「なぜ軍用車はガソリン車少ないの?」燃料の特性上ヤバい至極当然な理由とは やっぱりディーゼル!!
乗りものニュース / 2024年9月26日 9時42分
戦車のエンジンといえばアメリカをのぞく多くの国で軽油を燃料とするディーゼルエンジンが使用されています。それは一体なぜなのでしょうか。
戦車どころか軍用車両もほとんどディーゼル! なぜ?
一般的に普段使いするクルマといえば、ガソリンもしくは軽油を燃料とするエンジン車が主流です。最近ではモーター駆動の電気自動車(EV)もかなり普及していますが、これが軍用車両となると話が変わってきます。
2024年現在、戦車だけではなく装甲車はもちろん、トラックを始めとした非装甲の車両ですら、多くがディーゼルエンジンで、ガソリン車は式典などで使う車両をのぞけばほぼありません。一体なぜ軍用車両では「ディーゼル一択」なのでしょうか。
実は、今から80年前ほど前の第二次世界大戦時は、ガソリンエンジンの方が主流でした。例えば戦車などは、その最たるもので、同大戦の主要参戦国で、軽油を使うディーゼルエンジンの戦車を主力に使っていたのは、ソ連(現ロシア)と日本くらいでした。当時の技術で高出力かつ小型軽量なエンジンを求めた場合、ガソリンの方が適していたためです。
また、運用面での利点もあります。当時は航空機もガソリンを燃料にする、いわゆるレシプロエンジンのものが大多数だったことから、燃料を共通化できるほか、馬力の高いそれらのエンジンを軍用車両にも流用できるというメリットを有していたからでした。
とにかく燃えやすいことが問題!
ただガソリンエンジンを戦場で使う場合、デメリットも多くあります。代表的なものは、引火し易いという点です。ガソリンは可燃性の蒸気が発生する「引火点」と呼ばれる温度がマイナス40度とかなり低く、ゆえに地球上のどこでも火元があればすぐに燃えます。
そのため、被弾時に燃料タンクに引火すると爆発を伴う火災が発生し、多大な被害が生じやすいといった問題があるだけではなく、状況によっては歩兵やゲリラの使う火炎ビン攻撃でも、車両全体が炎上してしまう欠点を含有していました。
また当時の戦車用ガソリンエンジンはかなり燃費も悪かったと言われており、ただでさえ引火の危険のある中、戦場で頻繁に給油する必要がありました。
一方、ディーゼルエンジンに使う軽油では、引火点が60度から100度とかなり高く、攻撃を受けて燃料が漏れだしても、ガソリンほど簡単には燃えません。
そしてこのディーゼルエンジンを用い、他国に先駆けて第二次大戦中に卓越した高性能を発揮した戦車が、ソ連製のT-34です。燃えにくい燃料に加え高出力のエンジン、さらに傾斜装甲により防弾能力も高く、幅の広い履帯(キャタピラ)を用いた走行能力にも優れていたため、当時の交戦国だったドイツに大きな衝撃を与えました。
戦後は完全にディーゼルが主流に!!
戦後は、技術の発展や運用のし易さなどが考慮され、アメリカやドイツ、イギリスといった国々でもディーゼルエンジン搭載の戦車が主流になります。また、メインとなる戦車の燃料が軽油中心となったことで、補給体制の効率化、一元化の観点から装甲車やほかの軍用車両もディーゼルエンジン搭載のものが結構な割合を占めるようになりました。
1980年代、戦車に関しては航空燃料を使うガスタービンエンジンを動力に使う車両としてアメリカのM1「エイブラムス」やソ連のT80が登場しましたが、燃費が悪いことや、粉じんを吸っての故障リスクがあることから、完全にディーゼルエンジンを淘汰することはなく、依然として数の上ではディーゼルエンジンが主流となっています。
戦車以外の軍用車両には一部EVを使用する試みも見られていますが、移動するのに大出力が必要な戦車を動かすには現状、上に架線を敷いて直接電気を通すくらいしか方法がないため、しばらくはディーゼルエンジンの天下が続くと予想されます。
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