驚異的な“スピード”!! ステルス戦闘機「F-35」が達成した性能以外の偉業とは コスパ最良が日本を苦しめる?
乗りものニュース / 2024年11月12日 16時12分
航空自衛隊も導入を進める新型のステルス戦闘機F-35が生産数1000機の大台を超えました。今後も導入国が増えることは確実な同機ですが、売れれば売れるほどアメリカ以外の西側諸国にとっては新型機開発がしにくくなる可能性があります。
世界で最も作られたステルス機になるか
2024年7月、ロッキード・マーティン社はステルス戦闘機F-35「ライトニングII」の累計引き渡し数が1000機を超えたことを明らかにしました。
F-35は、2006年に製造を開始していますが、それから18年で1000機の大台を超えるというのは、現代戦闘機としては異例ともいえるスピードで、航空史に新たな1章を刻む出来事になります。ちなみに、2024年10月現在、同機は年間約150機という驚異的な生産ペースを維持しており、2000機、さらには3000機の達成も時間の問題といえるでしょう。
このように、F-35は今日、世界で最も量産されている戦闘機といえ、その生産規模は他の追随を許しません。大量生産は、一般的に製品のコスト削減をもたらします。F-35も例外ではなく、初期のシステム開発実証機(SDD)はF-35A 1機あたり約1億5000万ドル(2011年度)ほどでしたが、2020年には7790万ドルに、およそ半額に至る大幅な価格低下を実現しています。これは生産ラインの効率化、部品の共通化、サプライチェーンの最適化など、複合的な要因が寄与した結果です。
2024年引き渡し分からは、新しい性能向上型F-35テクニカルリフレッシュ3(TR-3)が適用され、主にミッションコンピューターを中心にハードウェアが更新されました。これにより価格はわずかに上昇しており、現在のF-35A 1機あたりの価格は8200万ドルとなっています。とはいえ、TR-3適用機の量産が進むにつれ、価格は再び緩やかに低下すると予想されます。
性能が大して変わらないならF-35で十分じゃない?
なお、日本もF-35Aを導入していますが、我が国は円安の影響もあり価格低下を実感しにくい状況です。来年度(2025年度)概算要求ではF-35A 8機、総額で1249億円を計上しており、1機あたりの平均価格は156億円(1億400万ドル)となります。
特に影響が大きいのは、元々高額である短距離離陸・垂直着陸型のF-35Bです。来年度概算要求では3機で608億円が盛り込まれていますが、1機あたりの価格は203億円にも達します。これは予備のエンジンなど機体以外の費用も含まれた価格ですが、それを考慮してもかなり高くついていることがわかります。
皮肉なことに、1機あたり1億5000万ドルであったシステム開発実証機の生産時は円高であったことから、当時は1ドル=80円程度であり120億円程度で済みました。その頃と比べると日本が取得するF-35の価格はかなり上昇しています。とはいえ、これはF-35自体の問題ではなく経済状況によるものと言えます。
日本ではF-35の調達価格低下の恩恵が十分に受けられない一方で、安価かつ高性能な戦闘機としてF-35導入国が増えることはほぼ確実です。また、既存導入国による追加発注も期待されます。
現在、日本を含む各国では新型戦闘機の開発が進行中です。たとえば日本とイギリス、イタリアの3か国が共同開発している「GCAP」や、フランスとドイツ、スペイン共同開発の「FCAS」などが挙げられます。各国は自国の産業を育成するため、こういったプロジェクトを是が非でも成功させたいところですが、これら新機種の生産数は数百機がせいぜいであり、数千機が確定しているF-35と比べると一桁少ないのは間違いないでしょう。
F-35はあらゆるミッションを高いパフォーマンスで遂行可能であり、圧倒的なコスト競争力を有しています。そのため、なぜF-35以上に高額となることが確実視されるこれら新型機の開発が必要なのか、プロジェクトが進展するにつれ、各国でその意義を問う声が上がるかもしれません。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
中国の大型ステルス戦闘機に世界初の仕様デビュー! 驚きの使い方を想定
乗りものニュース / 2024年11月14日 6時42分
-
「世界で最も高価な航空機」米空軍の“記録”を更新! 即応性アップ期待も手放しで喜べない事情が
乗りものニュース / 2024年11月7日 16時12分
-
日本を「最速」で守れるのは戦闘機だけ…50年以上前の「長寿モデルF-15」が重宝されている2つの理由
プレジデントオンライン / 2024年11月2日 16時15分
-
SF世界が現実に!?「三菱の無人戦闘機」は“脳みそ”搭載します 担当者を直撃したら「使い捨て」もありました
乗りものニュース / 2024年11月1日 17時12分
-
アメリカ空軍「世界一高い航空機」B-2を中東の反政府勢力に使用 2020年代では初投入
乗りものニュース / 2024年10月21日 8時42分
ランキング
-
1世界で日本だけ……夫婦同姓「最後の国」に国連が4度目の勧告。夫婦別姓トラブルで軌道修正する国も?
オールアバウト / 2024年11月14日 18時30分
-
2トヨタ、投稿動画めぐり謝罪と改善発表 “ずんだもんへの愛が足りなかった”
おたくま経済新聞 / 2024年11月14日 15時15分
-
3「姦」という漢字はどう読むのが正しいのか…「平安時代の辞書」に記されていた"すさまじい読み方"
プレジデントオンライン / 2024年11月14日 18時15分
-
4「サイコパス」が多い10の職業と彼らが出世する訳 ダークトライアドのキャリアに関する選別効果
東洋経済オンライン / 2024年11月14日 10時0分
-
5更年期以降に急増する【尿漏れ・頻尿】を自分で治す!骨盤底ケア習慣とは【医師解説】
ハルメク365 / 2024年11月14日 22時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください