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「お尻から旅客機乗ります」ユニーク手法なぜ消滅? 胴体最後部ドアのメリットとは

乗りものニュース / 2024年10月6日 17時12分

BAC1-11(加賀幸雄撮影)。

かつての旅客機では、「エアステアー」と呼ばれる内蔵の階段を使って、機体のおしりから乗り降りする、ユニークな方法を取る機種がありました。この方法はなぜ見かけなくなったのでしょう。

普通は「左舷から乗り込み」

 旅客機で乗客が乗り降りするのは左舷(機体の左側)が一般的ですが、かつては“おしり”から乗り降りする機種がありました。機体に内蔵された「エアステアー」と呼ばれる階段を使った乗降方法で、いまとなってはユニークに思えます。なぜこの方法は見られなくなったのでしょうか。

 旅客機で乗客が左舷から乗り降りするのは、客船が左舷から着岸し乗船と下船を行っていた頃の名残とされ、船では「port side」が船首に向かって左側を指す言葉として今に残っています。飛行機においては、空港で複数の機体が旅客ビルの前で横並びになることからも、乗客の出入りする側は統一した方が作業効率は良くなる利点もあります。

 しかし、1960年代はボーイング727や英国のBAC1-11のように、おしりから「エアステアー」を使って乗り降りできる機体がありました。これらはおもにジェット旅客機でも小型の機種で、機体後部にエンジンを付けた「リアエンジン式」だったことが、共通点として挙げられます。

 1960年代に長距離の国際線で使われた大型機ボーイング707やダグラスDC-8は、エンジンを吊り下げ式にして、主翼の「ねじれ」を抑えるメリットを主眼に置いて設計されました。しかし、主翼の下にエンジンがあるぶん、機体の全高は増えます。それに対して、小さな地方空港へ乗り入れる機体に求められたのは、当然小さな機体でした。

なぜリアジェット=おしりから乗り降りになったのか

 リアエンジン式は、離着陸距離を短くすることができるフラップや前縁スラットをエンジンに邪魔されず主翼へ幅広く付けることができます。この方法は小型のジェット旅客機が発着するような、小規模空港の短い滑走路への発着にもマッチするものでした。また、エンジンが胴体に付く分、全高も低くなり、乗り降りも楽になります。

 もっとも、「エアステアー」は胴体の最後部に設置するタイプだけでなく、機体側面の通常の乗降用ドアに階段を取り付けたタイプにも存在します。しかし、リアエンジン式の小型ジェット機は、ほとんどが胴体最後部に設置されています。というのも、こうした機体は胴体が短いうえ、胴体後部にはエンジンがあるため、胴体側面に乗降ドアが付けにくくなります。そのため、最後部中央にドアを設けたのです。全高が低いので「エアステアー」も短くでき、重量を抑えられました。

 他方、1960年代当時にエアステアーが重宝されたのは、地方空港を中心として、旅客ビルから直接乗り降りできる搭乗橋(ボーディング・ブリッジ)が満足に整備されていなかったこともあります。旅客の乗降には、機体が到着するたびにタラップ(階段)機体に横付けしなければなりませんが、内蔵式のエアステアーがあるなら横付けする手間も省けます。

 しかし、全国の空港で搭乗橋が整備されていくと、搭乗橋を付けられない機体最後部の乗降口は使う機会も減り、やがて旅客機では消えてしまいました。

 こんにち、海外の博物館に残されているおしりに乗降口のある機体のエアステアーを昇り機内に入ってみると、徐々に視界に入る座席が新鮮に映ります。それは1960年代、まだ飛行機へ乗る機会が少なかった時代に感じた旅の高揚感に通じるものなのかもしれません。

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