最新ステルス戦闘機の強さの秘訣か? 三沢基地の空自F-35乗り直伝!「航空祭ではココを見て」
乗りものニュース / 2024年9月7日 8時42分
2024年現在、三沢基地航空祭でしか見られない演目のひとつに空自F-35Aの飛行展示があります。特に注目すべきポイントはどこなのか、現役の空自F-35パイロットに直接聞きました。
三沢基地航空祭の目玉F-35「ライトニングII」
2024年9月8日に青森県の三沢基地で行われる「三沢基地航空祭」。この基地は日米が共同使用する飛行場のため、航空祭も航空自衛隊機と在日米軍機の双方が多数参加することで知られます。
なかでも、最も注目なのは航空自衛隊の最新鋭戦闘機F-35A「ライトニングII」による機動飛行でしょう。三沢基地には現在、第301飛行隊と第302飛行隊の2つの部隊が所在し、両飛行隊ともF-35Aを運用しています。そのため、航空祭ではそれぞれの飛行隊が機動飛行と呼ばれるデモンストレーション飛行を会場上空で実施する予定です(天候等によってキャンセルの可能性あり)。
F-35Aは戦闘機としてもっとも新しい第5世代に分類される機体で、航空自衛隊が運用する他の戦闘機、具体的にはF-15「イーグル」やF-2よりも高性能です。その一端は、来場者向けに行うデモンストレーション飛行にも表れており、三沢基地航空祭はまさに最新鋭機の能力を目にすることができる貴重な機会だといえるでしょう。
F-35Aの機動飛行で注目すべき点はその高い機動性で、機体は会場上空の観客から見える範囲で旋回を繰り返します。機体には高いG(重力)が掛かるため、気象条件によっては機体上面に「ベイパー」と呼ばれる水蒸気の雲が瞬間的に発生して機体を包み込むことも。そうしたレアな姿を見ることができるため、戦闘機に詳しくない人々も釘付けにするほどの迫力を誇ります。
そのようなダイナミックな飛行展示を行う航空自衛隊のF-35Aパイロットに、機動飛行について質問してみました。
空自F-35乗り直伝! 飛行展示の見どころは?
今年の三沢基地航空祭では、第302飛行隊は2機のF-35Aでの機動飛行を予定しています。その内の1番機を担当するパイロットに、まずは機動飛行の見どころを聞いてみました。
「機動飛行で注目してほしい点は、F-35のFCS(フライト・コントロール・システム)による広い速度帯における機動性の高さです。F-35の操縦は、パイロットの入力が直接操舵に反映されるわけではなく、FCSというコンピューターによって速度や高度に応じて適切な機動が行われるように設計されています。F-15などでは、速度や高度に応じてパイロットが適切な操舵量を感覚で身に着ける必要がありましたが、このF-35では優れたFCSが自動制御してくれるため、常に最高の機動性が発揮されるようになっています」(第302飛行隊F-35Aパイロット)。
航空祭の機動飛行ではさまざまな課目を行いますが、なかでも特に注目してほしいものがひとつあるといいます。それはF-35の性能の高さをアピールする動きとのこと。
F-35Aの機動飛行は一般の人々に戦闘機の能力をアピールするために行うもので、たとえるなら武道における演舞に近いものだといえます。しかし、デモンストレーションとはいえ、そこで披露される能力は実際の空中戦にも通じるものがある模様です。
機動飛行がF-35Aの強さのすべてじゃない!
「もちろん、この機動性はいわゆるドッグファイトにおいて役立ちます。戦闘機にとってあらゆる場面における機動性は重要ですが、F-35の低速域での機動性と安定性は、ドッグファイトなどその戦闘機の機動性が問われる場面において特に大きな強みとなります」(第302飛行隊F-35Aパイロット)。
ただし、この機動性もF-35Aという戦闘機にとっては、その能力のほんの一部分でしかありません。第5世代機と呼ばれる戦闘機の特徴は、レーダーに映らないステルス性や、戦域の情報を統合化できるセンサーフュージョン能力にあり、機動性がその勝敗に大きくかかわるドッグファイトでの強さが、性能のすべてではないのです。
「確かに機動性はF-35の強みではありますが、F-35はステルス性とセンサーフュージョンといった能力を持っており、現代の航空戦において高い戦闘能力を有しています。そのため、良好な機動性というのはあくまでもF-35の強さという点でいうとそのうちの一部に過ぎません」(第302飛行隊F-35Aパイロット)。
F-35Aの機動飛行は多くの人々の度肝を抜く派手さがありますが、それだけで戦闘機の優劣を図れるわけではありません。とはいえ、ビジュアル的に優秀な機体かどうかを判別する一助になるのも事実。三沢基地航空祭の当日には、F-35Aが持つ戦闘機としての高いポテンシャルを是非とも肉眼で確かめましょう。
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