御社も「クロネコヤマトみたいにしませんか」でEV化進む? “経験”を売る新ビジネスの大いなる“狙い”
乗りものニュース / 2024年10月3日 9時42分
EVシフトを進める物流大手ヤマトホールディングスが、その知見をパッケージ化したサービスを展開します。ヤマト運輸が進めてきた取り組みと同規模を他社で急速展開。ただEVの導入を支援するのとは大きな違いがあるようです。
「そろそろ廃車ですね」まで提案できる!?
エンジン車からEVへのシフトには、目に見えるコストだけでなく、計画の策定、再エネの導入などさまざまな課題を解決することが必要で、何より導入ノウハウがありません。そうした企業の支援に向けて2024年10月1日、ヤマトホールディングスと芙蓉総合リースが国土交通省で会見を開きました。
企業の脱炭素は重要な経営課題ですが、そのための温室効果ガス(GNG)削減の推進には戸惑いがあります。そこにヤマト運輸の車両整備などを担う「ヤマトオートワークス」(以下オートワークス)が中心となり、脱炭素に向けた取り組みを支援する商品「EVライフサイクルサービス」を提供します。
オートワークスが提供する「EVライフサイクルサービス」は、以下をパッケージで顧客に提供します。
・GNG削減計画の立案
・EVの導入
・充電器の設置
・車検、充電器の点検などメンテナンス
・電力のマネジメント
・再エネ電力の供給
・EV入替え、廃棄
オートワークスの金井宏芳社長は、この商品提供で「2026年末までの中期経営計画で3000台の目標を立てている」と話します。公表済みの中期経営計画では新規事業「モビリティ・ネコポス事業」の中に位置付け、全体で1100億円(2027年3月期)の収益を見込んでいます。車両の選択肢が限られていることから、当面は軽バンが導入対象です。
ヤマトグループの中核「ヤマト運輸」は2024年9月末日時点で、EV車両約2300台、太陽光発電設備105基を導入・設置済みです。パッケージ供給で、ほぼ同じ規模の展開を目指すことになります。
GNG削減のための商品は、さまざまな分野で提供されていますが、同社のパッケージは特に、いわゆる「白ナンバー」の自家用車両分野に拡大できるというのが、同社の考え方です。
「GNG削減について各社とお話をさせていただくと、何から手を付けていいかわからないと戸惑われているのが端的な印象です。自社で営業車などを所有する企業は、運送事業者さんと違って知見がほとんどないというのが実態で、そのへんを一からサポートさせていただく」(金井社長)
汗した“経験”を売る
多くの類似商品は、車両製造や資金提供など供給側からの提案ですが、オートワークスはヤマトグループのユーザーとしての経験を商品に盛り込み、エンジン車からEV車への単なる転換との差別化を計ります。
「EVトラックのユーザーとしてのヤマト運輸、ヤマトグループの立場で申し上げると、(車両)メーカーにはないきめ細かな気付きとサービスがある。例えば、EV車両に転換した時の実際の走行距離はどのくらいなのか。ドライバーの不安、不明点、使い方、日常点検の方法までヤマト運輸で培ったノウハウが提供できる」
また、車両のEV化と共に、再エネ電力の供給についても、同様のノウハウ提供を強調します。
「オートワークスは3年間で2300台のEV供給、200-300拠点に充電設備を設置し、本当に汗をかいて大中小、いろんな現場の課題をクリアしながらここまできた。今は1日の長があると思っている。これを活かしてスピードをあげてサービス展開を図りたい。(目標)3000台は最低限やらなくてはならない」(ヤマト運輸モビリティ事業推進部・上野公部長)
芙蓉総合リースはヤマトリースの筆頭株主であり、同社独自に出資を通じた商用EVの導入、パートナー企業との提携による充電インフラの提供を推進しています。EVリースの実績をオートワークスのパッケージ商品に活かすことで「より全国規模の幅広いサービスを提供することが可能になる。エネルギーマネージメントの幅も広がる」(藤崎眞理常務執行役員)。
政府は2030年までにGNGを対2013年比で46%削減し、2050年までのカーボンニュートラル実現を掲げています。その過程では、商用小型車の新車販売で2030年までに電動車20-30%、2040年までに電動車など脱炭素燃料車100%が目標とされ、エンジン車の選択は狭まっていく方向です。
EVの普及にブレーキがかかっていると言われる中でも企業の脱炭素は重要な経営課題です。複雑なGNG削減目標の達成がビジネスチャンスになっています。
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