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フロントに“立派なモノ”が… 豪州マイナー戦車に付いていた「謎」の突起物 “実戦使用”はあったのか?

乗りものニュース / 2024年12月30日 18時12分

センチネル巡航戦車の砲塔部分(画像:ボービントン戦車博物館)。

第二次大戦中のオーストラリアでは、来るべき日本軍との戦いに備えて、初の自国戦車が開発されました。ただ、その戦車の正面には、“ナニか”に見える謎の突起物が備えられています。

どう見ても気になる車体正面

 第二次世界大戦中の1940年11月、オーストラリアは熾烈な日本軍との戦いや、万一本土決戦になった場合を想定し、オリジナル戦車を試作します。のちに同戦車の量産型は、「センチネル」と呼ばれるようになりますが、同車は他国の戦車にはまず見られない、特徴的な“ナニか”に見える突起物が車体に付いていました。

 元来「センチネル」はイギリスの巡航戦車をイメージして作られており、オーストラリアで大量生産された唯一の国産戦車です。開発に当たり参考にしたのはイギリス製の「クルセーダー」だそうですが、エンジンや変速機、下部車体、砲塔基部などはアメリカM3中戦車の影響を受けているとのことなので、英米戦車のいいとこ取りといえるでしょう。

 特徴としては、砲塔と車体の巣用箇所が鋳造、つまり鋳物でできているという点があげられます。これは、当時オーストラリアの溶接技術が未熟だったからで、ゆえに全てを鋳造部品で構成しようという判断になったようです。

 そして、さらに目立つ特徴が、車体正面にある妙な突起物です。“ナニか”を想像する見た目ですが、これは車載機関銃の銃身が収められているカバーになります。大戦中のほかの戦車の車載機関銃のカバーにくらべ、かなり“硬くてぶっとく”なっているのには理由があります。

 実は、同戦車の車載機関銃にはヴィッカース重機関銃という第一次世界大戦時から使用される旧式の機関銃が用いられていました。この機関銃は、液体の入ったジャケットで加熱する銃身を冷やし射撃を持続する、いわゆる「水冷式」の機関銃でした。すなわち、銃身周りがウォータージャケットで覆われているため、そのぶん直径の大きい銃眼が必要だったからこそ、このような異形のカバーになった模様です。

 イギリスのボービントン戦車博物館がYouTubeに投稿した「センチネル」の解説動画のコメント欄にも、この機関銃カバーに関しては「前面にそれを置く戦術は想像できる。敵を困惑させて逃げさせる」「あの卑猥なMGハウジング」といった書き込みがありました。また、「フレッチャー氏の見せかけの純朴さは最高だ」と明らかに“ナニか”に見える機関銃カバーに、直接的なツッコミを入れない名物解説員のトークの上手さを称賛するコメントもありました。

実戦での投入はなし…せっかく作ったのになぜ?

 なお、実戦ではナニかに見える機関銃カバーよりはるかに重要な戦車砲はオーストラリア軍の標準的な対戦車砲だった「オードナンスQF 2ポンド砲」を採用しました。欧州での戦車戦では既に力不足感も否めない砲でしたが、旧日本軍の戦車相手では十分でした。後に「オードナンス QF 6ポンド砲(口径57mm)」に換装しますが、こちらの砲は942年の段階でのドイツ戦車と渡りあえるような火力・装甲を持った設計となっています。

 量産は1942年8月にシドニー近郊のチュローラ戦車製造会社で開始されたものの、結局65両しか製造されていません。なぜなら、オーストラリアにはアメリカやイギリスから大量に戦車が供与されたからでした。

 米英戦車のほとんどは「センチネル」より優秀で、あえて国産戦車で機甲部隊を編制する必要性はありませんでした。そういった経緯もあって「センチネル」は一度も実戦を戦わずに終戦を迎えます。つまり、立派なナニかに見えるものも一度も使うことなく終わっています。

 ちなみに、戦時中の1944年12月に公開された国威発揚も兼ねたオーストラリアの戦争映画『トブルクのネズミ』では、ドイツ戦車に似せて改造したセンチネル巡航戦車が出演しているそうです。

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