旅客機の操縦装置は「ハンドル式」「サイドスティック式」なぜ2つ? どう違う?今後“統一”の可能性はあるのか
乗りものニュース / 2024年10月29日 7時42分
旅客機の操縦かんは、パイロットの正面にあるハンドル状の操縦輪と、操縦席の横につくサイドスティックの2タイプに分かれます。これらは将来、どちらかに統一されるのでしょうか。
最初は操縦輪タイプばかりだった
旅客機の操縦かんは、パイロットの正面にあるハンドル状の操縦輪(コントロール・ホイール)で操作するものと、操縦席の横につくサイドスティック方式があります。2つの形式は将来、どちらかに統一されるのでしょうか。
現在の状況を見ると、ボーイング製の旅客機が古くより操縦士の正面に操縦輪(コントロール・ホイール)を配置し続けているのに対し、エアバスは1987年に初飛行させた「A320」でデジタル式の電気信号による操縦システム(フライ・バイ・ワイヤ)を取り入れるのと同時に、戦闘機のような操縦かん=サイドスティックを採用し、以降これを続けています。
そもそも旅客機や輸送機など大型機で操縦輪が正面にあるのは、古くは金属ケーブルを介してパイロットの操作を舵に伝えていたためです。この操作は時に大きな力が必要でした。
たとえば、航空自衛隊の創設期に使われた米国製の双発プロペラ式輸送機「C-46」では、小柄な日本人の手にあまり、「着陸時に機首を引き起こす際、機長が両足を操縦盤にかけて両手足に力を込めて操縦輪を引き、左右の進路は副操縦士が方向舵を踏んで調整した」と、筆者はずいぶん昔にそのときを知る方に聞きました。両手で力を加えやすくするため、操縦輪を正面に置くのが定着したと言えます。
対するサイドスティックは電気信号を用いているため、大きな力を必要とせずに片手で操作でき、操縦席の左右への配置も可能になりました。こうした操縦システム全体の高度なコンピューター化は1980年代から90年代にかけて行われましたが、こうしたハイテク化の中で、サイドスティックの導入もスムーズだったわけではなく、その是非を巡り航空界に大きな議論が起きました。
実はあった「サイドスティック駄目じゃ…」論争、きっかけは?
航空機関士をなくして正副操縦士のみで運航させるコンピューター化は、当初「ハイテク・ジャンボ」と呼ばれた747-400が議論の対象でした。しかし、1988年、実用化直後のA320が航空ショーでのデモフライト中に墜落事故を発生させてしまいます。1992年にも着陸降下中の機体で事故が起きます。
このことで、ハイテク機自体の安全性をめぐり一気に“炎上”したのです。サイドスティックも、「機長席は左側、副操縦士席は右側にあり互いの操作が見えず連携がしにくい」と非難の対象になりました。
ただ、こうした議論はベテランが中心で、若手はその違いをさほど問題にしていまなかった模様です。A320が日本で導入された頃、サイドスティックをどう思うかと筆者がA320の若手機長に尋ねたところ、「正面に操縦輪がない分、(折り返し便の出発前に)席を後ろに下げなくても弁当を食べられますね」と、操縦そのものについては気にしていない答えが返ってきました。
それから約40年。ブラジルのエンブラエル機は中央に操縦輪を配置していますが、カナダのボンバルディアが開発した現エアバスA220や中国のC919はサイドスティックを採用しています。一方で、米ブームが開発中の超音速旅客機「オーバーチュア」のシミュレーターもサイドスティックで、トレンドはサイドスティックに傾いているように思います。
こうなると、ボーイングがいつまで操縦輪を中央に配置し続けるのか、に関心は移ります。ボーイングが仮にサイドスティックを採り入れるとしたら、いずれ再浮上するであろうNMA(新中型機)が有力ですが、まず経営態勢の回復が緊急の課題のため、NMA自体の早期の実現はなさそうです。
それに、サイドスティックの採用はエアバスの後追いと映るでしょう。また、新型機は「旧型のボーイングと操縦の共通点が多い」というのも立派な訴求ポイントの一つになります。それゆえボーイングは操縦輪を中央に置き続け、操縦輪とサイドスティックは並立し続けるのかもしれません。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
旅客機の「窓側」を指定しましたが、乗ってみたら「窓」がありませんでした…。 なぜこのような席があるのでしょうか?
乗りものニュース / 2024年10月28日 16時12分
-
「21世紀のコンコルド」の試験機、小さすぎ!? なぜここまで“本番用の機体”と設計違うのか エンジン数すら揃ってない!
乗りものニュース / 2024年10月27日 8時12分
-
日本では激レア&複雑経緯の"珍旅客機"「世界的にもレア機」になる日も近い? 豪大手航空からも退役へ
乗りものニュース / 2024年10月18日 9時42分
-
「中国製旅客機」まさかの国に売れるかも? 「欧米のお墨付き」まだだけど…どこが買うの?
乗りものニュース / 2024年10月18日 7時42分
-
「JASのジャンボ」なぜポシャった? 国内3大航空“みんなジャンボ”だったら歴史変わってたかも!?
乗りものニュース / 2024年10月16日 7時42分
ランキング
-
1船井電機「給料払えません。即時解雇です」 社員が気づけなかった「3つ」の危険信号
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月30日 7時10分
-
2ハローワークが船井電機から解雇された従業員約550人に再就職支援「管内の主要企業の1つなので影響は少なくない」 個別相談や求人情報誌作成など対応
MBSニュース / 2024年10月29日 17時45分
-
3なぜ今「昭和の町中華」が若者に人気なのか…「ミシュラン掲載ラーメン店」増加のウラで起きている意外な動き
プレジデントオンライン / 2024年10月30日 8時15分
-
4NTT法、廃止できず=社長が見解―総務省特別委
時事通信 / 2024年10月29日 20時14分
-
5船井電機、出版社が買収以降300億円資金流出…破産申請時は117億円超の債務超過
読売新聞 / 2024年10月30日 7時6分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください