驚愕設計「翼に30発プロペラ埋め込み飛ぶ」飛行機…なぜ? 飛び方も変わってる! 量産初号機も順調です
乗りものニュース / 2024年10月4日 8時12分
ドイツでは、完全電動の推進装置が翼に30基備わり、それが前翼・主翼の後縁に埋め込まれているユニークな新型機の開発が進められています。この設計にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
世界初(!?)「電動垂直離着陸ジェット機」
ドイツのリリウム(Lilium)社が2024年10月1日、最初の量産機である「リリウム ジェットMSN 1」のシステム電源投入テストに成功したと発表しました。この機は世界初という「電動垂直離着陸ジェット機」で、そのルックスもシステムも異質です。通常の航空機のエンジンに相当する完全電動の推進装置が翼に30基備わり、それが前翼・主翼の後縁に埋め込まれているのです。
「リリウム ジェット」は、いわゆる「空飛ぶクルマ」に分類される新型機ですが、そういったなかでも飛び抜けてユニークなデザインをしています。なぜ、このような設計が採用されているのでしょうか。
この機は全長14mで、最大6人の乗客を乗せることができます。推進装置がある部分は可動式で、垂直離着陸時やホバリング時は翼の後縁部を下げ、推進装置の排気方向を下向きに変えることで空中にとどまります。一方、高速巡航中は固定翼ジェット機のように、翼型を直線的な状態にし、エンジン後方から排気して飛行します。
これは、より高速で目的地に行くため、垂直離陸をしたのち、固定翼ジェット機のように上昇・巡航・降下を行い、最後に地上近くで垂直着陸をするというフライトプロセスに基づいたものだそう。同社は、この“固定翼らしい”設計は、フライト時間の多くを占める「上昇・巡航・降下」の際に、効率的に運用できることを主眼においているといった趣旨の説明をしています。
そして、推進装置を大型のものではなく、小型のものを30発装着している一因として、同社は1発あたりの初期設計のプロセスを簡略化させるためとしています。推進装置は全電動ながら、いわゆるダクテット・ファンと呼ばれるタイプのもの。これはプロペラをナセルで覆うことによって、プロペラをさらしたままフライトするよりも、空気を無駄なく取り込み、その分多く後方へ排出でき、効率良くフライトできるとされています。また、覆いを付けることで、騒音を抑制する効果もあるのだそうです。
同社によると、ダクテット・ファン型の推進装置の場合、プロペラをさらした状態で同じ回転数で稼働させるのと比べて、ホバリング時の効率が向上し、より小さなプロペラで飛行できるとのこと。そのため、飛行中の騒音も低減できる効果も期待できるといいます。
現在、同社では量産2号機である「MSN 2」が最終組み立て段階にあり、この機体は2025年に有人での初飛行に挑むといいます。今後はこの量産型テスト機を6機体制とし、実用化に不可欠な「型式認証」の取得と、各種試験などを行う予定としています。
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