零戦に比肩する傑作機「ぜろかん」旧海軍の“名バイプレーヤー”が現代に甦る! 発注元は広島の観光名所
乗りものニュース / 2024年10月17日 18時12分
太平洋戦争において旧日本海軍航空隊で偵察や着弾観測に使われ、戦艦「大和」などにも搭載された「零式観測機」。その実物大模型の製作が茨城県で始まったので現地へ行き、さっそく同機を見てきました。
姿を見せた製作途中の「零観」
ここ数年来、国内の航空博物館や平和記念館では「零戦」や「紫電改」、「飛燕」など、旧日本軍機を再現した実物大模型の展示が相次いでいますが、それら機体の多くは茨城県小美玉市にある立体広告メーカーの(株)日本立体で製造されています。
そして、このほど同社製の新たな実物大模型として、太平洋戦争中に作られた零式観測機、通称「零観」(ぜろかん/れいかん)の実物大模型の製作が発表され、2024年10月8日に同社の工場で安全祈願祭と鋲打ち式が行われました。
今回公開された「零観」模型は、大部分が赤い錆び止めが塗られた鉄製の骨組み状態のままでしたが、機首のカウリングや操縦席の周辺にはアルミ板が貼られ、最終的な完成形をイメージさせるには充分なものでした。
筆者(吉川和篤:軍事ライター/イラストレーター)はこれまで、同社において製造された三式戦闘機「飛燕」の実物大模型を何度か見学してきましたが、今回の「零観」はそれよりずっと大きく建物内部を圧迫して見えました。
これはフロート付き複葉機という高さのある形状によるものですが、これまでは戦艦「大和」の後部に載った状態をはじめとして、写真や模型でしか見た記憶がなかったことから小型機というイメージが強く、これは意外な印象でした。
14時から始まった式典では、関係者が見守るなか地元の神職によって作業の安全祈願として祝詞(のりと)が上げられ、玉ぐしの奉納に続いて施工主である(株)日本立体の齊藤社長と依頼主である大和ミュージアム(広島県呉市)の戸高一成館長が機首の鋲打ち式を行いました。
今後は、引き続いてアルミ製外板を貼る作業が続けられ、操縦席内部の再現や各動翼への羽布張り、そして外部塗装を経て、来年(2025年)2月頃の完成を予定しているそうです。
戦艦「大和」に搭載されたことで呉へ
「零観」の略称で知られる零式観測機は、短距離の偵察や艦砲射撃の着弾観測に使用する目的で生まれた旧海軍機で、海面での発着が可能なようフロートを備えているのが特徴です。
開発は1935(昭和10)年に三菱重工で始まり、運用は1940(昭和15)年に開始されています。2人乗りで、機体形状はこの当時すでに旧式な複葉構造であったものの、羽布張りの補助翼を除くと近代的な全金属製でした。
エンジンは三菱製の「瑞星一三型」を搭載。機体が小型・軽量なことにより上昇力に優れ、最高速度も複葉機としては速く370km/h出ます。また自衛用として機首に7.7mm機銃を2丁装備(ほか機体後部に旋回機銃を1丁)するなどして、一定の空戦性能も備えていたことから、太平洋戦争の中頃までは水上戦闘機代わりに使われることもあり、P-38やP-39、F4Fといったアメリカ軍戦闘機の撃墜記録も残しています。
さらに翼下に爆弾2発を搭載可能であったことから、船団護衛や対潜水艦哨戒にも就くなどマルチに使われ、各型合わせて700機以上(一説には1000機以上)生産された傑作水上機でした。
旧日本海軍を代表する戦艦「大和」にも搭載され、各海域で多用されたようですが、同艦最後の出撃となった1945(昭和20)年4月の沖縄への海上特攻では作戦前に全機が降ろされています。
やはり貴重な機体と搭乗員を無駄にする事は避けたかったからでしょうか。「零観」と搭乗員たちは広島県の呉軍港を出撃する「大和」の上空で旋回しながら、船影を見送ったというエピソードも伝えられます。そうした「大和」との深い関係があった機体であることから、このたび大和ミュージアムが発注したとのことでした。
実は、大和ミュージアムは2026年4月のリニューアルオープンに向けて、来年の2025年2月中旬から改装工事のために一時休館することが発表されています。
その間は、近くにある「ビューポートくれ」内に仮展示室として「大和ミュージアム サテライト」が開設される予定です。このたび鋲打ち式を行った「零観」の実物大模型は、この仮展示室の目玉として海上に浮いたイメージで展示される予定なので、それはそれで「サテライト」の目玉展示になることは間違いないでしょう。
来年のお披露目には、筆者も呉に足を運んでその姿を見学したいと思いました。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
人間爆弾「桜花」出撃の大分で特攻ミュージアム構想 目玉展示に国内初・九七式艦上攻撃機
産経ニュース / 2024年10月15日 8時0分
-
ゼロ戦みたい!? 護衛艦と「日の丸プロペラ機」のコラボショットが実現! 青空を背景に白い機体が雄飛
乗りものニュース / 2024年10月14日 11時42分
-
「おい! 建物に旅客機がぶっ刺さってるぞ!」驚愕設計のビルなぜ? もちろん本物の機体です
乗りものニュース / 2024年9月29日 11時12分
-
「異形機にジェットエンジンくっつけよう!」驚愕の“魔改造二刀流機”、なぜ生まれた? 超クセ強エンジン配置
乗りものニュース / 2024年9月25日 7時12分
-
戦闘機が今もズドドド!!ってタマ撃つ必要ある? ミサイル時代にも「ガンポッド」 見た目ジャマでも欠かせない理由
乗りものニュース / 2024年9月20日 16時12分
ランキング
-
1寝室でスマホは、汚いトイレで寝てるぐらい不衛生 就寝前のスマホは要注意
もぐもぐニュース / 2024年10月17日 16時18分
-
2【ケンタッキー】「ファン感謝祭パック」(990円)が期間限定で登場! 単品で買うより520円もお得に
マイナビニュース / 2024年10月16日 16時55分
-
3「大谷翔平」が孫にしたい有名人1位に - 2位は?【50代以上の女性に調査】
マイナビニュース / 2024年10月17日 11時56分
-
4「ぐりとぐら」作者、児童文学者の中川李枝子さん死去…89歳
読売新聞 / 2024年10月17日 13時26分
-
5「元恋人の思い出の品」を捨てない人は不幸体質になる…「断捨離」は物理法則上とても合理的といえるワケ
プレジデントオンライン / 2024年10月17日 10時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください