このままじゃ中国に勝てない… 米空軍の焦りの理由は「空対空ミサイル」!? その最新事情とは
乗りものニュース / 2024年9月29日 6時12分
アメリカ空軍で新型の空対空ミサイルの開発が進められています。ただ、これまでのミサイルを改良するのでは駄目なのでしょうか。じつは、弾体の大きさがキモなのだそうです。
中国の最新ミサイルに撃ち負けちゃう!
空対空ミサイルは戦闘機の生存率を左右する最重要兵器のひとつです。航空自衛隊を含む西側空軍の戦闘機に搭載される主力空対空ミサイルは、アメリカが開発したAIM-120「アムラーム」であり、多くの機種で使用されています。
ただ、近年ではAIM-120の能力不足が指摘され、その優位性が脅かされつつあります。では、AIM-120を脅かす存在とは何なのでしょうか。
昨今、中国空軍は驚異的な早さで近代化を進めており、20年前の一世代遅れた空軍から一変しています。とりわけ注目すべきはPL-15(霹靂15)空対空ミサイルです。PL-15は中国国産の新鋭戦闘機J-10CやJ-20に搭載される大型の空対空ミサイルで、その射距離は200km以上と推測されています。
このPL-15に対し、AIM-120は比較的小型であるため射距離で劣っており、PL-15を搭載する戦闘機が対等な状態で交戦した場合、PL-15に先手を取られる可能性が高いのです。このため、アメリカ空軍は中国空軍との戦闘において不利な状況に陥るのではないか、という懸念が増しています。
こうした状況を打開するため、アメリカではAIM-260「JATM(統合先進戦術ミサイル)」の開発が進められています。AIM-260はAIM-120よりも一回り以上大きく、推進システムの搭載量はいっそう増えていることから、射距離はPL-15に匹敵する200km以上を確保している模様です。これにより、中国空軍との戦闘において優位性を確保できると期待されています。
一方で、AIM-260はそのコストも高額になることが予想されるため、AIM-120を完全に置き換えるかどうかは不透明です。AIM-120とAIM-260は共存し、補完し合う「ハイ・ローミックス」の関係になる可能性が高いでしょう。
その場合、敵戦闘機との交戦を目的とする戦闘機はAIM-260を搭載し、空対地爆撃などを目的とする場合は自衛用にAIM-120を搭載する、または対ドローンや対巡航ミサイル時にはAIM-120を用いるという使い分けが考えられます。
すでに初使用から30年以上経つ「アムラーム」
AIM-120シリーズは1991年に初めて実戦投入されて以来、多くの戦果を挙げており、その優秀さが実証されています。また、数度にわたる大幅な改良も行われており、現行型のAIM-120Dは最初期型であるAIM-120Aに比べて射距離が2倍に延伸され、最大160kmに達しています。
しかし、AIM-120の射距離延伸はロケットモーターの推力を小さくし燃焼時間を延長することで実現したものであるため、加速性能の低下という代償を伴っています。そのため、射距離の改善は限界に達しています。
アメリカでは、可能な限り一刻でも早くAIM-260を開発し実戦配備することが求められていますが、現在のところその姿は一度も公開されておらず、実態は不明です。開発進捗も遅れているとの情報があり、実用化時期は不透明ですが、そう遠くないうちに日の目を見ることが期待されています。
なお、アメリカ海軍ではSM-6「スタンダード」の空中発射型AIM-174の開発も進められており2024年にはじめて一般公開されました。こちらは超大型の空対空ミサイルであり、AIM-260と競合するかどうかは不明です。
いずれにせよ20世紀初頭の世界を制してきた、「アメリカ製戦闘機×AIM-120」という組み合わせの黄金時代は、当面は終わりを迎えるわけではないにしても、より強力な組み合わせに世代交代することになるのは間違いないでしょう。
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