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「高すぎる!」非難殺到のアメリカ将来戦闘機、シラけムード拭えず 対案で浮上の“廉価版”とは?

乗りものニュース / 2024年10月7日 6時12分

アメリカ空軍のF-35A「ライトニングII」戦闘機。NGADの1機あたりのコストは、F-35の2.5倍とも(画像:アメリカ空軍)。

未来的なイメージとともに研究が進む第6世代戦闘機。性能を追求した結果、高コストとなることがすでに指摘されています。そこで対案として浮上しているのが、真逆ともいえるコンセプトの「軽ステルス機」です。

高価すぎて議会から追及が

 アメリカのF-35やF-22、中国のJ-20、ロシアのSu-57などは第5世代戦闘機と呼ばれ、制空戦闘機として高い攻撃能力とステルス性能を特徴としています。しかし、それを超える第6世代とされる戦闘機の研究もすでに始まっており、さまざまなメーカーが未来的なコンセプトイメージを発表して、我々の夢を掻き立てています。

 とはいえ、その夢を実現するには膨大な費用が必要です。未来の戦闘機は、敵との競争に勝つ前に、納税者や財務当局、議会との戦いに勝たなければならないのです。

 アメリカでは、F-22の後継機となる次世代航空支配(Next Generation Air Dominance:NGAD)計画のコストが高騰しており、議会から厳しく追及されています。NGADの1機あたりのコストは、約2億5000万ドル(約360億円)に達すると見込まれています。

 ちなみにF-35は、統合計画局が昨年秋に発表した数字によれば、全派生型の平均単価は約8250万ドル(約119億円)でした。アメリカ空軍はNGADを約200機取得することを目指していますが、その計画全体の予算は天井知らずの状況です。2015会計年度には1820万ドルが計上され、2022会計年度には10億ドルを突破。2024会計年度には23億ドルが要求されています。

「戦力の基本は数である」といわれますが、ランク・ケンドール空軍長官も、NGADはF-35の3倍も高価であるため多数の調達は難しいことを認めています。彼は正直に、1機1億ドルというF-35の価格が「現実的な限界」であると述べています。

 NGADは高度なステルス性はもちろん、無人機とチームを組んで共同作戦を行うことを想定しています。また広大な太平洋地域での運用に必要な航続距離やペイロードも求められています。これらの要件を満たそうとすれば、必然的に高価で重厚長大な「重駆逐機」となるでしょう。

空軍参謀総長が軽ステルス機の構想を明らかに

 しかし、2024年7月にロンドンで開催された国際航空宇宙軍司令官会議において、空軍参謀総長デイビッド・W・オルビン大将は、これとは対照的に安価な「軽ステルス機」の構想を明らかにしました。「重駆逐機」のイメージとは真逆のコンセプトです。

 軽ステルス機構想は、F-35の縮小版のような単発機で、コストはF-35と同等かそれ以下に抑えられ、機体の耐久性よりも適応性を重視しています。

 機体やハードウェアは必要最小限の消耗品として扱われ、ソフトウェアのアップデートや入れ替えを繰り返して優位性を維持します。パソコンの筐体に関係なくOSをアップデートし、必要に応じてサーバー容量やグラフィックボードを交換するようなイメージです。

 さらに、各種センサーや電子戦装備、攻撃手段は無人機プラットフォームに分散させ、有人機はデータリンクのノードの役割のみを担うという徹底した軽装備化を目指しています。

 NGADを推していた空軍にしては奇妙な構想ですが、2021年に前空軍参謀総長のチャールズ・Q・ブラウン・ジュニア大将が空軍の将来戦力構成の再検討でNGADの白紙撤回を示唆したこともあり、議会との駆け引きの意味もありそうです。

 高価で高性能なハイエンド装備を揃えることは予算的に難しいため、比較的安価で一定の作戦能力を持つミドルおよびローエンドの装備と組み合わせる「ハイ・ローミックス」の考え方が採用されることが一般的です。たとえば、F-15(高価高性能)とF-16(廉価)の組み合わせがよく例示されます。軽ステルス機は、ローエンドに位置付けられるものです。

機体にお金をかけないのが現代の戦闘機開発か

 なお、非正規戦ではNGADはオーバースペックであり、低レベルのミッションに対応できる多目的軽戦闘機の必要性も議論されています。ただし、軽ステルス機は軽装になる分、航続距離が短くなり、ペイロードも減少します。これが広大な太平洋地域での運用において問題となる可能性があるのです。

 アメリカ空軍は次世代給油機、すなわちステルスタンカー構想を進めており、2024年9月にはNGADとも関連していることが確認されています。ステルスタンカーが実現すれば、作戦地域近くで給油できるようになり、軽ステルス機でも活動範囲が広がるでしょう。

 ステルスタンカーを含むさまざまな機能を、軽ステルス機のような有人・無人プラットフォームに分散させ、任務に応じて組み替える方法が合理的であるとの意見も出ています。機体にはできるだけ金を掛けず、ソフトウェアをアップデートすることで最新の状態を維持するというコンセプトです。これが第6世代戦闘機のひとつの解答かもしれません。

 垂直尾翼すらない未来戦闘機のイメージには夢がありますが、あらゆる機能をひとつのプラットフォームに詰め込んでハイエンドを追求する発想は、実は未来的どころか、時代遅れかもしれないという皮肉です。ロッキード・マーティンやボーイングは、NGADの元受け業者としては入札に参加しないことを示唆しており、NGAD計画が事実上凍結されているとの情報もあります。このような巨額の計画が、純粋な軍事的要因だけで動くことはあり得ないのです。

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