとして飛ぶエアショーは週末の開催が一般的ですが、ディッキンソン元少佐は平日も基地の飛行隊で、通常の戦闘機乗り(ファイターパイロット)としての訓練もこなしていたそうです。
「たとえば週末にエアショーが終わると、私は当日中もしくは翌日には基地へと戻り、一日休んだ後に飛行隊でファイターパイロットとしての訓練を受けていました。これは、デモチームの任期中でも、命令があれば実戦部隊のパイロットとして任務に就けるようにするためです」(ディッキソン元空軍少佐)
デモパイロットだからこその醍醐味も
F-22デモチームの任務は、パイロットに対してもある程度負担の大きなものといえそうですが、それでもディッキンソン少佐にはここでしか体験できない楽しみがあるといいます。
「F-22のデモパイロットは、誰でもなれるというわけではありません。アメリカ空軍の『ラプター』乗りの中でも教官資格を持つものでないと無理です。しかも、その中から推薦で選ばれるため、その任務に付けるのはパイロットとして名誉なことだといえるでしょう。また、私自身にとっても民間人やあなた(筆者:布留川 司)のような外国メディアと交流できることは、通常の任務では経験できない極めて楽しいことなのです。私の一番のお気に入りは、フライト後に会場へと戻った際、私のデモ飛行を見た子供たちと会って話すことや、一緒に写真を撮ることです」(ディッキソン元空軍少佐)
2024年8月現在のF-22デモパイロットはサミュエル・ラーソン大尉となっており、三沢基地航空祭でのデモ飛行が実現すれば同氏が操縦を担当すると思われます。もしF-22のデモ飛行が実現すれば機体や飛行だけでなく、それを操縦するパイロットにも注目してみると面白いかもしれません。
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