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「選挙でオープンカー」なぜいない?「候補者は目立ってナンボ」とはいかない法律のカベ

乗りものニュース / 2024年10月26日 9時42分

選挙運動のイメージ写真(画像:PIXTA)。

第50回衆議院議員選挙が公示され、選挙カーを見かける機会が増えました。選挙カーには細かなルールが定められていますが、その中で奇妙なのが「オープンカーの使用禁止」という条文。なぜオープンカーは選挙カーに使えないのでしょうか。

選挙カーの知られざる使用条件やルール

 2024年10月27日は第50回衆議院議員選挙の投票日です。選挙戦が始まると街中で見かける機会が増えるのが「選挙カー」(街宣車)でしょう。じつはこの選挙カー、どんなクルマでもOKかというとそんなことはなく、公職選挙法で細かな使用条件やルールが定められています。

 たとえば、選挙で候補者が使用できる選挙カーの車種は、3ナンバーの普通乗用車、5ナンバーの小型乗用車と軽乗用車、4ナンバーの小型商用車と軽商用車に限られます。ただし、候補者の身体に障害がある場合は、福祉車両に限って8ナンバー車の使用が認められています。

 なお、8ナンバーの中でも街頭広告や宣伝を目的とした「広報宣伝車」は使えません。加えて意外なところでは、オープンカーやトラックなども使用不可です。これは、ボディ形状に関してセダンやステーションワゴン、ライトバン、SUV、ワンボックスカーなど固定ルーフが備わることが条件に入っているためです。

 一方、候補者ではなく政党幹部などが応援演説で乗る「政党車」は、乗車人数が多くなることから、マイクロバスやトラックを改造した8ナンバーの「宣伝広報車」の使用が認められています。

 なぜ、諸外国では選挙カーとしてよく見られるオープンカーが、日本の選挙では使用できないのでしょうか。

 その理由は「品位に欠けるから」です。オープンカーの使用禁止を定めた条文は、1962(昭和37)年の公職選挙法の改正で盛り込まれました。当時の選挙活動は、天蓋のないトラックが用いられることが多く、走行中に候補者が荷台に立って道行く人々にペコペコ頭を下げる姿がみっともない、ということで禁止になったのだそうです。

 元々はトラックの使用を規制するための法改正だったのですが、屋根のないクルマということで、オープンカーも巻き添えを食うかたちで使用が許されなくなりました。その後、規制緩和を求める声がどこからも挙がらないことから、現在でもオープンカーは使用できない状況が続いています。

乗車定員や看板の大きさ、街宣時間や場所にもルールあり

 選挙カーの使用は、原則として候補者1人につき1台までと定められていますが、参議院議員選挙の比例代表選出の場合は2台まで使用が許されています。乗車できるのはドライバー1名と候補者本人、そしてウグイス嬢などの車上運動員4名の計6名までです。ただし、乗車定員が6名より少ない車種の場合は、定員を優先しなければなりません。また、車両に取り付ける看板のサイズにもルールがあり、縦273cm×横73cm以内と定められています。

 選挙カーが使用できるのは、公示日に立候補届が受理された瞬間から投票日の前日までで、候補者の氏名を連呼できるのは朝8時から夜8時までと定められています。また、学校や病院、診療所などの施設前では静音保持義務が課せられており、これらの施設の近くで連呼行為を行うと公職選挙法に抵触する恐れがあります。

 なお、夜8時以降も候補者の名前を連呼せず、看板を照らして走行する行為は認められています。

 ちなみに、選挙カーは政党や候補者が所有しているケースは少なく、多くの候補者が選挙期間中にレンタカーを借りることで対応しています。ニッポンレンタカーやオリックスレンタカー、トヨタレンタカーなどでは、国政選挙の時期になるとワンボックスカーを中心に看板や音響機器を臨時に組み込み「選挙カーパッケージ」として候補者に貸出を行っています。その際は、選挙カーを熟知したスタッフが公費請求や警察への届け出を代行している模様です。

 また、これら大手レンタカー会社とは別に、選挙カー専門のレンタカー業者も存在します。こうした会社のレンタカーは、一般的なワンボックスカーやコンパクトカーベースの車両とは別に、走行中も候補者の顔がよく見えるように車体後部をガラス張りにした特装仕様の選挙カーをレンタルしている会社もあります。

選挙戦によって適した選挙カーは異なる

 選挙カーには、選挙戦や選挙区に応じて適した車両というものがあります。選挙には特定の有権者を対象に選挙活動を行う、いわゆる「地上戦」と、不動層など不特定多数の有権者を相手に選挙活動を行う、いわゆる「空中戦」があるとされますが、「地上戦」と「空中戦」では適した選挙カーも変わってきます。

 地方における選挙は、俗に「ドブ板選挙」とも呼ばれる「地上戦」に軸足を置いたものが多く、田畑のあぜ道や入り組んだ住宅街でも小回りが利き、有権者から握手を求められた際に応じやすい軽自動車やコンパクトカーが適しているとされます。

 一方、都市部での選挙は、無党派層を相手とする「空中戦」の比重が大きく、ターミナル駅などでの街頭演説で、多くの人の目に留まるよう、大きく目立つ車両が適しているそうです。

 ちなみに、変わった選挙カーの例としては、元東京都議で過去に国政選挙や都知事選に立候補していたマック赤坂氏が、ロールスロイスの選挙カーを使用していました。

 また、現・太田市議(群馬県太田市)でモータージャーナリストのマリオ高野氏は、愛車であるスバル「BRZ」を選挙カーとして用いていました。選挙カーは立候補者の名前と政策をアピールするとともに、いかに有権者の目に留まるかということも重要な要素となります。すなわち、どのような選挙カーを選ぶかというところから、すでに選挙戦は始まっていると言えるのかもしれません。

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